先日、青梅街道を走っていると、風変わりな車とすれ違った。バモスホンダである…と言っても、ほとんどのユーザーには伝わらないことであろう。筆者と同世代のオッサンですら通じるかどうかといった類いのマイナー車のことである。
ウルトラマンタロウに出てくるラビットパンダ号の原型と言えば、少しはわかっていただけるだろうか。今回は、そんなユニークな国産マイナー車、バモスホンダについて語ってみようと思う。
電動カートのような開放感あふれるオープンカー
バモスホンダは車種名が物語るように、ホンダが1970年から1973年にかけて生産していた軽トラックのことだ。しかし、一般的にイメージされる軽トラックとは大きく異なり、実にユニークなスタイルをしていた。
まず、軽トラックでありながらもオープンタイプであることなどが、その最たる部分であろう。それどころかドアすらなく、転落防止バーが走っているのみである。軽トラというよりは、ゴルフ場にある電動カートをイメージしていただいたほうが近いかもしれない。スペアタイアもフロント部分に装着されるなど、ユーモラスでありながらも、ミリタリーモデルを彷彿とさせる、かなりワイルドな風貌であった。
結果的に不人気車として生産終了となる
画像 – Flickr : Kzaral
完成したバモスホンダは実用性と遊び心とを兼ね備えた、レジャーカーというジャンルで市場へ投入されたものの、そのユニークすぎる外観ゆえに珍車扱いされ、生産台数は僅か約2,500台で生産終了を余儀なくされた。
オフロードカーのようなシンプルなスタイリングとイメージながら、エンジンからブレーキに至るまで、走りに関する面は全て同社の軽トラック「TN360」のそれを流用してしていたことからもわかるように、性能的にはこれ以上はないというほどの軽トラックであったがゆえ、不人気車となったと言われている。4WDなどのオフロードの走破性があればと、悔やまれる所以である。
バモスは2代目で花開く
画像 – http://www.honda.co.jp/VAMOS/webcatalog/styling/image/color_ph_04.png
バモスホンダの生産終了から26年ほど経った1999年、2代目バモスが誕生した。ただし、2代目バモスは、初代バモスホンダとの類似性はまるでなく、アクティバンをベースにした、軽乗用ワンボックスワゴンである。皮肉なことに2代目バモスは、発売開始から15年以上たった現在もフルモデルチェンジされず、ロングランモデルとなって今に至る。
ジャンボーグA、ウルトラマンタロウの劇中でも活躍!
かくして、ユニークな多用途軽トラ、バモスホンダは歴史の彼方に埋没してしまったが、そのユニークなデザインを映像の中で見ることは可能だ。
円谷プロダクションの特撮作品『ジャンボーグA』においてはバモスI世、II世として、また上記したが『ウルトラマンタロウ』では、ラビットパンダ号としてユニークな改装を施され活躍している。いずれにしても、バモスホンダの特異性を表すエピソードである。
バモスホンダのオーナーになりたいという方は
生産台数が約2,500台と少ないレア車両のため、中古市場に出回ることもほとんどなく、検索しても2代目バモスが引っかかるだけなのだが、探せば二桁万円後半代で買えないこともようだ。もちろん、パーツの供給もなく、維持費はかなり高くつくかもしれないということを付け加えておこう。それでも、バモスホンダのオーナーになりたいという方は、頑張って探してみることをオススメしよう。
少なくとも、筆者がすれ違ったバモスホンダは、なかり元気に走り回っていた。そういう状態の良い車両に巡り会えるかもしれない。
画像 – Flickr : inove manore