7月25日木曜日から28日日曜日、今年も鈴鹿8時間耐久レースが開催されました。ホンダ、ヤマハ、カワサキがワークスチームを持ち込み、メーカー同士の争いが勃発!さらに、EWCの年間チャンピオンを決めるレースでもあるため、サーキットのあちこちで熾烈なバトルが繰り広げられました。
鈴鹿の魔物が牙をむいた
「鈴鹿の魔物が牙をむいた」
大袈裟かもしれませんが、今年の鈴鹿8耐はまさにこの表現が当てはまると思います。
7月28日(日)、第42回2019鈴鹿8時間耐久レースの決勝が開催され、気温30℃、路面温度47℃の過酷な状況下で行われました。今年は、5連覇を狙う「ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム」、2014年以来の優勝を目指すホンダワークスチームである「レッドブルホンダ」、18年ぶりのカワサキワークスチームと「カワサキ・レーシング・チーム・スズカ8H」、この3大ワークスチームが激突。
また、最強のプライベートチーム・ヨシムラスズキ・モチュールレーシングもライダーに元SBKチャンピオンや全日本チャンピオンを揃え、ワークスチームに立ち向かいました。
鈴鹿8耐は昨年からEWC(Endurance World Championship’s|世界耐久選手権)の最終戦となり、年間タイトルが決定する重要なレースになるためEWC参戦レギュラーチームが鈴鹿8耐にかける思いは凄まじく、メーカーワークスにわって全力で戦いを挑んでいきます。
これほど特別なレースだけに、レベルが最も高い耐久レースとされ、サーキットのいたるところで抜きつ抜かれつのデッドヒートが行われことから「スプリント耐久レース」とも呼ばれて、毎年ドラマチックなレースを展開してくれます。
そして今年は、鈴鹿8耐にはびこるとされる”魔物”が牙をむけ、トップを争いをするチームがつぎつぎとトラブルに見舞われ、大荒れのレース展開に!
レース序盤から3大ワークスチームがトップグループを形成
予選では1位ヤマハ、2位カワサキ、3位ホンダのワークスチームが並び、11時30分にスタートが切られました。
レース序盤まで、F.C.C. TSR・ホンダ・フランス、カワサキ・レーシング・チーム・スズカ8H、ヤマハ・ファクトリー・レーシング・チーム、ヨシムラ・スズキ・モチュールレーシング、レッドブル・ホンダの5チームがトップグループを形成。
時間が経つにつれトップグループから離脱するチームが現れるも、開始6時間経過してもわずか6秒の間にワークス3チームがひしめき合いスプリントレースさながらのレース展開が繰り広げられていました。
残り2時間でも抜きつ抜かれつのデッドヒート
残り2時間、各チームピットインを行いヤマハは中須賀選手、ホンダは高橋選手、カワサキはハスラム選手へとライダー交代を行います。
このとき、1位カワサキ、2位ホンダ、3位ヤマハの純でしたが、3チームの間は15秒とごくわずか。一度のミスで順位が入れ替わるような差15秒ときっこう。
そして陽が沈み始め、残り1時間になり高橋選手がハスラム選手を抜き、ホンダが1位へ躍り出ます。
雨が降る中でヤマハのローズ選手が猛チャージ
残り53分でカワサキは最後のピットインをおこない、レイ選手へ交代。高橋選手もピットインし燃料補給とタイヤ交換を行って、こちらは高橋選手がそのまま続投。ヤマハも同時にピットインし、こちらはローズ選手へ交代しました。
ここで、レイ選手が2分6秒台に入れるファステストラップをたたき出し、その後も202週目に6秒台を連発して高橋選手を猛追撃し、ついにレイ選手がトップになります。
残り26分になりスプーンカーブ付近で雨が降り出し、ラップタイムが落ちていきますが、そんな中でローズ選手が猛チャージし、210週目には高橋選手を抜いて2位となり、さらにトップのレイ選手へ追いつこうとタイムを縮めていきました。
ラスト5分!EWCチャンピオン確実のスズキに悲劇!夜・雨・オイルの最悪コンディション
EWCレギュラー参戦チームでランキング2位のスズキ・エンデューロ・レーシング・チームは、9位を走行し、このまま走り切れば年間タイトル獲得のはずでした。
しかし、ここで鈴鹿の魔物がスズキ・エンデューロ・レーシング・チームに牙をむきます。
残り5分でバイクから白煙が立ち上りエンジンブロー。しかも、そのままオイルをまき散らしながらコース走行してしまったせいで、コースのあちらこちらにオイルが浮いた状態でした。
さらに、雨と夜間の走行だったため、状況としては最悪のコンディションでした。
それでもトップを走行していたレイ選手は、残り5分を乗り切ればトップでチェッカーを受けれましたが、2分を残してレイ選手はS字コーナーでオイルにのってしまいタイヤを滑らせで転倒。
これを見たマーシャルは即座に赤旗を提示し中断。
チェッカーフラッグが降られないままレースは終了していまいました。
優勝はヤマハか?それともカワサキか?
