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カスタムペイント界の2人の挑戦者

カスタムペイント界の2人の挑戦者

二昔前の好景気の頃と違って今は収入面での期待はすごく厳しい。雇われの身であれ経営者であれなかなか先が見えない人がほとんだろう。だから少々安い収入でも失業することを考えると妥協してしまう。本当は先行投資すれば道が開けたり、次の展開のために投資したい場合でもリスクを冒してまではできない。まして家族がいて現状はささやかながら無事暮らしていける毎日だと一歩踏み出すことにおおきな抵抗を感じてしまうだろう。ただ、同時に心の中で「次のステップへの思い」がくすぶり続けることも確かなことだろう。

そんな混沌とした今、久々に「日本男児ここにあり」のような二人のアーティストが現れた。

 

二人のチャレンジャー

カスタムペイント界の2人の挑戦者

「High Jumper」増永氏はデザインも学んできたデザイナー兼ペインターである。彼のクライアントは有名革製品メーカーやレコード会社にまで及ぶ。革製品の購入者のためにオリジナルなデザインでネームを施したり、DVDジャケットのデザインやイラストを自ら施したり様々な分野で活動している。ちなみにTV選手権という番組で3位になった実力者でもある。

「虹色屋」のビートン氏はモーターサイクル業界では確固たる地位を確立しているペインターである。彼が用品ショップなどで出張ペイントをおこなうと多くのライダーたちが集まって来る。カブのオーナーからハーレーのオーナーまで関係なく。皆それぞれにヘルメットやフェンダー、タンク、革のジャケットにまで好きなペイントをしてもらう。彼は自分では言ってないがデザイン力も十分持っている。

二人にはいくつか共通点がある。経費削減のため家賃の高い都内ではなくそれぞれ横浜と千葉にベースを置いて奥さんと二人の子供と一緒に暮らしていること。モーターサイクルが大好きでその関係や車関係の仕事が多いこと。自身の技術に自信を持ちながら勉強はかかさないし、ライバルであれ素晴らしいものは素直に認めること。そして、完備されたスタジオでなく決して良い状況でなくてもペイントの仕事ができること。もちろん、多くの人が見ていようが堂々と仕事をこなす。面白いのはペイント中に話しかけても彼らは全然平気で、そのために作品が劣ることもない。そして最大の共通点が、もっと視野を世界に広げたい、ということ。

だから彼らはアメリカにチャレンジした。アマチュアからプロまで多くのライダーが集まる全米有数のモトクロス大会での出店に。増永氏は真夏の7月にオクラホマで、ビートン氏は4月にカリフォルニアで。どちらも、5日間小さなテント一張りとテーブル二つの決して立派とは言えない臨時ショップで、ほこり舞う35度の暑さの中、多くのライダーのヘルメットやパーツにペイントを施した。

アメリカ人は結構ストレートで、自分が気に入れなければまったく相手にしてくれない。ただ気に入ったペイントやその技術の高さがわかるとたちまち人気が出る。彼らも2日目にはレース場内で一番の人気者になってしまった。そのため毎晩ホテルでバックオーダー分の多くのヘルメットをペイントするはめに。にもかかわらず彼らは元気そのもの。わずかな睡眠時間と決してよくない環境だったが作品は全く劣ることなく、多くのアメリカン人を喜ばせた。

 

日本だったら一週間でそれなりの金額を稼げるのに自ら少なからずのお金を使い通訳もなしにアメリカの舞台に立った彼ら。もちろん自らのPRもあるだろうが、どうやら彼らの本心は「アメリカでやれた」という純粋な喜びのほうが大きいみたいである。着飾らないその純粋さはきっと彼らにとって大きなステップとなるだろう。

 

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Writer: 松並学

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