ヤマハが生んだ【平成の名車】として、忘れてはいけないのが「VMAX」。厳密にいえば、初代は1985年に登場しているので対象外ですが、二代目は平成ド真ん中!なので細かいことは抜きにして、今回は「VMAX」をご紹介しまっす!
VMAXの発売開始は1985年……まだ昭和でした!
コチラが1985年にアメリカで発売されたヤマハ「VMAX 1200」。排気量1,200ccのV型4気筒エンジン。そして本モデルを語るとき欠かすことができないのが“Vブーストシステム”。
6,000回転を超えた付近より、インテークマニホールドの前後を繋ぐバタフライバルブが開き始め、8,500回転で全開になります。これにより1気筒当たりツインキャブ状態になる、という仕組みです。高回転時に大量の混合気を燃焼室に送り込むこのシステムにより、最高出力145ps / 9,000rpm、最大トルクを12.4kg-m / 7,500rpmを発揮。その独特の加速感は多くのファンの心を捉えたのであります。
一方で、その大馬力に見合った、この力感溢れるこのエクステリアもまた、ヤマハが打ち立てた一つの金字塔であります。ヤマハのニュースレターNo.51で、GKダイナミクス社長を務めた一条厚氏は、こう言っています。
デザインはデザイナーのひとりよがりであってはいけない。それを造形や色で視覚化し、美しさを創出する。それがヤマハをヤマハたらしめるデザインなのだと思う。
それを最も色濃く反映したのが初代「VMAX 1200」だ、というのがヤマハの見解です。ちなみに日本では逆輸入車として楽しまれていた「VMAX 1200」ですが、1990年のいわゆる750cc規制解禁とともに「VMAX 1200」日本仕様が発売されておりまして、その認可を受けた最初のモデルとしても知られています。コレ、豆知識。
VMAXの2代目は2008年に登場!
排ガス規制の影響を受けて2007年に生産が終了された「VMAX 1200」ですが、その翌年となる2008年、無事にモデルチェンジを果たして登場しました!それが2代目となる「VMAX」。
初代「VMAX 1200」は北米のみならず、ヨーロッパ、そしてもちろん日本でも多くのファンを獲得していました。そしてカテゴリーを超えるエポックなモデルとして、20数年にわたり独自の世界観を提唱。生産最終年となった2007年末までに、生産累計も約10万台となっていました。
そうした背景のなかで、2008年6月に北米向けモデルとして発表されたのが、この2代目「VMAX」。前モデルが気付き上げた伝統とアイデンティティを受け継ぎ、最新の電子制御技術「G.E.N.I.C.H.」に基づく各装備を投入。ライダーの感性に対するマシンの呼応を高い次元で達成しつつ、エキサイティングかつスタイリッシュな新しい「VMAX」ワールドを提唱するモデルとして開発されたのであります。そして翌2009年4月、2代目「VMAX」は排ガス規制・騒音規制対策を施されて日本にも投入されました。
余談ですが、電子制御技術「G.E.N.I.C.H.」って何だって話ですが、コレはジェニックと読みまして、恐らくきっと、同社の天皇とあがめられた創業者である川上源一氏の”Ge-n-i-chi”をもじって無理やり名付けたものでしょうね。当時入れ始めた電子制御技術の枕詞として使われていました。
さて、新型「VMAX」ですが、エンジン・車体ともに完全新設計。総排気量1,679ccの水冷4ストロークDOHC・V型4気筒4バルブF.I.エンジンをアルミ製フレームに搭載していました。
まずは注目のエンジン。モデル名「VMAX」が示す通りのV型ですが、挟み角は65度に変更されています。また総排気量も1,200ccから1,700ccへと大幅アップ。その拡大した排気量を生かして、最高出力は200ps(147kw)へと大幅にパワーアップ!Vブーストシステムこそ採用されませんでしたが、怒涛のトルクと圧倒的な加速は「VMAX」そのもの。
この新エンジンでは、コンパクトな燃焼室を実現するためカムチェーンレイアウトに新方式を採用。カムチェーンの駆動は吸気側カムだけとされており、排気側カムは吸気側カムからギアを介して駆動していました。これによりマス集中とカム軸回りの小型化を達成。コンパクトな燃焼室を形成することに成功していました。
またアルミ鍛造ピストン、ジャーナル真円度向上に貢献するFSコンロッドなどを採用することで、高い信頼性を備えることにも成功しています。
また大容量エアクリーナーを採用。フロント左右にエアインテークを設けて新気導入と個性的な外観を両立させています。このインテーク部にはヤマハ独自の耐食性のある調合材を、職人の手作業で磨き上げたパーツを採用する、という念の入れようでした。
