埼玉県が三ない運動を廃止!? 検討委員会を経て指導要項の改訂へ

公立高校入学時に「高校生活にバイクは不要」と書かれたペーパーを新入生全員に配布していた埼玉県が、三ない運動の功罪を検証。県教育委員会が「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会(以降、検討委員会と略記)」を9回に渡って開催し、1年がかりで出した結論とは?

三ない運動の厳しい埼玉県で、なぜ廃止の声?

埼玉県と言えば、首都圏では唯一と言っていいほど、三ない運動を強固に進めてきた自治体だ。一部特例として秩父地方でのみ原付によるバイク通学が認められていたが、その他の県内各地域、各学校では昔ながらの運動を継続している。2015年には群馬県が交通安全条例を定め、三ない運動を廃止して交通安全教育への転換を実現したため、関東では唯一の三ない運動実施県となっていた。

そんな埼玉県で、なぜ三ない運動を見直す機運が高まったのか? 検討委員会の議事内容を踏まえてまとめられた報告書案にはこうあった。

1. 無許可で免許を取得している生徒に対して十分な交通安全教育を実施できていない

2. 現指導要項制定から37年が経過し、当時社会問題化されていた暴走族は減少した

3. 自動二輪車等に関する免許制度の改正があった

4. 選挙権が18歳に引き下げられ、自主自立の教育推進が求められている

要は、三ない運動というものは現在の社会には適合していない。運動実施下においてもバイク事故で死傷する生徒は少なからずいるなか(2016年度68名)、社会環境の変化や社会情勢を踏まえ、方針や方策を変えていかなければいけないのでは?ということだ。

交通安全における指導の精神と具体的な取り組み

報告書案には、「三ない運動は高校生の命を守り、高校生活の充実や生徒の健全育成に大きな成果があった」とある。「その“精神”は、三ない運動を続けてもやめても変わらない」というのは検討委員会を取り仕切った稲垣会長(下写真)の弁だ。子どもたちを守っていくという精神を受け継ぎながら、今の時代に合った交通安全指導の在り方について検討され、報告書案を踏まえて新たな指導要項を策定しようというのが今後の動きとなる。具体的な取り組みとしてはこうだ。

1. 免許取得に伴う届出(保護者・生徒の連名)など手続きの導入

2. バイク通学をする場合は原付のみ(要任意保険加入)

3. 交通安全講習の実施(受講必須)

2018年2月20日、報告書案は報告書として教育長に提出された。今後は新たな指導要項を策定するための重要な準備事項として、教職員や保護者・生徒への説明が行なわれる。ここで強い反発が出ることも予想されるが、県教委は、パンフレットなどを作成し配布、バイクに乗ることのリスクについて正しい理解に努め、任意保険への加入、交通法規の遵守、違法改造の禁止などについて誓約を求める方針だ。学校側の負担を考え、校則や指導内規のひな形も用意される。

交通安全講習の実施に関しては、自工会・日本二普協など交通安全関係機関・団体の協力を仰ぐことになるが、現在でも毎年、秩父地方で実施されているため心配はないだろう。座学と実技が伴った実効性の高い講習が県内各地で実施される予定だ。

埼玉県は意外と広い。秩父のような山間部や群馬県に近いような北部では、電車やバスといった公共交通が不便になりつつある。バイク通学が必要な子供たちが存在するのだ。そうした子供たちやその家庭がバイク通学によって、時間的、金銭的など様々な負担から解放され、豊かで便利な生活を送ることができるなら、バイクはやっぱり社会に必要な生活の足なのだ。

田中淳磨

田中淳磨

二輪雑誌編集長、二輪大手販売店、コンサル事務所勤務を経て二輪業界で活動するコンサルタント。バイクの利用環境改善や若者向け施策が専門で寄稿誌も多数。