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日本ではあまり知名度は高くないが、スクーター界でランブレッタと言えばベスパと双璧を成すほどメジャーな存在である。
モッズたちにも好まれ、映画『さらば青春の光』では主人公”ジミー”の愛車としても活躍していた「LAMBRETTA(ランブレッタ)」。ここではそんなスクーター界の重鎮であるランブレッタについて紹介していこう。
ランブレッタは、実はイタリア製のスクーター!
ランブレッタとは、1947年からイタリアにあるイノチェンティ社が製造していたスクーターで、イタリア国内ではベスパのライバル的存在として知られていた。イノチェンティ社は元々はスチールパイプを製造する会社だったが、第二次世界大戦中に工場が重爆撃により破壊されたことにより、事業を転換することとなる。
創業者であるフェルディナント・イノチェンティは新事業への転換に際し、手軽に自分で移動する手段が将来必要になると考え、アメリカが輸入した”クッシュマンスクーター”にインスパイアされ、スクーター事業へと乗り出すこととなる。そこで作られたのがランブレッタである。コンセプトは以下の通り。
- 低価格
- 天候にも左右されない
- 誰にでも運転できる
発売当初はフレーム剥き出しの通称”ストリップ”と呼ばれていた
かくして、西欧諸国でのスクーター需要と相まって、ランブレッタはその存在を世界に広めて行くこととなる。発売された当初は剥き出しのパイプフレームとエンジンとタイヤで構成された、通称”ストリップ型”と呼ばれていたが、後にカバーを施され、ツートンカラーなどのお洒落なスクーターとして、ベスパと人気を二分する存在となっていく。
人気のある車種は”LIシリーズ”
1958年から製造され始めたLIシリーズにはライトがレッグシールド中央に固定されている1型、ライトをハンドル上に移設し、スマートなデザインでワイドスタイルと呼ばれる2型、2型のデザインをさらにスマートにし、スリムラインと呼ばれた3型の3シリーズが存在した。
いずれもフロントフェンダーがボディに固定されているというデザイン上の共通点もある。また、LIシリーズにはいずれも125cc、150ccの2タイプがあり、基本的にエンジンは1型のモノと同一である。シリーズ1〜3にはボディが同形でエンジンがパワーアップされているTV(ツーリスモベローチェ)も存在するが、エンブレムを見ない限り、判別するのは困難だ。
ちなみに「さらば青春の光」で主人公ジミーの愛車となったモデルはLI-3である。
小型車の台頭によりランブレッタはイノチェンティ社から離れることに
ランブレッタはフランスの”フェンウィックグループ”、ドイツの”NSU”、スペインの”セルベタ”、インドの”API”、台湾の”裕隆汽車”、ブラジルの”パスコ”、コロンビアの”アウテコ”、アルゼンチンの”サイアムブレッタ”、チリなどでもライセンス生産を始めることとなるが、1960年代後半に入ると小型車の台頭により、スクーターの需要は落ち込み、1971年にはランブレッタの製造を中止することとなる。
後に1972年にはミラノ工場とランブレッタの名の権利はインド政府に買収され、SIL(スクーターズ・インディア・リミテッド)から発売されることとなった。
トレンディドラマにも登場したランブレッタ!
かくしてベスパの最大のライバルでありながら、日本では需要が少なかったこともありマイナーな存在となったランブレッタ。メディアに登場する例も少なかったが、1989年にフジテレビで放映されたドラマ『愛しあってるかい!』に主演していた陣内孝則が作中でサイドパネルにユニオンジャックが描かれたLI-3に乗っていたと記憶している。筆者が知っている代表例はそれくらいである。
現代に復活したランブレッタ!
しかし、そんなランブレッタだが2011年、イタリアの”Motom Electronics Group”によって復活することとなった。イタリアで生産されたボディに台湾のSYM社製のエンジンを搭載しての登場だという。
ランブレッタの特徴であるスチールボディとパイプフレームも再現され、かなり旧車をイメージしたデザイン(LI1~2とSXシリーズに近い)をしており、マニア心をくすぐる作りとなっている。
ちょっと変わった現代のスクーターに乗りたいという方は勇気を出して手に入れてみるのも一興だろう。どうしても旧車が欲しいというマニアな方は、二桁万円後半から三桁万円前半を用意して、専門ショップに足繁く通うことをオススメしよう。