歌舞伎を見たことがあるなら、あなたはかなりの少数派だ。
平成21年の世論調査で「1年以内に伝統芸能を直接見たことがある」人の数は全体のたった5.3%。能や狂言、文楽などもひっくるめての数なので、歌舞伎に絞ればもっと少ない。
その一方で、同調査の「世界に誇れる日本の文化は何か?」という問い(複数回答)で、67.4%というダントツ1位の回答を得たのも伝統芸能だ。とくに女性の割合が高く、30代は70.2%。誰も見ない、でも意識はしている。歌舞伎はそういう不思議なカテゴリに属している。
なぜ国民の95%が見に行かないのか?
国民の95%が見に行かない最大の理由、それは「敷居が高いから」だろう。
確かに気軽に行ったらいけない感じがする。でも多くの人が「1回くらい行きたい」と思っている。とくに女性は。
歌舞伎の敷居が高くなったのは、明治20(1887)年の「天覧歌舞伎」からといわれている。
明治維新で西洋文化がどっと押し寄せた結果、江戸っぽさ満点の歌舞伎は「ダサい」「軽薄」と見下されはじめた。
そこで、役者たちは悩み「歌舞伎の価値を世に認めさせたい」と運動を起こした。そしてついに念願かなって天皇皇后両陛下にお見せする特別公演が実現したのだ。すると「おお、歌舞伎って高尚なものだったのか」と世間の評価は見事に上がったのであった。
130年後の今、歌舞伎が大衆のエンターテイメントだった江戸の記憶など誰も持っていない。でも一度見てしまえば、高い敷居は幻であり、憶測にすぎなかったと気づく。だから歌舞伎座の席は「一度見たら面白かった」という”勇気あるおばちゃん”たちに占められている。
言葉が古いし、演目の本筋を見失うこともある。でもそもそも日本語が分からない外国から来たバックパッカーたちも「Very Japan!」と面白がっている。
まず一度「こりゃ日本だね」って感じてみてはいかがだろう。1回の観劇で、あなたも希少な”5%クラブ”に仲間入りだ。
2回目からは彼女を連れていくくらいの余裕もきっと生まれる。
【参考リンク】
平成21年 内閣府世論調査 – 文化に関する世論調査