川崎重工が、大型ハイブリッドドローン試験機の浮上試験に成功したと5/18に発表しました。昨今において、ドローンはよく耳にするもので珍しくもないのですが、「大型」「ハイブリッド」という点についてもう少し掘り下げてみましょう。
ミニバン2台分ほどの大きさで200kg積載可
カワサキによると
全長約7m x 全幅約5m x 全高約2mの大型ドローンで、200kg以上の貨物を搭載し、100km以上の航続距離がある「空飛ぶ軽トラック」の可能性を検証する試験機です。当社の高性能モーターサイクル「Ninja ZX-10R」 のエンジン3台で発電した電力で、8基のモーター・プロペラを駆動しています。
とのことで、おおよそミニバン2台分ほどの大きさのものが、少なくとも200kgを積載して、少なくとも100kmは飛べるもののようです。200kgといえば大人三人、100サイズの宅配便が20個、100kmといえば直線距離での東京ー沼津、大阪ー鈴鹿といったところですね。
エンジンが発電を担うシリーズ式ハイブリッド搭載
ハイブリッドとは複数の動力システムを複合させたものを指すことはご存知であろうかと思います。現在発売されているクルマでは、パラレル / シリーズ / シリーズパラレルといった3種類のハイブリッド方式が主流で、いずれもモーターとエンジンそれぞれの特性のいいとこどりや、回生ブレーキによる燃費向上を狙ったものとなっています。
このドローンでは、飛行そのものにはモーターを常用し、エンジンはそのための発電専用となっているシリーズ方式を採用していますが、その狙いはクルマとは少々異なるようです。
ドローンを運用する上で、長距離長時間大出力に対応できる大容量のバッテリーを搭載してしまうと、重量がかさむとともに、飛行の都度長時間の充電やバッテリー交換が必要になります。
そこで短時間のガソリン補給で動力のもとが用意できたり、必要に応じて飛びながら充電したり、またバッテリーのみで容量を稼ぐ場合よりも、システム全体の重量を抑えることができるという点でのハイブリッドの採用なのでしょう。
じゃあ、ZX-10Rのエンジン3基がけ609PSそのままのエンジンパワーで飛べばもっと軽くできるのでは?という疑問も浮かんくるのですが・・・・・・
複数のプロペラを持つマルチコプター方式での飛行には、複雑な姿勢制御や突風をはじめとした外乱への対応が必要になります。そうなると超絶レスポンスを誇るZX-10Rのエンジンとはいえ、低回転域での効率の悪さや回転域次第でレスポンスが一定にならない等といった宿命的な問題のある内燃機関より、一切のアナログな機構と制御を介さず定量的かつ瞬時に出力をコントロールできるモーターのほうが、制御の上でより有効といえるのです。
夢は膨らむが法整備の問題も
開発の動機として、「従来のヘリコプターでは経済的に困難な近・中距離の中量物資輸送で、リーズナブルに利用できる空の物資輸送手段として、ヘリコプターと小型ドローンとの隙間を埋める位置付けに」とされています。
こういった200kgものペイロードのある自立航行ドローンが実用化されたらどんな未来を思い描けるでしょうか?
スマホアプリで呼べばブーンと飛んできて渋滞知らずの最短距離を移動できたり、観光地での遊覧飛行のコストがぐっと下がって身近なものになったり・・・・・・と夢はどんどん膨らみます。
とはいえ、日進月歩している技術的な問題よりも、事故時の責任の所在や飛行空域や離着陸場所といった法整備や環境整備のほうが全く追いついていないので、実用化されても当面は集積拠点と配送拠点間の荷物のピストン輸送や、人を乗せるにしてもタクシーよりはバスに近い利用方法といったものが主になり、まさに空飛ぶ軽トラとして都会よりは過疎地でのほうが早く普及して重宝されることでしょう。
川崎重工業株式会社