ハンドリングを向上させるヤマハのアフターパーツ「パフォーマンスダンパー」。以前、同社の代表的なオフローダー セローのエンジン横に装着されているのを見て、「ナンダコレ?」と思ったことがあります。
実のところ最初に採用したのは、2001年のトヨタ クラウンアスリートVXなのですが、以来ヤマハのバイクのオプションやトヨタのクルマへの採用が絶えることなく、トヨタ-ヤマハといったグループを超えての採用例も増えてきています。それだけ有効性が実証されていることの表れでしょう。
そんなパフォーマンスダンパーの仕組みって、具体的にはいったいどんなものなんでしょうか。
パフォーマンスダンパーは車体の振動を抑える
一部の特殊なものを除き、一般的なクルマのボディを構成している素材は一定の弾性をもつ鉄やアルミの板であるため、走行中に受ける様々な外力の影響で大なり小なり振動が発生しています。
パフォーマンスダンパーはこの外力が加わった時点で、その車体への影響を肩代わりして振動を抑える効果をもった装置になっています。
こう書くとなんだか難しく感じてしまいますが、場所こそ違えど一般的なサスペンションが行っていることと同じといってよいでしょう。バネとショックアブソーバーが路面から受け取った過剰な突き上げをやわらげ、余分なバタつきを抑えているのと全く同じ仕組みです。
振動を抑えることで乗り心地・静粛性向上
ではどんなメリットがあるかというと、走行中に起こる振動は物理的なものや音響として乗員に伝わってきます。
パフォーマンスダンパーはそうした振動の多くを発現させずに吸収してしまいますから、乗り心地と静粛性がともに向上します。
くわえて一般的にクルマでもバイクでも、速く走らせようとする場合には、タイヤのグリップの範囲内でサスペンションを締め上げながらボディ剛性を高め、走行状態の各負荷で歪むことによるボディアライメントの狂いを抑えて正確なハンドリングを保つのが定石です。
しかし、サーキットのような良好な路面のみを走行する場合はそれで良いのですが、一般道にはわだち・穴・段差等といった不整かつ不定な要素が多数あります。そうするとスピード一辺倒のクルマやバイクでは、乗員は箱の中の卵のような存在になったり、一瞬の気の緩みも許容しないような神経質な乗り味になってしまいます。
ところが、パフォーマンスダンパーを使うとそんな状況も改善できていまうのです。振動からくる歪みを反復させないことでボディアライメントを正しく保ち続けることができるため、ある程度「ゆるい」ボディとサスペンションを使って快適性を確保しながらも、正確で上質な走りを実現することができるのです。
バイク・クルマ問わず多数採用
冒頭でも述べたとおり、2001年にトヨタ クラウンアスリートVXで標準装備されて以降、会社系列の枠を超えて様々なクルマやバイクで標準装備もしくはオプション採用されています。
- レクサス・CT200h
- レクサス・HS250h
- レクサス・NX F-Sports
- レクサス・LC500
- ヤマハのバイク各種
- TRD扱いのトヨタ・ダイハツ車各種
- ホンダ・ヴェゼル
- ホンダ・ステップワゴン
- NISMO扱いの日産車の一部(R32~34スカイライン、Z33~34フェアレディZ等)
- COX扱いでのフォルクスワーゲン、アウディの一部
これからも標準装備やオプション設定での採用は拡がっていきそうですね!
ところで、ヤマハのバイク用のラインナップを見た場合に、YZF-R1やYZF-R6等の高剛性を誇るゴリゴリのスーパースポーツモデルには設定されていません。
これはもともと公道ではやり過ぎレベルの剛性を確保しているようなモデルでは必要ない、かつ不整路での神経質な乗り味でも許容される、またはフレーム形式的に有効な取りつけようがないという理由からでしょう。
取付は比較的簡単!
後付けする場合でも、取付作業は比較的簡単な部類といえます(基本的にメンバーやフレームにボルトオン)。とはいえ、ヤマハ公式サイトでも注意喚起されていますが、形だけを真似た類似品が安く出回っているようです。
制振という作業には、車種固有の振動の洗い出しと解析といった多大かつ綿密な実験検証が必要となるため、なんとなく形と機能だけを真似たからといってきちんと動作するとは限らない上、むしろ逆効果といったことさえあり得ます。
冒険心を発揮してもいいですが、ここは無難にヤマハの正規品を使っておきましょう。意外と日常域でも効果が実感できますよ。