クルマ業界といえば、圧倒的なパフォーマンスと美しい外装を纏ったモデルが凌ぎを削っておりますが、一方で別のアプローチから社会に貢献しようとしているクルマがあります。
今回は、世界初、途上国の現地で組み立てできるトラック「OX」をご紹介しましょう。
OXトラックの概要
これがOX。直線と平面のみで構成された、極めてシンプルな外観を有するトラックです。しかし今となっては、逆にそれが新鮮で実にかわいらしく映ります。
荷物や人を大量に運べ、悪路を走破でき、故障しにくい。また、故障しても発展途上国で簡単に修理できる。このような、途上国が抱える輸送の悩みを解決するために企画されました。
昔ながらのラダーフレームと、頑丈さに定評のあるフォード製2.2Lディーゼルエンジンを搭載。徹底的にムダを排除するシンプルな構造とすることで軽量化し、それにより悪路走破性を高めるという手法をとりました。耐久性、整備の容易さ、それにコスト面を考慮した結果、あえて2WDを選択しています。
将来の自動車技術の発展に応じて、パワートレインを電気や燃料電池化することも視野に入れていますが、現在は最も普及している内燃機を選択しました。
OXトラックは現地組み立てが前提
このOXトラックは、デザイン設計からパーツ製造まではイギリスで行われましたが、組み立てコストや輸送コストを考慮し、全パーツをフラットに梱包し、OXを利用する現地(発展途上国)に発送する方法をとりました。
なお、エンジンは別梱包となります。
フレームの割れやヒビに現地でも対応できるように、非常にシンプルなフレーム構造を採用。ちなみにFFを採用している点にも注目です。
外装はスチールではなくて、なんと防水加工を施した合板! 将来の補修が難しいと思われますが、そこは現地調達の木材、または鉄板で代用するという考えなのでしょう。
バラバラの状態で発展途上国に届けられたOXは、一般的な自動車整備士が3名で組み立てれば12時間以内で完成するとのことです! もちろん整備士の技量や作業スピードにも差があるでしょうが、構造が極めてシンプルゆえ、不可能ではないと思われます。
OXトラックの機能
FFなので極めて低床な設計が可能となっています。そのため重い荷物の積み込み・運搬も楽々です。
進行方向に対して横向きにレイアウトされたベンチシートと、キャビンのベンチシートを合わせれば、13人の乗車が可能です。
キャビンには3人掛けのベンチシートを採用しており、運転席はベンチシートの中央となっています。
また、キャビン背後には予備のガソリンや水を入れておく巨大なストレージスペースがある点も、途上国のユーザビリティに配慮されています。
1960年代後半~1970年代の自動車そのもの、といった趣のドライバーズビュー。装飾のない簡素な作りですが、言い換えれば破損しにくいですね。
何故OXを企画したのか?
日本に暮らしているとなかなか想像しにくいのですが、途上国では現在もこのような過積載状態のトラックが多く走っております。
そんな過積載トラックが、このような過酷な未舗装路を走っています。
過積載の原因は、車両が高価過ぎること、現地での整備が困難であること、などが考えられます。その結果として、
多くの人々が水や荷物を人力で運ぶことを強いられているわけです。
充分な性能を持ち、それでいて安価かつ頑丈。そして現地で修理しやすい車両を提供することで、途上国の人々の暮らしを変えたい。そんな想いで企画されたのがOXなのです。
OXは出資者を探している!
この極めて高い志を持って開発されたトラック。開発団体のGVT(Global Vehicle Trust)では、最終テストと生産に向けて、現在出資者を探しています。
途上国生活で実際に使用されれば、きっと予想しなかったような新たな課題や困難が出てくると思われます。しかし、GVTの志の高さと魅力的なOXなら、きっとホワイトナイトが手を差し伸べてくれることでしょう。
プロジェクトの成功を心から祈っています。