不遇の名車!ベスパのレーシングタイプ”90SS”

燃料タンクを模した小物入れを持ち、短く左右を切り詰められたハンドルバーとボディ、精悍なシェイプを持つフロントフェンダーなどが特徴的な”90SS”。SS(スーパー・スプリント)を冠するだけのあって、いやがおうにもスポーツ感を意識させるモデルである。90ccの排気量ながら、最高出力は5.1馬力をマークし、四段変則ギアによって最高速度は93km/hにも及ぶ。

当時は気軽さを求める大部分のスクーター需要から跨がって乗車するスタイルが受け入れられなかったこともあり、また、レースに使用されることが多かったこともあり現存する台数は極めて少ない。

V90の高性能モデル

1965年、ベスピーノと呼ばれるスモルーボディシリーズに上級モデルが発表された。その中の一つが”90SS”である。90SSを特徴付けるのは、その特異な外観だ。

まず、シート前方にはモーターサイクルの燃料タンクを模した小物入れが装着された。それに伴い、レッグシールドの裏に装着されていたスペアタイヤは小物入れの下に縦向きに収納された。ハンドルとフレームは左右を短く切り詰められ、フロントフェンダーも形状がやや細くなるなど、SS(スーパースプリント)の名に相応しいスパルタンなベスパとなっている。

ベスピーノ最強のモデル

同じ排気量であるV90の最高出力は3.2馬力なのに対し、90SSは5.1馬力へと大幅な増加をされている。さらに大型の125ccモデルでも4.3馬力…つまり、90SSはベスピーノ中では最強のモデルだったのだ。ブレーキも125ccモデルに搭載されていたアルミ製ドラムを採用されていた。

最高速度は93kmと、160GSの100km、180SSの105kmには及ばないものの、90ccという排気量を考えれば、かなりの高性能だったことが伺いしれる。

市場での人気は極めて低かった

しかし、市場での90SSの評価は厳しいものだった。まず、スクーターを購入する層が求めるのは足を揃えて気楽に乗れることだが、90SSはスクーターでありながら外観上の特徴により、跨がるというスタイルを取らざるを得なかった。そして、SSに与えられた4速ギアや高性能エンジンも、スクーター購買層からは不必要な装備と一蹴されてしまったのだ。

かくして、90SSを求める層はごくごく限られたスポーツライダーのみとなり、しかも、このジャンルにはモーターサイクルという手強いライバルが存在したいたのだ。

かくして90SSは幻の一台となった

市場での不人気に加え、僅かに売れた90SSもレースで消耗され尽くしたことにより、オリジナルの90SSの現存台数は極めて少ないものとなった。スポーティーなベスパの愛好家からすれば、90SSこそまさに理想の一台なのだが、いかんせん、時折コレクター市場に出るオリジナル90SSの値段は、他のモデルに比べても高価すぎて、とてもじゃないが手が出ないというのが現状である。どうしても90SSが欲しい…という方も中にはいるかもしれないが、通常の手段ではかなり難しい……とだけ言っておこう。

レプリカモデルを作ることは可能だ!

ここまで読んでがっかりしてしまった人には朗報だ。ベスピーノを素材にすれば、レプリカモデルを作ることはそう難しくはない。ダミータンク、スペアタイヤホルダー、フロントフェンダーなどは比較的、安価で売られているのだ。フェンダーのカットもそれほど難しい作業ではないだろう。ただし、ハンドル部分はレプリカでも探すのは困難であるという。そして困難なだけあり、その値段も高騰している。このハンドル部分さえクリアすれば、レプリカモデルは完成したも同然。ベスピーノは珍しくはないが、90SSレプリカはかなり目を引く存在となることだろう。

どうせスモールボディをカスタムするのならば、個性的な外観の90SSレプリカを作って弾けてみるのも楽しいのではないかと思う。

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画像 – Flickr : Juan Ortiz

センカクダイバー

センカクダイバー

悲運の元パチンコ・パチスロライター。ベスパ歴27年、ミニクーパー歴2年のモッズ系猛禽類。旧車を好むクセに機械イジりや整備はサッパリというご都合主義者。