バイクブームの全盛期、80年代にはレーシングマシンからフィードバックを受けた数々のスポーツバイクが販売されていました。その特徴とも言えるのが車体全体を覆う幅広のカウリング。ツーリングバイクですらその傾向は強く、エンジンサイドまでのハーフカウルや、アッパーカウルのみを装備したマシンが主流となっていたほどです。
YAMAHAが1984年から1991年まで販売していたFJ600もそのうちの一つ。実は日本初の600cc直列4気筒エンジンを搭載し、ヤマハ初の調整式モノサスを採用した、スーパースポーツバイクのご先祖様とも言える記念碑的なバイクなのですが、問題はそのスタイリング。
空力性能を考えたにしても、今見るとどこかやぼったい印象を感じずにはいられないと気がしませんか?
シンプルかつクールなカフェレーサー
そんなノスタルジックなスタイリングのFJ600を、21世紀仕様のイカしたカフェレーサーに仕立てたのが、ドイツにワークショップを置くMotopolaの「Xaver Justus」です。
Motopolaがまず取り掛かったのはデザインの断捨離。80年代の象徴とも言えるカウリングはすべて取り払い、不要なマウントやサブフレームを取り外し、フレームを滑らかにしていきました。パウダーコートで塗り直されたことで、フレーム本来の美しさがさらに際立っています。
タンクは形状こそそのままですが、手作業で研磨されたことで素材感が美しいいぶし銀のカラーになり、同じものとは思えないほど渋いイメージに。ヤマハレーシングの代表的なシンボルであるスピードブロックを黒いカラーにして塗装したことで、さらに引き締まった印象を与えています。
そして、シートカウルはタンクから流れるような一体感をもった形に変更。タンクからよりストレートに伸びた印象になるよう、50mm持ち上げたシートサポートを制作しています。まるで金属のような見た目ですが、実はFRP製。塗装だけでタンクと同様の質感を生み出しているなんて、技術の高さを感じます。
元のフロントフォークは正立でしたが、レーシーさを高めている「Xaver Justus」は倒立化しています。これは日本ではまず目にすることがない、イタリアのベルガルダ・ヤマハが製造していたSZR660から流用したもの。中古パーツですが、ケースを赤くアルマイトし、リビルトされています。さらにオーバーホールされたエンジン廻りや高性能なBremboのブレーキシステム、Bituboのリアサスなどを装着したことで、最新のバイクに負けない性能と見た目を獲得しています。
カフェレーサーに欠かせないセパレートハンドルはDucati 900SSのクリップオンを流用。ヘッドライトも一回り小さなものに変更され、フロントのイメージを一新。LED化したことで、光量アップも見込まれます。
こうして仕上がった「Xaver Justus」は、まるで最初からクールなカフェレーサーだったかのような完成度です。「醜く生まれたオートバイ」というキャッチフレーズをもつMotopolaからは、今後もすばらしいスタイリングに生まれ変わったマシンが続々とデビューすることでしょう。