ベスパシリーズの中でも”GS”の名を冠する車種は特別な意味合いを持って語られることが多いが、とりわけ傑作として言われることが多くエポック・メイキングなモデルとして高い人気を誇る「160GS」。
歴代ベスパの各シリーズの中で人気投票をしたとすれば、間違いなくトップに君臨するであろう160GSについて、ここでは語ってみることにしよう。
グランスポルトとはベスパの中でのスポーツモデルだ
1962年、市販ベスパの最強モデルとして名を馳せた「150GS」の後継機である「160GS」が登場した。
この”GS”とは”グランスポルト”の略であり、ベスパの中ではスポーツモデルとして位置づけられる仕様で、当時のフラッグシップモデルでもあった。
流麗なデザインと高性能さとを併せ持つモデル
ベスパの持つ豊かな曲面で構成されたディテールを崩す事なく、流麗と呼ぶに相応しいデザインの新型ボディを与えられた160GS。それまでのモデルとは異なり、跳ね上げ式だったサイドパネルは左右とも着脱式へと変化を遂げ、整備性が格段にアップした。
また、スペアタイアは左側のパネル内に納められ、ツールボックスはシートの後方に収納された。フロントフォークとサスペンションも新設計となり、スプリング、ショックな一体型となりフォークの後方に取り付けられた。テールライトは、それまでの塗装からメッキへと変更された。
エンジンはスポーツフィーリングを味わえるピストンバルブと、オイルの混合比率は5%(ベスピーノなどは2%)などは踏襲しつつも、ピストン直径を大きくするだけの気軽な排気量変更ではなく、新設計を施された。このエンジンと新型ボディの採用により、160GSは市販ベスパで最初の100km/h走行を可能とした。メディアでも高く評価され、ベスパの頂点モデルと呼ばれるようになる。
160GSには”マーク1″と”マーク2″の2種類が存在する
1963年、160GSは幾つかの変更を受けることとなる。外見の大きな特徴はシート後部に設けられたツールボックスがレッグシールド部に移されたことと、ナンバープレート装着部が曲面から平面になったことなどが挙げられる。前期と後期を区別する意味からマーク1、マーク2と呼び分けられるようになる。このマーク1、マーク2はそれぞれ約3万台、合計約6万台が生産された。
傑作ベスパ160GSは4年の期間でその役割を終える
1964年、満を持して登場した次期フラッグシップモデルである”180SS”の登場とともに160GSはその役割を終え、イタリア国内での生産は終了されたのだが、ドイツなどではその後も160GSの製造は続けられていたという。
生産終了から約50年が経過した現在、160GSは稀少モデルとして語り継がれ、マニア垂涎の一台と化している。当然、フルレストアされた車両などは三桁万円などという、高額な値段で取り引きされることとなる。ベスピーノのように手軽に入手可能とは、口が裂けても言えないレアモデルだ。
もし、この160GSに興味があるというのなら、有名ベスパショップに足繁く通うなどして、時間とお金をかけて探すより他ない。そうして入手したならば、可能な限り大切に扱うことをオススメする。その価値がある一台となるハズだ。
画像 – Flickr : humbletree、Graziano Secchi