吸気ファンネル部には、ファンネル長の切り替により良好な吸気脈動を作り出すYCC-Iを採用。回転数に応じファンネル長をロング / ショートに切り替える仕組みです。切り替えは電子制御サーボモータ駆動で瞬時に行われ優れた加速性能に貢献しています。
当然のことながら、燃料供給系は環境性能とレスポンスに優れるF.I.が採用されていました。そしてスロットルバルブ制御はYCC-Tを採用。またF.I.の燃料噴射は、負圧をセンシングして気筒別に燃料噴射制御を織り込み優れたドライバビリティーを引き出していました。
エンジン関連では、その他にスリッパークラッチ、マグネシウム合金の採用(クラッチカバー、ACMカバー、ドライブ軸カバー)などが特徴としてあげられます。
エンジンだけでなく、車体回りも力が入っています。まず、新設計のオールアルミ製フレームを採用。メインフレームは重力鋳造のアルミ中空材、リアフレームはCFアルミダイキャストと押出材の溶接構造の構成。特にメインフレームはミリ単位で肉厚最適化を各部に施して、高次元な剛性バランスを引き出しています。
また軸間距離は旧モデルの1,590mmから1,700mmへと変更されており、剛性バランスに優れたアルミフレームとの相乗効果が、優れた直進安定性を引き出しています。「VMAX」の楽しまれ方を研究して、本モデルでは“ハンドリングのヤマハ”ではなく直進安定性に重きを置いたのでしょう。
ここまで力の入ったモデルですから、機能パーツにも手抜きはありません。まずはインナーチューブ径52mmという太っい正立式フロントフォークを採用。インナーチューブには酸化チタンコーティングを施すことで良好な作動性を実現しています。これは装飾面でも違いを生み出すのに役立ちます。アウターチューブは上下2パーツ構成。下側はアルミ鋳造、上側はアルミ切削加工を施し、性能と、ここでも高品質感を演出しています。リアはリンク式のモノクロスサスペンションを採用。
前後とも初期荷重、伸・圧減衰力調整可能なフルジャスタブル式です。
2016年にはVMAXの2代目は2008年に登場!
実に完成度の高い2代目「VMAX」ですが、そのためか以降、モデルチェンジを受けることなく、生産が続けられました。2016年には、ヤマハ創業60周年記念カラーの「VMAX」60th Anniversaryが設定され、3月1日より限定発売されました。
この「VMAX」60th Anniversaryでは、タンクとリアカウル天面にイエロー地にブラックの“スピードブロック”を配し、1970~80年代の欧米のレースを疾走したヤマハ車のスピリットを表現しました。また、マットブラック塗装をエアインテークやサイドカバーに、ハーフグロス塗装をエキゾーストパイプに施して、光沢感あるアルマイトパーツとの調和が上質な味わいを印象づけていました。
VMAXの2代目は2017年に生産終了……
そして当サイトでもご報告しましたが、残念ながら2代目「VMAX」は2017年に生産が終了されています。平成の時代に生れて、多くのファンを魅了した2代目「VMAX」……その復活は無いのでしょうか?
ぼんやり考えてみましたが……ヤマハはモデルラインアップの整理統合を合理的に進めている感じがします。特に大排気量では、一つのエンジン&車体から、雰囲気の異なる複数モデルを巧みに製造しています。そのうえ現在のエンジンラインアップを見ると、リッターを大きく越えるのは「FJR1300」が搭載する直4の1,300ccと、北米で販売している「STAR VENTURE」が搭載する空冷Vツインのみ……よほどアメリカの景気が良くならない限り、暫くは復活の見込みは無いような……
しかし!ヤマハ自身も「VMAX」には並々ならぬ思い入れがあるのは明白ですから、何か違った形で「VMAX」のような独自の世界観を味わわせてくれるモーターサイクルを登場させてくれることでしょう。期待していまっす!
ヤマハ「VMAX」2008年モデル のスペック
- 全長×全幅×全高:2,395×820×1,190mm
- ホイールベース:1,700mm
- シート高:775mm
- 車両重量:310kg
- エンジン種類 / 弁方式:水冷4ストロークV型4気筒 / DOHC4バルブ
- 総排気量:1,679cc
- 内径×行程:90.0×66.0mm
- 圧縮比:11.3
- 最高出力:111kW(151PS)/ 7,500rpm
- 最大トルク:148N・m(15.1kgf・m)/ 6,000rpm