バイク旅で野宿のススメ【俺の空トラウマ編】

いきなりだが『俺の空』という漫画の名作をご存じだろうか?

本宮ひろ志氏の作品なのだが、著者がこれを読んだのは中学生の頃だった。いわゆる”濡れ場”満載で、今なら確実に18禁になるだろうが、何故か当時は普通に読めた。

で、この漫画、簡単に言えば、主人公が嫁探しの旅に出るというストーリーなのだが、旅の初手からキャンプ場で女子大生二人組と知り合い、めくるめく快楽の夜を迎えるという、非常に刺激的な内容だったのである。

そんな上手い話はない

男とは単純なバカである。中学生の頭に擦り込まれた、「キャンプ=めくるめく快楽」という方程式が頭から離れずに、キャンプ場や野宿でも、きっと「おひとりですか?」などと話し掛けてくる女性が、今夜こそは現れるのではないか。本気(マジと読んでください)で思っていたのだ。

だからテントの中に入っても直ぐには眠りに付けない。道端で野宿していても…。「こんな所に寝ると身体に良くないですよ。今日は私の部屋で…」などということが起きるのではないか。人様にバカと罵られようと、妄想野郎と気味悪がられても、そう考えてしまうのだからどうにもならない。

いつの間にか『俺の空』はトラウマ、もしくは呪いへと変貌を遂げていったのだ。

『俺の空』のトラウマから解放

テントを張るたびに毎回毎回そんなしょうもない妄想を膨らませていたのだが、何十年とテントを積んで旅してみても期待するようなことは一度たりとも起こらなかった。それでも懲りずに妄想の日々だったのだが…。

もう10年も前だろうか。ゴールデンウィークだった。天候に恵まれた年でTシャツ1枚で走って丁度良い。その日は静岡でのんびりとして、夕方近くに群馬の仲間の家に行くことを思いついた。清水から52号線を抜け、清里、軽井沢を抜ければそれほど遠くもない。今にも陽が沈みそうな時間に出発した。静岡から山梨に入る頃には真っ暗になり、持っていた薄い革ジャンを着たが寒さが増してくる。韮崎を抜け標高を上げて行くと震えるほどの寒さで、これはもう駄目だと諦め、コンビニでインスタントラーメンとビールにワンカップを買うと、道の駅に入りテントを張った。

寒さで震えつつラーメンとアルコールで暖まり、そのまま寝袋に包まると、朝までぐっすりとなった。その晩は、あのバカで気持ちの悪い妄想をせずに眠れたのだ。これが『俺の空』のトラウマから解放された瞬間だった。

30年近くもそんな妄想を抱きつつ、世の中にそんな甘い話は転がっていない、ということをやっと実感した。

旅とはこうして人を成長させてくれるのだ。などとカッコつけてみた。遅いけど…。

オオモリシゲユキ

オオモリシゲユキ

バイク・アウトドアが大好きな放浪ライターと書くと格好良いがただのオヤジライター。加齢臭気にしつつ今日もバイクで走ります。得意分野は外見に似合わず文章