バイク旅で野宿のススメ【眠れぬ最大の原因は●●だった編】

バイク旅を続けていれば、誰にも起こりそうな野宿の話しを何度かに分けてさせていただいているのだが、今回は最も辛い、ほとんど眠れなかった時の話だ。

眠れないと疲れは取れず、集中力を落とし運転時の危険度を増すだけで良いことはない。だから旅の間は眠る時間が重要なのだが、キャンプ場にしろ野宿にしろ余程、旅慣れしなければ家と同じようにぐっすりと眠ることは難しい。

旅に慣れればどこでも眠れる

著者は奢っているように思われるかもしれないが、”旅慣れ”しているのでテントで隔離さえされてしまえば、ほぼどこでも眠られる。過去にも国道の脇や民家横の空き地などで寝たこともあるし、河原で寝ているとざわついた声で目を覚まし、何事かとテントから出ると地元のお爺ちゃんお婆ちゃんがゲートボールの準備をしたいのに、著者のテントが邪魔で取り囲んでいた状況だったことがあるほどだ。

それでも。その奢りのせいかほとんど眠れない野宿を過ごしたことがある。

四国の”3桁国道”をナメてはいけない

夏が終わりを告げそうな頃だ。大分からフェリーで愛媛に渡ろうと考えていたが、高知に渡る船の存在を知り、そちらには乗ったことがなかったこともあり急遽高知に向かった。高知に着いたのは午後三時くらいだっただろう。まだ陽は高い。四万十川沿いを走り続けると、どんどんと道幅は狭くなっていく。

四国の3桁番台の国道というものは相当な”酷道”具合だ。”ヨサク”と呼ばれる439号線などはほとんど林道と言ってもいいくらいだし、そんな場所にハーレーで入り込んでしまうと本当に厳しいものである。また、”ヨサク”以外でも山の中に入れば、クルマがすれ違うのに苦労するくらいの道幅などはざらにある。

そんな3桁国道を、太陽が沈みそうな頃にガス欠寸前で、いざとなればJAFのお世話になるしかないかヒヤヒヤしながらも走り続けていると、どうにかテントが張れそうな場所を見つけたので、ここで野宿して、明日の朝、明るくなったら走ろうかと考えていた。頂き物の焼酎も持っていたし、食いかけのチーズと棒ラーメンもあるので、どうにかしのげる。そうしようかと携帯を見てみると、なんと圏外だ。JAFを呼ぼうにも呼ぶ手段がない。そうなると焦ってしまう。真っ青な顔で走り、どうにかガス欠寸前で人里が見えた時には、遭難寸前の登山家が下山した時の気持ちがわかった気になった。それ以来、四国の国道で道幅が狭くなってくるとトラウマが蘇ってくるのだ。

最適な寝場所だと思ったが…

四万十川を横目に見ながら走り続けた時のこと。道幅は広くはないが景色は良いし、山の中に入る気配もなく、そのうちに道幅も広くなってきたので、ここいらで野宿しようと、暗くなる時間帯にスーパーで買い物を済ませた。そのすぐ先には日帰り温泉もあったので、風呂に入ってさっぱりすると、温泉施設の国道を挟んだ反対側に無人の野菜売り場があった。もちろん野菜販売は時間外で商品は何もない。それが抜群に良かった。屋根はあり、下には何もないが舗装されている。風呂上がりの肌は火照っており、こりゃあテントなしで気持ちよく眠れるぞ!と、四国の国道の恐怖から抜け出し、タイミングよくスーパーも風呂も寝場所も見つけた解放感からか、屋根さえあれば大丈夫という根拠のない自信が湧き上がり、マットを引いてその上に寝袋だけ出して寝床の完成。スーパーで買ったソーセージとモツとモヤシ炒めを肴にビールと日本酒を頂いて、なんて良い夜なのだろうと寝袋に包まった。

一度はすぐに寝入ったのだが、耳もとで「キーン」という不快な音で目が覚めた。蚊である。面倒だからと、寝袋に潜り込むようにしてそのまま眠り続けようと格闘すること数時間。蚊の執拗な攻撃に負けて、夜中の2時にテントを張ることにした。

テントの中に入ってしまえばこっちのものだ。これからは屋根があったとしてもテントは張るようにしようと反省しながら、再度、気持ち良く眠りに落ちた。が、しかし、その眠りも30分程しか続かなかった。今度は強烈なガソリン臭が漂ってきたのだ。

犯人は…自分だった

テントの中で音を立てないように周りの気配を探ると、小声で話している声が聞こえたような気がする。

映画『イージー・ライダー』は、自由気ままにチョッパーに乗って「旅」を続ける主人公が、腹を立てた奴に撃たれてしまうというストーリーだが、同じようにヨソモノが勝手にテントなど張っていい気になっているのに腹を立てた地元ヤンキーが、ガソリンを巻いて火を付ける気ではないか…そんな考えが頭をよぎった。

冷静になって考えればそんなことはあるはずもないのだが、その時は本気でそんな事を考えて、燃やされる前にと、急いでテントから飛び出すと同時にファイティングポーズを取った。だが、周りは無人で静かなものだ。ガソリン臭はショベルのガソリンコックをオフにするのを忘れ、キャブがオーバーフローしていたからという、実につまらないオチだった…。因みに古いハーレーにはよくある症状で、停車時はガソリンコックオフが基本なのだ。

そう、眠れない原因はすべて自分にあったのだ…。

真夜中の高知で蚊に刺されつつ、もう眠れないとテントを片付け、明け方3時には出発した。さすがにその日は距離を走る気にもならず、愛媛のキャンプ場に昼間から入り、明るいうちからビールを飲んで昼寝をし、夕方からまた飲み出してと、のんびりした贅沢な時間を過ごしたのだが、それも含めて旅の醍醐味だということで。

オオモリシゲユキ

オオモリシゲユキ

バイク・アウトドアが大好きな放浪ライターと書くと格好良いがただのオヤジライター。加齢臭気にしつつ今日もバイクで走ります。得意分野は外見に似合わず文章