【2スト】パワーが通常の2倍!? 今こそ知って欲しい禁断の2ストロークバイク

2ストという言葉をご存知でしょうか?実はこれ、かつて存在していたエンジンやそれを搭載したバイクを示す言葉で、1990年代までは国内メーカーのラインアップにも載っており、速さの代名詞とも言える存在でした。今ではほとんど見ることのなくなった2ストのバイクっていったいどういったものだったんでしょうか。

 

昔は2ストが主流だった!?

今なお根強い人気を誇るホンダ NSR250R SE(1996年式)

今のクルマやバイクに搭載されるエンジンは、ほとんどが4ストローク(以下4スト)と呼ばれるエンジンです。

しかし、1980~90年代は2ストロークエンジン(略称:2スト)が搭載されたバイクが4ストと同じぐらい生産され、峠を走るレーサーレプリカ(今でいうスーパースポーツ)の多くが2スト250ccだったり、50ccクラスのレースは2ストしかエントリーしなかったりと2ストはバイク産業の一時代を築いていました

 

特に1980年代のバイクブームでは、レースのエントリーの大半が2ストとなり、そのフィードバックを受けて開発された公道仕様のスポーツバイクでも2ストが高性能化の一途を辿り、ヤマハRZ350やホンダNSR250といった多くの名車が生み出されました。

 

現在、国内メーカーから2ストはなくなりましたが、今でも4スト派か2スト派かでバイカーによって好みや意見が二分されることも少なくありません。

 

4ストの2倍のパワー!2ストが速かった理由とは

ホンダ・MVX250Fに搭載された、250cc 2ストローク3気筒エンジン

なぜこれだけ主流となっていたのかというと、ズバリ「パワーが出しやすかったから」です。

 

エンジンはピストンの往復運動によりクランク軸が回転し、通常の4ストでは吸気・圧縮・燃焼・排気の4行程を順に行い、この間ピストンは2往復します。

もちろん2ストも吸気・圧縮・燃焼・排気を行いますが、ピストンの上昇する間に吸気と圧縮を同時に行い、下降行程で燃焼と排気を同時に同時に行います。

吸気と圧縮、燃焼と排気をそれぞれをセットにできるので、2ストはたった2行程でピストンが1往復します。

 

ちょっと難しかったかもしれませんが、同じ排気量でも2ストは4ストより倍の早さでエンジンが回るから、理論上4ストの2倍の出力が出せるのです。

さらに4ストに比べればエンジン部品点数が少なく整備や修理が簡単、部品点数が少ないことで軽量化できるというメリットもあり、多くのバイク、特に400cc以下の小排気量モデルに2ストが採用されました。

 

排ガス規制強化によりいつのまにか2スト生産終了

そんなメリットの多い2ストでしたが、弱点もありました。4ストよりも2倍の速さで吸気・圧縮・燃焼・排気が行われる以上どうしても燃費が悪く、エンジンへの負担も大きいので耐久性がイマイチだったのです。

 

さらに2ストロークエンジンの排ガスは大気汚染への影響が大きいということがなによりも問題となりました。環境保全を考える時代の流れからか、平成18年度には自動車排ガス規制がそれまでより大幅に規制値が厳しくなり、コストや技術的な面から2ストロークエンジンの開発継続が困難となってしまったのです。そうして2000年を境に2ストロークモデルがどんどん生産終了へと追いやられました。

 

排ガス規制とは関係なかった競技車両は従来通り2ストがメインでしたが、とうとう2ストから4スト化への波が押し寄せます。2002年からロードレース世界選手権がMotoGPへと移行し、500cc2ストマシンと990cc4ストマシンの混走になりました。しかし排気量が倍の4ストマシンが圧倒的に優勢であったため、2003年のシーズン終盤では出場全車が4ストマシンへと移行。その後は、小排気量クラスのロードレースやモトクロスレースでも4スト化され、2ストマシンが出場できる競技は限られてしまいました。

現存する2ストバイク

では2ストは消滅してしまったのか、というと実はそんなこともないのです。海外ではまだ2ストバイクを生産しているメーカーがあるんですよ。

 

北欧メーカーから300cc 2ストオフローダー発売中

オーストリアのKTMとその傘下にあるスウェーデンのハスクバーナは、300cc、250cc、150ccのオフロードバイクをそれぞれ発売しています。

KTM/ハスクバーナーのファクトリーチームは、これらの2ストマシンでオフロードバイク競技のひとつであるエンデューロの世界選手権に出場しており、実はこの競技こそ2ストマシンの独壇場となっているんです。

 

軽くてパワフルなことはもちろん、低回転から高回転までトルクの谷もほとんどなくスムーズで、扱いやすいのが最新の2ストです。さらにぬかるみにハマって抜け出せないような状況でもオーバーヒートしにくかったり、転倒しても再始動がカンタンだったりといいことづくめ。1980〜90年代の2ストが持っていた弱点をほぼ克服していて、そりゃあ早いのも納得っていう出来なんです。

 

アプリリアは2ストスポーツバイクをラインアップ

イタリアのアプリリアは、50ccの2ストスポーツバイクRS50を販売しています。MotoGPマシンのようなフルカウルと、前後ディスクブレーキに倒立フォークなど豪華な装備で原付きとは思えないくらいです。

過去に、ホンダNS-1やヤマハTZR50Rといった2ストフルサイズレーサーレプリカが人気だったころには、国産に対抗すべくアプリリアRS50に乗っていたユーザーも日本では少数いましたが、今ではほとんど見かけなくなりました。

 

本国のイタリアではまだラインアップしていますが、日本ではいつの間にかインポーターのホームページにも記載がなくなってしまいました。とはいえ若干数が中古車も出回っていますし、国内でも比較的手に入りやすい公道走行可能なモデルといえます。

 

イタリア発の2スト250の本気マシン!

イタリアの新興バイクメーカーVinsは、250cc2ストのDUECINQUANTAを新車で発売しています。カーボン製のモノコックフレームとホイール、カウルを採用し、車重はわずか105kg。これに最高出力75馬力を発揮する水冷2ストロークV型2気筒エンジンを搭載し、最高速度は210km/hに達します。

DUECINQUANTAは、「もし2ストレーサーレプリカが現在まで販売され、そのまま進化したらどうなっていたか?」これを具体化したようなモデルです。

 

おそらく車体価格はリッタースーパースポーツの比じゃないほど高額となりそうですが、2スト全盛期を知っているバイカーには「金に糸目はつけん!」といわしめそうなくらい魅力的です。

 

まとめ:知らない若年層にこそ乗って欲しいバイク

MotoGPの前身WGPでシーズン全勝の記録を残す圧倒的な強さを示した2ストローク500ccエンジン搭載のレーサーNSR500(1997)

代表的な2スト250ccスポーツバイクだったホンダ NSR250やヤマハ TZR250Rなどが生産終了になって早25年が経ちました。若年層のバイカーにとっては、もはやおじさんたちの自慢話で聞く縁のないマシンのように思えるでしょう。しかし、2ストの加速感やエンジンサウンドの衝撃は時代を経てもなお変わりません。これからバイクと長く付き合う若者にこそ、味わって欲しい刺激的な世界がそこにはあります。

池田勇生

池田勇生

バイク・クルマ・モータースポーツをさまざまな視点で執筆活動をしているフリーライター。特に80~90年代の旧車や2ストロークバイクが得意です。