ドゥカティ パニガーレV4Rといえば思わず息をのんでしまうほど美しいスタイリングが魅力のスーパースポーツ。それをレゴブロックで実物大のモデルとして作ってしまったという猛者が登場しました。ただし車体のすべてというわけではなく、外装パーツのみです。さすがに走行の振動には耐えられないようで、実際に走らせることはできないのですが、サーキットで撮影された写真に写るその姿は実車にも負けず劣らない美しさを誇ります。
一体どんな人が作ったのでしょうか。ドゥカティファンも唸らせる作品の製作工程は一見の価値アリですよ。
イタリア唯一のレゴ認定プロビルダーが制作
レゴにはその製作技術を認められたプロビルダーが存在します。2020年6月の時点で世界ではたった17人。しかもレゴの社員というわけでも、審査の試験があったりする訳でもないのです。大きな作品を作ったり、イベントを行った実績などで推薦されたり、自分から手を挙げ認められて初めてプロビルダーとして活動できます。なりたいと思ってなれるものでもない、レゴマニア憧れの職業といえるでしょう。
そんな難関ともいえる認定を受けたプロビルダーのひとり、リカルド・ザンジェルミさんがドゥカティ・パニガーレを手掛けました。
1:1スケール作り上げたビルダーの熱意と職人技
制作に使用したブロックは約15,000個、要した時間は約400時間。1日10時間作業したとしても40日はかかる計算ですから、それだけでもとんでもない手間がかかっていることは想像に難くありません。しかも接着剤やテープなどは一切使われておらず、基本はレゴブロックの組み合わせのみで形成されています。車体への固定もカウルに使うビスだけとまさに職人技ですが「あまりの手間と複雑さに一度だけ挫折しそうになった」とリカルドさんは語っています。そんなエピソードにも人間味が感じられますね。
実際、使われているブロックはレッド、ブラック、ライトグレーの三色だけですし、同じ色のブロックを延々と組み合わせていると気が滅入ってくるのは、レゴで遊んだ経験のある人ならわかるハズ。
さらにすごいのが、設計は3Dモデリングソフトウェアを一切つかっていないことです。詳細は明らかにされていませんが、少なくともリカルドさんがスケッチをするか、頭の中で構造を考えて組み立てていくかするだけで、形を作り上げていったことは確か。ここまでできるからこそ、彼はイタリア国内で唯一の認定ビルダーたりえるのかもしれません。ちなみに彼が一番苦心した箇所が、タンクと側面のカウルの間に形成したなだらかなカーブ。レゴブロックで作られたとは思えないほど曲線が美しく、よりバイクらしさを引き出しているように感じます。
面白いことに重量は180㎏と、実車の車両重量193kgよりも少し軽くなっているとのこと。ブロックが外れずに走れるなら、本家よりも速いかも⁉︎
実機と見まごうほどの精巧さ
こうして完成したレゴ・パニガーレ は、イタリアを代表するモデナのサーキットで本物のドゥカティ・パニガーレと並んでお披露目されました。パッと見た限りでは、どちらが本物か分からないほどの精巧さです。ドゥカティCEOのクラウディオ・ドメニカリさんと、MotoGPレーサーであるドゥカティチームのアンドレア・ドヴィツィオーゾ選手、レゴイタリアのゼネラルマネージャーであるパオロラザリンさんも同席し、出来栄えを讃えました。
実際に乗って走れないのはとても残念ですが、レゴ作品として多くの人たちに見てもらいたい1台ですね。一見ワイルドなようだけど、かなり繊細な芸術作品といっても過言ではないでしょう。