イギリスやマン島では故人を偲んでベンチを設置する習慣があり、公園や広場、沿道のそこかしこにメモリアルベンチを見つけることができる。ベンチには故人の名と生存年月、故人がどんな人物であったかが簡潔に記される。松下のマン島TT参戦に同行取材していたフリーライター・山下剛がこの習慣を気に入ったことから「まっちゃんベンチプロジェクト」が発起された。
松下ヨシナリさんを祈念するメモリアルベンチ
5月27日、英王室領マン島に故・松下ヨシナリさんを祈念するベンチが設置された。場所はマン島TTマウンテンコース沿いにある「ガスリーズメモリアル」で、故人を偲んでベンチを置く現地の習慣に則り、有志が「まっちゃんベンチプロジェクト」を立ち上げて制作費を募金、このたび設置された。
今年のマン島TTではさっそく「まっちゃんベンチ」に腰かけて観戦する人たちの姿が見られ、マン島とTTを愛した松下さんの意志が受け継がれたようだった。
マン島TTに設置された「まっちゃんベンチ」
ガスリーズメモリアルに設置された「まっちゃんベンチ」。写真右に見える道路はラムジーとダグラスを結ぶ重要幹線道路A18「スネーフェル・マウンテン・ロード」で、マン島TTのコースでもある。
ヘルメットに描かれていたパックマンが彩りを添える
まっちゃんベンチの銘には「In Memory of Yoshinari Matsushita 1969-2013 He Loved Motorcycle, He Loved TT, And All Of The Isle Of Man.」と刻んだ。そして松下が好んでヘルメットに描いていたパックマンが彩りを添えている。
まっちゃんベンチに腰かけ、マン島TTプラクティスを観戦する人々。
マン島TTシニアTT決勝日。フランスからバイクに乗ってやってきた3人組が、まっちゃんベンチに腰かけてレースを観戦した。
まっちゃんベンチから見るマン島TTはこんな様子。走行しているライダーは、ジョン・マクギネス。
シニアTT決勝、唯一の2ストロークマシン、Suter MMX500が走りゆく姿を、まっちゃんベンチから眺める。
「まっちゃんベンチ」の製作に多大なる尽力をしてくれたマンクス(マン島住民)のふたり。左は木工職人でベンチを製作してくれたデイビッドさん。製作だけでなく設置にあたっての基礎づくりも手がけた。右はピーター・カリスターさん。松下さんとも親友で、マン島TT以外にMotoGPの写真も撮影するフォトグラファーでもある。
ガスリーズメモリアル
マン島のA18「スネーフェル・マウンテン・ロード」にあり、TTコース・マイルストーンの26番と27番の中間地点にあたる。名称の由来は、マン島TT初期に活躍したライダー、ジミー・ガスリーの記念碑が建てられていることにちなんでいる。TTレース中はマーシャルポイントになる場所でもあるが、付近に駐車スペースがないため、観戦客は「グースネック」と呼ばれる観戦ポイントの駐車場から徒歩(約20分)で来る必要がある。
松下ヨシナリについて
1969年8月15日生まれ。二輪ジャーナリスト。レーシングライダー。二輪雑誌などへのインプレッション記事の寄稿や国内のアマチュアレースで活躍。2009年にマン島TT初参戦を果たし、2011年、2012年と参戦。2013年5月27日、マン島TT予選中の事故により死去。享年43。
原稿提供:山下剛