「語るに足る、ささやかな人生」
駒沢敏器著
満開の桜の下をのんびりとカブで走る。
毎年必ず走る近所の桜並木だ。
もう少し足を延ばせば我が家からなら宮ケ瀬や同志道。或いは横浜も良い道はある。長い休みが取れれば東北も、九州も四国も気持ちのいい道はいくらでもあるし、北海道なら1カ月や2カ月では走り切れないほどだ。
なので一生バイクなんかで走っていても日本をすべて見ることは不可能で、だからこそ走りに出かけるたびに感動するような景色や道に出会えて、そんな場所でキャンプするのが最高に楽しい。
日本でそれだけ楽しめるのだからアメリカを走りたいという欲求はほぼない。アメリカに渡航する代金やレンタルバイクの費用を考えればそれでもっと日本を旅したいと思ってしまう。
毎年アメリカに走りに行く仲間もいるし、帰ってからの土産話や、広大な土地やどこまでも伸びる道にはそれは心惹かれるところもあるが、日本の空の下で充分なのだ。
アメリカには小さな街が無数にあるらしい。
人口が三千人にも満たないようなスモールタウン。メインストリートには昔ながらのショップが数店舗あるだけで、街中の誰もが顔見知り。だから道を歩けばずっと挨拶をしているようなそんな街。
金ではなくて街の人に役立つことを。街の中で役割を持つことを誇りにしている。現代のアメリカに逆らうようなそんな街が相当数あるらしい。もちろん誇り高く、それでいて楽しく暮らせている街はそれほどない。ほとんどは大都市に全てを奪われて廃墟に近い年寄りだけが住むような街もある。
スモールタウンだけを旅してアメリカを旅する本。
ドライブインシアターがある街。昔ながらの正しく美味しいアメリカの料理をだすレストランのある街。昔の栄光に見放されて客など稀にしか来ない豪華なホテルのある街……行ってみたい。
小さな街のモーテルの前にバイクを停めて、小さなカフェで夜はビールを飲んで、翌朝にはハッシュドポテトとベーコンエッグにパンをアメリカン珈琲で流し込んで、そうしたらまた違うスモールタウンに。
まぁ、英語も喋れないのだから夢のまた夢なのだが……
それでも知りもしなかったアメリカを見せてくれる旅の本はおススメなのです。