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Remember Me【for Rideコラム】

Remember Me【for Rideコラム】

子供の頃どんな夢を持っていましたか? 野球選手? 映画俳優? ロックスター? パイロット? 宇宙飛行士?

ほとんどの人は”夢”は”夢”で終わってしまったでしょうが、それでも夢見ていたあの頃からワクワクしていたことを続けることは出来るのかもしれません。

 

子供の頃近所の多摩川の土手から東京タワーが見えました。今のように高層ビルが乱立していなかったので、割と近くに見えたような気がします。子供の目にそう見えただけかもしれないけれど、土手から見る東京タワーはとても魅力的な場所に思えてなりません。

自転車の補助輪が取れて、大人用の大きなものが漕げるようになると、どこか遠くに行きたくて、それを考えるだけでワクワクしていました。だから、目的地が東京タワーに決まったのは自然だったのかもしれません。

 

地図なんていうモノの存在も知らない僕は、朝早く自転車でひとり旅立ちました。目に見えているのだから大丈夫だろうと思ったのかどうか、どんな考えで走り出したのか細かな記憶は忘れてしまいましたが、特に不安もなく走り出したと思います。

けれど漕いでも漕いでも東京タワーは近づかず、それどころかタワー自体が見えなくなってしまい、それでも力を振り絞って漕いでいました。

お腹が空いて、喉が渇いて、遂に東京タワーも自分の居場所も見失った時に一気に不安に襲われてしまう。
出来ることは大声で泣くことだけだった。

その日の夕方に世田谷あたりの警察に保護され、自転車を積んだパトカーで家まで送られ、母親にこっぴどく怒られた。

 

それからは遠くに行きたいという欲求を多摩川の土手にあるサイクリングコースを走ることで解消していた。

そのコースなら一本道で迷うこともないし、疲れたたら戻るだけ。それでも何度かバテるまで走ってしまい、半べそかきながら戻ったこともあるが。確かそのサイクリングコースは神奈川県川崎市の登戸まで伸びていたと思う。小学校高学年になると登戸まで走るのも苦ではなくなったが、もう東京タワーに行きたいと思う気持ちを失くしていた。

 

中学生になると茨城の親戚の家まで行けないだろうか。なんて考え始めていたけれど、いつの間にか自転車に乗らなくなって、先輩から原付の乗り方をレクチャーされて夢中になってしまった。バイクさえあれば何処にだって行ける。

ワクワクは自転車からバイクへと変わったけれど、今だって見知らぬステキな道を発見した時の気持ちは、子供の頃と変わらないように思える。

 

“バイクがあればどこにだって行ける”というのは正しかった。

いつだって好きな場所で眠れて、好きな人に会って、好きなものを食べられる、そんな最高な気分に浸れる。

あの時は東京タワーに行けなかったけれど、きっと行けたとしたら、そんな最高の気分のなれたのかもしれないが、それは子供の自分にはまだ早すぎたかもしれない。

 

遠くに行きたくて仕方ないから、タイヤもすぐにすり減ってしまい、年に一度は交換している。

すっかり山のなくなったタイヤをみると、後何本使い切るのだろうかと思う。

子供の頃から続く「ワクワク」を抱きながら、遠くへ走り続けたい。

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