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エンジンの排気量と気筒数の関係は、原付バイクのような単気筒からスーパーカーに搭載されるV型12気筒まで、排気量の大きさに伴い気筒数は増えていくもの。
しかし、昔にさかのぼれば50ccや125ccの小排気量バイクにも多気筒エンジンが存在し、そこそこ排気量があるけど少ない気筒数だったり、排気量が大きさと気筒数は比例するとはいえません。同じ排気量でも気筒数の多さで何が違うのでしょうか。
排気量と気筒数の関係とは
一般的に我々が普段使いで乗る乗用車は3~6気筒のエンジンが搭載されるモデルが多く、フェラーリやランボルギーニなど趣味性の高いスーパーカーであれば8~12気筒、1,000馬力越えのブガッティにいたっては16気筒エンジンを搭載しています。
一般的に、排気量が大きくなるにつれ気筒数を増やす傾向にありますが、メーカーそれぞれ排気量に対して採用する気筒数は異なります。それでも共通意見として多いのが、一気筒あたり400~600ccというのが効率の良いエンジンとされています。
バイクであれば、原付一種/二種とも単気筒ですが、126cc以上になればモデルやカテゴリーによって異なり、最近の傾向では250ccで単気筒か2気筒、400ccで2気筒、401cc~750ccで2~4気筒、751cc以上で4気筒というのが多く、競技用モトクロスや海外メーカーの大排気量車両では、これらの気筒数から外れる場合もあります。
多気筒化することで乗り心地アップ
ほぼすべてのクルマに採用される4サイクルエンジンは、吸気、圧縮、爆破、排気の行程をクランクシャフトが2回転する間に行うことは承知でしょう。
ひとつのシリンダーでは燃焼行程だけでトルクが発生するため、どうしてもトルク変動します。
そこで、シリンダーを増やせばクランク角の位相の違いによって、すべてのシリンダーが同時爆破するのでなく、複数のシリンダーが連鎖的に爆発することで、クランク回転時にトルク変動を極力なくし、エンジンからの振動を減少させることが可能です。
エンジンが1回転するときに何回爆発するのか?当然シリンダー数が増えるほど回数が多くなり、1回転するまで多く爆発すれば滑らかにエンジンが回転を続けてくれます。
2017年まで生産されたトヨタ2代目センチュリー(GZG5型)は、多くのオーナーが運転手を雇い、後部座席に乗って移動していますが、不快な振動をなくしエンジンの静粛性を高めるため、5リッター12気筒エンジンを採用していました。
レーシングエンジンにおいて多気筒化が正義
レーシングエンジンになれば、レギュレーションで少ない排気量にしなければならないとき、多気筒化することで搭載してパワーを稼いでいました。(現在は排気量と気筒数もレギュレーションで決められている場合がほとんどです)
気筒数が多くなるとシリンダーのボアとストロークが小さくなり、ピストンが動く上死点から下死点までの間が短くなるほど高回転になります。
さらに、多気筒になればシリンダーが爆発して他のシリンダーの上下運動するアシストして次のシリンダー内が爆発するため、相乗効果により爆発の回数が増えるほど回転数は速くなり、高回転域で強いパワーを発揮できます。
1960年代にホンダは、250cc並列6気筒エンジンを搭載したRC166や125cc並列5気筒エンジンのRC149を登場させ、GR250クラスとGP125クラスともにタイトルを獲得し、小排気量エンジンでも多気筒化することで速さを証明してきました。
日本メーカーが活躍する以前の1955~1957年は、モトグッチが500ccV型8気筒エンジンを搭載したGPレーサー・V8で参戦もしており、二輪車メーカーは今では考えられない多気筒エンジンを搭載したバイクを作り出していました。
多気筒エンジンからダウンサイジングターボの時代へ
エンジンを多気筒化することで乗り心地の良さとハイパワー化を実現できますが、生産する際にコストがかかり、燃費もよくありません。
近年は小さなエンジンでも十分なパワーを得るためにダウンサイジングターボがエンジン開発の主流となり、走行状況に合わせて4気筒のうち2気筒を休止させてる「アクティブシリンダーマネジメント」がフォルクスワーゲン車に採用されています。
排ガス規制が年々厳しくなっている中、エンジンは多気筒化を開発するのは規制クリアさせることが難しくなり、静粛性や低燃費を可能とするハイブリッドやプラグインハイブリッドの登場によりスポーツカーであっても多気筒エンジンは時代遅れとなりつつあります。
スーパーカーにもハイブリッドやプラグインハイブリッド、さらにはEV化が進んでいるため、多気筒エンジンは過去の遺産になっていくかもしれません。