近年、クルマの自動運転開発が日進月歩のごとく邁進しているなか事故も多発。日本では国内初の自動運転車による死亡事故、ハイブリッドカーを運転する高齢ドライバーの暴走事故や攻撃的なあおり運転などが社会問題化され、自動車業界の大変革期に伴う問題が次々と起こっています。
クルマは我々が想像していた以上の高性能化するに従い、なぜこれほど事故が起きているのでしょうか。
自動車技術の大変革!日本の交通事情が追いつていない
自動車メーカーは、電気自動車と自動運転セットでの技術革新や、高度な電子制御を駆使した予防安全技術を登場させ、ドライバーの負担を減らし事故を減少させることを大前提に開発を進めています。
しかし、自動運転作動中に起きた事故は多く報道されています。
今年7月には高速道路上で起きた衝突事故現場に、居眠り状態でクルーズコントロールシステムによる運転をしていたテスラ・モデルXが突っ込んでしまい、一人のライダーの命が奪われてしまいました。
日本国内では初めてとなる自動運転車による死亡事故は、ドライバーの不注意と不完全なシステムによる不運な組み合わせによって引き起こされました。
そして、当然予想されていた通り、国内外問わず自動運転の事故については誰が責任を取るべきか議論されています。
自動運転にドライバーは頼りすぎている
日本は「レベル2」の自動運転までが認められます。
実際にはレベル3からが自動運転の領域とされますが、テスラのオートパイロット機能は高速道路でのアダプティブクルーズコントロール時にハンズフリー走行(ハンドルから手を放した状態)が認められて、ハンズフリー走行はドライバーが監視操作することが条件として定められます。
テスラの車両には、衝突回避と自動緊急ブレーキシステムを含むアクティブセーフティテクノロジーが標準装備されているにもかかわらず、アメリカで報告されるテスラ車両による事故は、ハンズフリーでの走行時が圧倒的に多く、レーダーやカメラが周りのクルマや車線を認識しきれていたかったことが原因とされます。
高速道路を走っているテスラ・モデル3のドライバーが居眠りしたままの動画がYouTubeに投稿されています。
ドライバーとしては、ハンドルを持たず、足元のアクセル・ブレーキペダルも操作しないまま自動で運転している状態で、最初はしっかりと前を向いて注意をしていたとしても、手動運転時よりも集中力は長く続きません。操作の間隔がなくなれば、いずれは飽きてしまい集中力が途切れてしまいます。
集中力が途切れ途切れになっても、ドライバーは時間が経てば運転をクルマに頼り切ってしまい、万が一の事態での想定が薄れていき、システムのエラーにも気づかなくなってしまいます。
事故を起こしたテスラのドライバーは、自動運転に頼りきってしまったのです。
レベル3認可に対策はされているのか
日産は自動運転レベル3に限りなく近いプロパイロット2.0搭載の新型スカイラインを発表し、アウディからはレベル3搭載のA8を2017年に発売しています。
また、自動運転車の公道走行を可能にする改正道路交通法が2019年5月28日の衆院本会議で可決、成立し、2020年をめどに実用化を目指しています。
着々と自動運転時代に差し掛かろうとしている中、問題解決が十分になされていないような気もします。自動運転導入を優先したいせいか、高齢ドライバーの事故に関する解決策も政府内で議会されていません。
未来の技術が現実にしようとする一方で、課題解決は後回しのままにしてはなりません。
モーターのパワー特性が危険リスクを高める
日本が高齢化社会になるにつれ高齢ドライバーの事故が社会問題となり、今年4月19日に東京・池袋でおこった東池袋自動車暴走死傷事故では、死亡者2名・負傷者9名が犠牲となり、高齢ドライバーのブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故でした。
加害者が運転していたトヨタ・プリウスで、クルマには異常はなく、予防安全技術非搭載の旧型モデル。プリウスは最も売れているハイブリッドカーであるため、事故件数が他のモデルより多くなってしまうのは必然ですが、それでもプリウスが暴走して事故を起こしたという報告が目立ちます。
原動力にモーターが加わるようになり、何か事故を起こしやすい要因が潜んでいるのかもしれません。
予防安全装置搭載車を乗る高齢ドライバーが増えてほしいところですが、「乗れれば良い」という考えは意外に多いもの。予防安全装置が搭載されていない旧型のハイブリッドカーやPHVを乗る高齢ドライバーが起こす暴走事故には、モーターのパワー特性が背景にあります。
モーターは低回転域から最大トルクを発生するため、発進でアクセルを踏んだときにフルトルクで加速してくれます。これが不幸なことに、踏み間違いをしてしまったとき、クルマを暴走させる大きな要因になってしまうのです。
高齢ドライバーに対しては、「免許更新時にブレーキ踏み込む十分な脚力があるか、瞬時の判断ができるか、などのテストをすべきではないか」という声も多々ありますが、テスト形式で免許返納を義務化しようにも、クルマが唯一の移動手段である地方都市在住の方であれば、そうはいきません。
超高齢化社会を迎える日本にとって、高齢ドライバーによる事故の対策は急務です。
やまない「あおり運転」
そして最近話題になりがちなあおり運転。2019年8月におきたおそろしいあおり運転と暴力行為は、日本全体に大きな不安の波を広げました。
自動運転は完全ではなく危険だ、という意見が枚挙する一方で、こうした人間がハンドルを持つことで起きてしまうトラブルも後を絶たない現状です。
毎年、あおり運転によって死亡事故は発生しており、悲しいニュースは絶えません。あおり運転は自己正当化や常習化しやすく、ある意味では心の病でもあります。自動運転にはない心が引き起こす悪質な運転は、まさに人間特有というほかありません。
不完全な自動運転、運転アシストの過信、人的操作ミス、事故規模を増幅しかねないモーターパワー、そして人間特有の危険運転。今のところ自動運転機能や車の性能そのものよりも、人間の生み出す要因の方が多くみられますが、果たしてどちらが危ないのか。
今後の車開発事情に大きく影響しそうですね。