ミラノショー(EICMA)2022で非常に興味深い発表をしたメーカーの一つがイタリアのMVアグスタ。3台もの魅力的なニューモデルを世界初公開して注目を集めましたね。そこで今回は、そのなかでも特に注目度の高かった1台「921S」についてご紹介いたします！
「“921 プロジェクト”が始まったのは 2022 年 春のことだった」とMVアグスタは明かしています。将来におけるクラシックなMVアグスタのモデルを定義すること、そしてMVアグスタが有する豊かな歴史と最新技術のエッセンスを新たなカテゴリーに注入する方法論についてブレインストーミングを行ったといいます。その結果誕生したのが、この「921S」というわけです。
MVアグスタ「921S」は“Tech Retro”というアーキテクチャーに基づいて開発された
レースシーンで数々の伝説を持つMVアグスタですが、70年代にはホンダ「ドリーム CB750 four」にも負けない美しい空冷4気筒エンジンを搭載するネイキッドモデル「750S アメリカ」を発売しており、2017年には同車をモチーフにした「ブルターレ 800 アメリカ」を発売した過去もあります。
ところが今回の「921S」は「750S アメリカ」がモチーフというわけではなく、現代の技術を駆使したレプリカモデルを制作したわけでもありません。
その魂を継承できる新カテゴリーを作成する。
とMVアグスタは宣言しています。そう「新たなカテゴリー」なのです。
1970年代前半、MVアグスタは「750S アメリカ」でスポーツネイキッドというセグメントの基礎を築きました。「750S アメリカ」はMVアグスタらしいグラマラスなエクステリアを有しており、そこに最先端のテクノロジーが投入されていました。この手法をMVアグスタは”Tech-Retro”と定義して、それに基づいて開発したのが「921S」というワケなのです。
【Tech Retro＝温故知新】最新テクノロジーを投入した車両にMVアグスタらしい美しさを与える
Tech-Retroなんていうと小難しい印象を受けますが、つまりは「故きを温ねて新しきを知る」ということ。「750 S アメリカ」のようにMVアグスタならではの妖艶なシェイプのエクステリアを持たせつつ最新技術を投入することで、プレミアムネイキッドモデルに仕上げられたのが「921S」です。
エクステリアについてはご覧の通りで、もはや説明が不要なほどに作り込まれた完成度の高い見事な仕上がりです。
デザインの重要な要素の1つは、新開発された総排気量921ccの水冷直列4気筒エンジンです。車両全体のプロポーションとディテールのデザインがミニマルなボディワークを引き立て、それでいてパワー プラントの存在感を際立たせています。
最高出力は115.5bhp(86kW)、最大トルクは86lb-ft(116.6 Nm)。このエンジンは車体剛性メンバーに使用されることで、車体全体の軽量コンパクト化に貢献しており、乾燥重量は205kgとされました。
そのエンジンを吊り下げるのは、MVアグスタ得意の管状スチールトレリスフレーム。アルミ製サイドプレートが特大のアルミ製スイングアームにリンクしています。
前後サスペンションにはオーリンズ製品をチョイス。フロントは電子制御式倒立フォークを、リアはプリロードとリバウンド調整機能を備えたリアのシングルショックの組み合わせ。17インチのアルミ製リムにはカーボンファイバー製カバーを備えています。
ブレーキにはブレンボ製品が採用されています。フロントは320mm×2ディスク＋4ピストンキャリパー、リアは 220mmシングルディスク＋2ピストンキャリパーの組み合わせです。
極限まで追い込んだスタイリング美へのコダワリはディスプレイの搭載位置にも現れています。円形の4.5インチタッチスクリーンディスプレイは容量16Lのガソリンタンク上に搭載されており、これによりライダーの視界に入るコックピット(ハンドル周り)の美しさが際立つ仕掛けです。
また特徴的なレーシングテール「モノポスト」はアルミベースから取り外してパッセンジャーシートを装着することもできる仕様。
この魅力的な「921S」は未だコンセプトモデルの段階ではありますが、2024年半ばに製品化する計画であるとのことですので、楽しみに続報を待ちましょう！
