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新緑と陽射しの力とバイクの上で【for Rideコラム】

新緑と陽射しの力とバイクの上で【for Rideコラム】

取材を除けばほとんど家での仕事。形態にもよるだろうがフリーライターと言う仕事はパソコンの進化のおかげで、家から出ることなくこなせたりする。

だが、当然ながら家とは日常そのものの場所なので、「書く」という作業になかなか入れない時がある。独り暮らしなので掃除も洗濯もしなければならない場所で、精神的に書く方向に向かないか、向いたとしても何も浮かばないときがたまにある。

 

特に今の時期はマズイ。青空が眩しい春から初夏の風。だが雨も多く、今日は晴天だが明日は分からないぞと気紛れな空が囁いている気がしてくる。

締め切り間際ならそんな誘惑に耳を貸さずに、嫌がる脳みそにムチを打ってどうにかキーボードを叩いてみる。

時には諦めも肝心だ。「もう駄目だ」青空の誘惑に負けてバイクを出してしまう。

 

幸いなことに、筆者は神奈川県の県央部 厚木市に住んでいるので走る場所はいくらでもある。

宮ケ瀬湖に向かい山道に入る。眩しい新緑の中を走らせていると、自然と頭が回り出す。

 

季語としての新緑は春なのか初夏なのか。

「目に青葉、山ほととぎす、初ガツオ」とは確か初夏の歌だから初夏で良いのだろう。

正しい日本語の「萌え」は春のような気がするが若草が萌えるので、新緑ではなかったか。

目に眩しいのは枯れ木のような冬の樹木が一斉に青くなるこの時期だが、一番緑が濃くなるのは梅雨明けの頃だろうか。

 

とりとめもない思考が頭を巡り、「蕎麦屋でも探そうか。」などと急に思い立ち、蕎麦屋がこの近辺ならどこにあるかを考えるが、気分はその道を走りたくはない。

新たな蕎麦屋でも探してみるかと、同志道を選択し山の中にどんどん入って行く。

 

川の流れをみつければ、今度はこのあたりでキャンプしてみようか。

暑さのせいでTシャツだけで来てしまい、腕に当たる直射日光にまた日焼けしてしまう。

そういえば今月のガス代は随分と安かった。

どこかでアイスコーヒーを飲みたいから、コンビニがあったら止まろう。

最近のコンビニのコーヒーの美味さはコーヒー好きには実にありがたい。

 

目と身体がバイクを操縦して、思考はどうでもいいことを考える。

道は峠になり、後ろから迫るバイクのヘッドライトには素直に道を譲り、自分のペースでのんびり走る。

山の中に蕎麦屋などあるはずもなく、結局は家の近所に戻りいつもの蕎麦屋で遅めの昼飯になる。

バイクですんなり来れば10分。5キロ程の距離を峠を往復して50キロ。1時間以上かけてしまう。

バイクの上は思考をぐるぐる回転させるのに適している。目的地もない場合は特にそうだ。

 

蕎麦屋から出ると、まだまだ帰るには早いかと今度は海の方に走ってみようと、新しく開通したばかりの圏央道に乗ってみる。

書かなければならない仕事の事を忘れ去り、子供のころは海水浴と言えば葉山の一色海岸だったな、クラゲに刺され大泣きしたことを、クラゲに刺された時の対処方法を、これからのキャンプは虫刺されに悩まされることを、今年はあの虫除けを使ってみようか。
新緑と太陽のパワーにバイクをプラスすると、すっかりと思考がぐるぐる回り、そんな時間を過ごして家に戻ると、不思議としっかりと仕事の頭になっている。

時には目的もない走りも必要なのだと、眩しい陽射しの中で思う。

 

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