アメリカを代表するスポーツカーのひとつ、シボレー コルベット。その2代目モデルにあたるC2、通称「スティングレイ」は1960年代を象徴するかのような優雅さをもったボディラインで、今なお多くの人を惹きつけます。中でも1963年のたった一年間だけ販売されたスプリットウインドウタイプは、マニア垂涎の一台です。
そんな希少なマシンを、カスタムショップ「Jeff Hayes Customs」が「ARTISAN CORVETTE」として現代的に進化させました。本来のデザインを活かしながらも、レトロフューチャーなカッコよさを持つボディに仕立て上げ、さらに足回りをリフレッシュ。ひとたび乗れば、ついついワインディングを気持ちよく流してしまいそうなほどの仕上がりです。
往年の男の夢を体現
ARTISAN CORVETTEは流麗かつ洗練されていながらながら、どこか懐かしさを感じさせる外装が印象的です。まるでスティングレイが生まれた1960年代の未来感をこのマシンに落とし込んだかのような錯覚さえ覚えます。
内装に目を移すと、赤一色のレーシーな革張りインテリアが。シートに腰を下ろせば、猥雑な高級キャバレーの雰囲気すら味わえそうな妖艶さと洗練されたイメージを同時に味わえます。往年の男の夢がARTISAN CORVETTEには詰まっているといっても過言ではないでしょう。
唯一無二のスプリットウインドウ
そしてこのクルマのデザインを語る上で外せないのがスプリットウインドウ。ルーフ中央部分からテールエンドに向かってリアウインドウが二分割された独特の形状で、ベース車からきちんと受け継がれています。ここだけを見ていると、どこか航空機の機首を思わせるデザインですね。
シンメトリーなところにも目が行きますし、個人的には滑らかな局面をもつリアウインドウに工業製品としての価値を強く見出してしまいます。
ちなみにコルベットで初めてリトラクタブルヘッドライトを採用したのもスティングレイ。以降2005年に登場したC6型コルベットで廃止されるまで受け継がれてきました。現在ではまったく見なくなった機構ですが、今でも愛好者が多いのも頷けるカッコよさです。やっぱりボディは一体感があるほうがレーシーですから。
快適な旅を提供するパワートレイン
パワートレインには、ゼネラル・モーターズがホットロッドの改造用に用意している比較的コンパクトなV型8気筒エンジンと4速オートマチックを組み合わせています。ピカピカに磨き上げられたエンジンルームは見ているだけでも所有欲を満足させてくれますし、いつでも豪快なエンジンサウンドを楽しめるのはアメ車好きにはたまりません。
ちなみに最高出力は540馬力!と現代のマッスルカー顔負けなのに、燃料供給装置はキャブレターとビルダーのこだわりが見えます。燃費が悪かろうとやっぱりロマンを追い求めたいって気持ちには激しく同意です。
リササスをマルチリンクに変更
そして足回りも注目ポイントです。リアサスペンションがトレーリングアームからマルチリンク式に変更されているのです。
マルチリンク式サスペンションといえば、現代において高級車やスーパーカーなどに採用されているハイスペックの代名詞。つまりただパワーを求めるだけじゃなく、きちんとコーナリング性能も強化されているというワケ。レトロフューチャーな見た目ながら現代的なスポーツカーの走りを楽しむことができるのです。

タイヤはTOYOをチョイス
「見た目は美しくてレトロ、そして現代のクルマに負けないスポーティーな走り」を求める五感の肥えたドライバーにはどストライクな仕様と言えるでしょう。オートマなので肩肘張らずに流せるのもいいですね。
人もクルマも足元は大事
本来のデザインを大事にしながらさらにスタイルアップし、内装に手を加える手法は見事の一言。さらにリアサスのモディファイで現代的な足回りを手に入れて、より気持ちの良いハンドリングと有り余るエンジンパワーを楽しめるようになったことはドライブ好きにはうれしいところです。
いくら旧車とはいえ、やはりクルマは走らせてなんぼ。いつの時代でも、人もクルマも足元には気を使っていくべきです。