自動車事故を招く危険因子としてよく取り上げられるのが睡眠時無呼吸症候群だ。日本国内には推定200~300万人ほどの患者がいると言われており「居眠り運転による事故を精査したところ、睡眠時無呼吸症候群を発症していた」というケースは少なくない。
ここでは、今回と次回にわたり、睡眠時無呼吸症候群についてご紹介していきたい。
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群は主に、
- 「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」
- 「中枢性睡眠時無呼吸症候群」
- どちらの要素も見られる「混合性睡眠時無呼吸症候群」
の3タイプに分けられる。
最もメジャーなタイプが閉塞性睡眠時無呼吸症候群であり、喉の筋肉が弛緩し、気道が塞がれることで無呼吸の状態となる、これが閉塞性睡眠時無呼吸症候群である。
そもそも、私たちが呼吸を行う時、脳幹から呼吸を制御する筋肉に信号が送られる仕組みとなっている。ところが、中枢性睡眠時無呼吸症候群になると脳幹が正常に機能せず、筋肉に信号が送られなくなる。脳幹が正常に機能していない場合、血液中の二酸化炭素濃度の上昇に対する反応が遅れる一方、身体が過剰に反応し、過呼吸が引き起こされる。また、血液中の二酸化炭素濃度の低下への反応も遅く、その結果呼吸停止の状態が長引くことになる。
睡眠時無呼吸症候群の症状
閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群の症状は重複しており、両者を判別することは医者でさえも難しいとされている。閉塞性睡眠時無呼吸症候群および中枢性睡眠時無呼吸症候群の主な症状については以下の通りである。
- 大いびきをかく(主に、閉塞性睡眠時無呼吸患者に見られる)
- 睡眠中に呼吸が停止する(但し、一緒に眠っている人に指摘されて気づくことが多い)
- 呼吸が浅く、突然目が覚める(中枢性睡眠時無呼吸症候群患者に多く見られる)
- 目が覚めた時に口が渇きや喉の痛みを感じる
- 朝、頭痛がする
- 夜ぐっすり眠れない
- 日中、眠気に襲われる
- 注意力が散漫になる
- イライラする
睡眠時無呼吸症候群の原因
まず、気道が狭くなる閉塞性睡眠時無呼吸症候群の最大の原因と言えば肥満である。とある研究によれば、肥満の人は正常体重の人に比べ、睡眠時無呼吸症候群のリスクが4倍である。
また、お酒を飲む人、煙草を吸う人、鎮痛剤や精神安定剤を服用している人、鼻づまりの人も要注意だ。性別や年齢ごとに見た場合、女性よりも男性の方、若者よりも高齢の方が閉塞性睡眠時無呼吸を発症する傾向にある。
一方、中枢性睡眠時無呼吸症候群については中高年に多く見られる病気である。なかでも鬱血性心不全や脳梗塞の既往歴のある方は要注意と言えよう。
次回は、先日米国睡眠学会で指摘された、睡眠時無呼吸症候群と事故との関連性について取り上げるものとする。
参考 – メイヨークリニック、メルクマニュアル医学百科家庭版