レースでは赤旗中断後、5分以内にピットレーンへ戻らなければならないという規定があったため、当初はピットレーンに戻れたヤマハが優勝、カワサキは完走しきれずリタイア扱いとなってしまいます。
また、EWC年間タイトルは12位でチェッカーを受けたチーム・SRC・カワサキ・フランスが獲得することになりました。
表彰式でも表彰台の一番上にヤマハのワークスライダー3人が上がり、優勝トロフィーが高々と3人で持ち上げ、盛大にシャンパンファイト!これで今年の8耐は幕が下ろされるかのように思えました。
しかし、この結果にカワサキ陣営はレースディレクションに抗議。
実は、5分以内にピットレーンに戻らなければならないというのはEWCの主催者であるFIM( 国際モーターサイクリズム連盟)の見方でしたが、レギュレーションには
赤旗中断した場合、赤旗が出る前のラップの順位が適用されると書かれているというのがカワサキの言い分。
レース終了から約2時間30分経った21時50分、レースディレクションはワークス3チームを集めて記者会見を開き、カワサキの抗議内容を受け入れて赤旗が出る前のラップの順位を結果とみなし、カワサキの暫定優勝とすることを発表し、カワサキは26年ぶりの鈴鹿8耐優勝となりました。
第42回2019鈴鹿8時間耐久レース結果
順位 | No, | チーム | マシン | ライダー | 周回数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 10 | Kawasaki Racing Team Suzuka 8H | カワサキ・ZX-10RR | L.ハスラム T.ラツカトリィオグル J.レイ |
216 |
2 | 21 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | ヤマハ・YZR-R1 | 中須賀克行 A.ローズ M.ファン・デル・マーク |
216 |
3 | 33 | Rad Bull Honda | ホンダ・CBR1000RR SP2 | 高橋功 清成龍一 S.ブラドル |
216 |
4 | 1 | F.C.C TSR Honda France | ホンダ・CBR1000RR SP2 | J.フック M.フォレイ M.ディ・メンオ |
215 |
5 | 12 | YOSHIMURA SUZUKI MOTUL RACING | スズキ・GSX-R1000 | S.ギュントーリ 加賀山就臣 渡辺一樹 |
215 |
6 | 7 | YART-YAMAHA | ヤマハ・YZF-R1 | B.パークス M.フリッツ N.カネパ |
214 |
7 | 634 | MuSASHi RT HARC-PRO. Honda | ホンダ・CBR1000RR SP2 | X.フォレス D.エガーター 水野涼 |
213 |
8 | 95 | S-PULSE DREAM RACING・IAI | スズキ・GSX-R1000 | 生形秀之 T.ブライドウェル B.レイ |
211 |
9 | 19 | KYB MORIWAKI RACING | ホンダ・CBR1000RR SP2 | 高橋裕紀 小山知良 T.ハーフォス |
211 |
10 | 72 | Honda Dream RT 桜井ホンダ | ホンダ・CBR1000RR SP2 | 濱原颯道 伊藤真一 作本輝介 |
211 |
素晴らしいレースをありがとう!
これほど接近戦でドラマチックな結末をだれもが予想できなかったでしょう。毎年、見ている我々を楽しめさせてくれる鈴鹿8耐だが、今年も記憶に残るレースでした。
最後は大波乱がおき、結果に不満を残す方もおられるかもしれません。しかし、これほどアツいレースがみれて心がふるえた方もおられるでしょう。
今年も鈴鹿8耐レースに参加した全ライダーに「素晴らしいレースをありがとう!」といいたいほど、心に残るレースでした。
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