バイク旅で野宿のススメ【最終回】

その小道に入ってみたのはただの気紛れに過ぎなかった。どうせ行き止まりだろうから、そうしたらUターンすればいい。

そんな気持ちで民家と畑の間の、軽自動車がどうにか通れるほどの幅しかない道に入ってみた。緩やかな登りで、しばらく行くと舗装がなくなったが、クルマが毎日通るのだろう硬く締まった土の道になる。

ならばこの先は畑か何かがあるのだろう。1キロも進んだだろうか。高台の上に出ると眼下には一面の麦畑が拡がり、それを夕陽がオレンジに染めていた。キックオンリーのバイクなので、すぐに走り出すのならエンジンは停めないのだが、その時は自然とエンジンを止めていた。高台は5メートル四方ほどの広さがあり、野宿をするには十分だった。

なんで旅をするかの答えを知った

場所も景色も最高だが、そこは明らかに畑の持ち主の私有地だ。無断で野宿というのも気が引ける。すぐに着た道を引き返し、近所のスーパーでアルコールと食料を買い、入口の民家で高台で野宿してもいいかを尋ねると、どうやら畑はその家の持ち物ではないらしい。けれど手入れに来るのは昼前位だし、夜は誰も来ることはないからいいのではないかと、優しそうなおばさんが言ってくれたので、すぐさま高台にテントを張ってビールを開けた。夕陽はまだ沈み切らずに、麦の海は優しい風に規則性があるかのように揺れている。

フライパンで肉を焼いて、目の前に広がる畑を眺めていた瞬間だ。全てを悟った。確かに、すべての意味を知った。なんでバイクに乗っているのか。なんで旅をするのか。なんでこんな生活が楽しいのか。

いくら考えようと答えなど出るはずもないそれらの全てが、一瞬にして全てがわかってしまった。背筋がぞくぞくするほどに興奮した。世界中のバイク乗りが探した答えを見つけてしまったのだ。旅から帰ったらアイツに教えてやろう。これを言えばあの人は驚くことだろう。そんなことを考えながら飲むビールは最高に美味かった。そうか、走り続けた結果ついにそんな答えを見つけたか。

掴んだ答えは消えていた

新しいビールを開けて何度見ても綺麗な景色をみて、得たばかりの答えを再確認しようとすると、すっかりと頭の中にあったはずの答えが消えていた。酔っていたわけでも夢を見ていたわけでもない。一瞬掴んだ、確かに掴んだ答えは消えていた。

いつかまたあの答えがわかるのではないか。いつかまた悟る時が来るのではないか。旅の夜はいつもそんなことを考えている。麦畑は夜になつても緑の穂を輝かせて、優しく揺れて耳に心地いいさざ波のような音を聞かせてくれた。

まぁ、いいよ。またいつかきっと答えがわかる日が来るかもしれないから。

だからバイク旅も野宿もやめられない。

オオモリシゲユキ

オオモリシゲユキ

バイク・アウトドアが大好きな放浪ライターと書くと格好良いがただのオヤジライター。加齢臭気にしつつ今日もバイクで走ります。得意分野は外見に似合わず文章