「一期一会に完敗しつつ」
1月9日
前日の雨がすっかりと晴れ渡った。
今日は高知方面に向かいキャンプだが、キャンプ場が室戸岬近辺しかなさそう。そう言えば前回四国を走った時にも同じ道、同じキャンプ場に泊まったことを思い出しつつ、海沿いを走る。
途中で海沿いから外れた県道を巡り、ぽつりと建っていた食堂で昼飯。ここの定食は全てにうどんが付くということなので、うどんだけ大盛にしてもらったらとてつもない量。大食い選手権予選会場ののような雰囲気になりつつも頑張るが、残念なことに少し残してしまった。
偶然に立ち寄る食堂というのも旅の中の楽しみのひとつだ。
チェーン店やファミレスも安心でいいが、偶然に通りかかった地元の食堂。よほどのことがない限り二度とその店に来ることはないし、気まぐれで入った県道となればその道を走ることも二度とないかもしれない。まさに一期一会。そんな一期一会で完食できずに完敗。口惜しさをかみ締めながら走る。
冬の四国の海は穏やかに煌めき、高知県に入ると幕末の活躍した志士たち銅像や生家などの看板が増えてくる。途中のスーパーで買い出しをすれば、近所の方々が珍しそうに話しかけてくる。寒いに決まっている走りの連続の中で、弛んでしまっているような緩い時間が流れるそんなときが旅の中に現れる。なんのドラマもないし、凄い景色を目にしたわけでもないのにそうした時間の記憶はなぜだか濃厚に残るし、そんな時間を思い出すとまた旅に出たくなる。
喜怒哀楽の何にも属さないような、ふーっと息を吐き出したような時間の中にこそその旅の良さが詰まっているのかもしれない。
買い出しを終えて室戸岬の山の上にあるキャンプ場に到着。陽があるうちは南国の暖かさを実感できるが、暗くなれば寒くなる。冬の旅は我慢の連続だ。寒いキャンプ場でどう過ごすのか、快適に過ごせる手段はいくらでもあるし、その準備もしているが、寄る年波か毎年厳しさが増しているようにも思える。ランタンの灯りと焚火の温もり。みんなで回して食べる暖かな食材とアルコール。
明日の予定を相談する。関東組の1台が明日は帰路につく。
高知のひろめ市場で朝飯を食べて、みんなでしまなみ海道を渡り尾道で見送ろうかと相談しながら、ともかく早めに出てひろめ市場を目指そうということになり、早々にテントに入り込み寝袋に包まる。
平和な中だるみのような旅の一日は心地よい眠気を誘うのだ。
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