さいたま市と、ホンダ、ヤマハ発動機は、さいたま市の電気自動車普及施策「E-KIZUNA Project」の一環として、EVバイクの普及拡大と交通空白地域の解消に向けた実証実験を開始すると発表しました。
どんな実証実験なのか?
実証実験の内容としては、さいたま新都心駅の東口自転車等駐車場を利用するユーザーを対象に、EVバイクのレンタルやバッテリー交換および充電サービスを行うというものです。
レンタル車両としてはヤマハ「E-Vino」(ビーノのEVバージョン)を30台配備。利用者の募集は7月21日からさいたま市のホームページにて募集スタートしており、実施時期は2017年9月〜翌年3月までとなっています。
なお、将来的にはこの実証実験のほか、EVバイクのシェアリングの実証実験も検討するとのこと。
ヤマハの発表によると、このように書かれています。
この実証実験を通じ、さいたま市はこれまで普及拡大を進めてきた電動四輪車のみならず、EVバイクの活用も図ることにより、多様な電動モビリティを安心して快適に使える低炭素社会の実現を目指します。
Honda・ヤマハは、より環境に優しいEVバイクの普及によりお客さまが移動する喜びを感じ、より豊かな生活になることと、バイク市場のさらなる活性化に向けて取り組んでいきます。
この実証実験の裏側に秘められたバイク復権の可能性
今回の発表では、冒頭でこのように謳っています。
電動車両を安心して快適に使える低炭素社会を目指す地方自治体と、EVバイクの普及を目指すバイクメーカー2社で行う取り組みとしては初の試みであり、CO2削減とEVバイクの普及に向けた重要な一歩となります。
何も考えずにこのニュースを見たら、「へ〜。ヤマハとホンダが、さいたま市でバイクレンタルの実験始めるのか。さいたま市民ラッキーだな。」くらいにしか思わないでしょう。しかし、筆者には、この取り組みの裏側に秘められた、バイクメーカーの挑戦が見え隠れしているように感じました。
読者の皆さんもご存知の通り、昨今若者の”○○離れ”では、「バイク離れ」ももれなく危惧されています。現にバイク需要も減少の一途をたどっています。そのため、バイク関係団体と経済産業省が中心となって、バイク需要拡大について話し合う会議体として、2013年より「バイク・ラブ・フォーラム(通称:BLF)」が始まったわけです。
さらにこのフォーラムの中で、「2020年の国内販売100万台の目標を掲げたロードマップ」なるものが作成されたわけですが、2017年現在、特に妙案や得策もなく業界自体の冷え込みは続いているのが現状なのです。
バイクへの興味がなくなった!?
バイクブーム全盛期、ライダーはバイクに乗っていない人へその魅力を伝える時に「乗ればわかるんだよなぁ」と言い、そのあとに、河川敷や農道などでこっそり乗せてくれたものです。しかしバイク離れが進んだ現在、ライダーの減少と共に、そんなバイクのボランティア伝道師たちも減ってしまいました。
バイクの魅力について教えてくれる近所の先輩や友達、道路を颯爽と駆け抜けるライダーが減少した現在、若者たちはバイクの魅力はもとより、興味すら湧かない、自分とは無関係の状態になってしまったということです。
つまり、バイクの「認知→興味→体験→購入」という従来までのロジックが破綻してしまったのです。
ということは、2016年の国内新車販売実績が約33万台(※)なのに、2020年までに国内販売100万台という目標は、とてつもない良策を打ったとしても不可能でしょう。
(※日本自動車工業会調べ)
では、2020年までに国内販売100万台を達成するためには、どうしたら良いのでしょうか。
バイク業界復活・復権の鍵は「シェア」
100万台売ることが不可能なのであれば、まずは100万人以上に乗ってもらえば良いのです。「認知→興味→体験→購入」のロジックが破綻してしまったのであれば、「認知→興味→体験→体験→体験…」にすれば良いということです。
クルマにおいては既に「所有からシェアリング」が主流になりつつありますが、バイクもそれになぞらえることで、利用者数の拡大、ひいては需要の拡大につながるのではないでしょうか。もちろん、バイクのレンタルやシェアリングは、クルマよりも多くのリスクがあるため、市場創造や価値観(認知)の改革には、とてつもない時間と労力を費やすでしょう。
そのための大きな第一歩、それこそが今回の民官一体となった取り組みであり、バイクメーカーの挑戦と言えます。
兎にも角にも、この実証実験がバイク業界復活・復権において大きな前進となる事を願います!