ふと気づけばそろそろ20年目のロードスターのシフトノブ。
今まで色々な社外品や純正他車流用品、安いものから高いもの、軽いものから重いものまで使ってみたものの。
どれも太すぎたり長すぎたり、はたまたシフトレバーとの固定長が短くなってしまったりで、純正のコンパクトでクイックかつダイレクトな感触に及ばなかったり、変な振動が増幅されて感触が悪かったり音が出てしまったりするのです。
そのたびに結局純正に回帰するわけですが・・・・・・
やーっぱ安っぽいよなぁ・・・・・・ ちょっと汗ばむとすぐ滑るし・・・・・・ 欲をいえばもうほんのちょっとmm単位で太ければ握り心地も良さそう。
そうだ、コレそのものに革巻いてやればいいんじゃなかろうか?
こういう話に需要があるかわかりませんが、とりあえず顛末をお伝えしてみます。
あれこれ検討
そういう専門業者に丸投げで頼むと、おおよそ15,000円~くらい。ここ最近の懐具合からすると、痛い、痛すぎる。却下。
かつて入手するもやや大きすぎた純正オプションのナルディとは別に、標準品に革を巻いたタイプの純正も存在しているものの、こちらもいいお値段の業者丸投げとほぼ同額。
こういった商品が多数存在しているのは知っていたものの、さすがに20年前のクルマ用のラインナップはなし(笑)
うーん、革の裁縫なんてやったことはないけど、自分で縫ってみるか。
お買い物
ネットであれこれ先人の知恵と努力の結果をお借りして、試行錯誤の手間は省きます。
買ってきたのは
・ダイソーの針セット(太目の湾曲したもの入り 布団用?) 2本欲しかったので2セット
・近所の手芸屋にあった、A4サイズくらいの牛革の端切れ
・ロー引きされた細いヒモ
この時点で、他に必要な道具(菱目打ち)は手持ちのあれこれで適当に代用するつもりでした。
型紙作成
これもネットから得た知識。
シフトノブ現品に、木工ボンドを溶かした水で、千切ったティッシュを濡らしながら貼り付けていきます。
乾燥後に希望の形に切り出したら型紙完成。
革に型づけして、パーツ切り出し
軽く湿らせた革を、あちこち引っ張って伸ばしながらシフトノブに沿わせて固定して、一昼夜乾燥。
革ってこんなに伸びるものだったんだなぁ。
乾いたら、シフトノブ形状に沿って型のついた革に型紙を被せて形状を写しとり、パーツを切りだします。
革を普通に縫うのは無理なので、切り出したパーツに糸を通すための穴をあらかじめ開けておくのですが。
ここで代用品での作業効率の悪さに嫌気がさして、菱目打ち(縫目の穴開け道具)を買ってきました。
等間隔にという作業性だけでなく、菱目という名前のとおり菱型の穴が開きますが、実はこれが縫目の綺麗な仕上がりに大事だったようです。
(菱の角に糸が入り込んで、規則的に重なることによって、縫目がより綺麗に並ぶ)
結果オーライ。
なお等間隔とはいいましたがカーブした部分の穴開けは、内側と外側で等間隔にしてしまうと全体でのピッチが合わなくなりますので、考慮と調節が必要です。
運動会の行進などで横隊が揃って曲がる際には、外側の人はより速く歩かないといけないのと同じですね。
縫い
ネットの情報を参考に、比較的簡単でありながら、一針縫う都度に糸のテンションの調整と革の伸び代で、型紙やパーツ切り出しの誤差をいなしていける「ベースボールステッチ」を採用。野球のボールの縫い方ですね。
簡単とはいいながら、糸を通す順番や方向を間違えては度々手戻りし、縫い終わるころには肩から背中にかけてガチガチに凝っていたほどでした。
ボタン付けや簡単なほつれ直しくらいであれば特に問題なくこなせるんですが・・・・・・
中腰で何時間もレンチやハンマー振り回してるほうがよっぽど楽じゃないか。
バイクのシートを張り替えたこともありますが、あれは車種専用に縫製済の出来合いの表皮だったので、タッカーでバチバチと留めるだけだったし。
完成
縫い終わった時点で縫目が不揃いだったり引き攣れができていた部分に、靴用の保湿ローションを縫って撫でるように引き攣れを伸ばし、ベトつかないようになってからクルマに取り付けたところがコレです!
よくよく見ると縫目が汚かったりはするのですが・・・・・・
初めて無の状態から見様見真似でやったもののわりには、そこそこではなかろうかと。
見た目は微妙ながらも、すり減り気味のウレタンのニセモノ革シボ模様よりはマシだし、革を巻いた太さぶんばっちり希望どおり、手触りも良くなったし、何より滑らなくなった!
なんだかんだで、当初考えていたよりはしんどい作業ではありながら、決して難しいわけではなく。
私は急ぎ足ででっち上げたようなものですが、じっくり時間をかけて丁寧にやればやるほどに綺麗に仕上がる、機械モノはちょっと苦手・・・・・・といった方にも(失敗しても危険のない)オススメできるカスタムです。
経費は買い足した道具と、途中で買いなおした革を手縫いする場合の専用糸(シニュー糸というそうです)も入れて5,000円とちょっと。
革と糸もあと二つか三つは作れそうなくらいは余っています。
ノンブランドの既成の本革巻きならもっと安くからあるでしょうが、この先劣化してしまった時にはバージョン2,3としてアップグレードもできるだけの知識と技術と道具と材料が手元に残っています。
くわえてほぼ理想どおりのものが手に入ったことはプライスレス。
これぞDIYの醍醐味ですね。