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市井のビルダーによるカスタム車だけではなく、メーカー純正カスタムといった体のものまでもあり、ここ数年バイク業界のトレンドとなっているネオクラシックモデル。その中にちらほらとスクランブラーという名前を見かけます。
その名がつくと、メーカー違い・ビルダー違いでも、不思議とどこかに繋がりを見出すことができませんか?それもそのはず。実はスクランブラーという名前には深~い意味合いと歴史があるんです。
スクランブルってなんぞ?
スクランブラー(Scrambler)はスクランブルする者(Scramble-er)であることは間違いなく、バイクの場合でいえばスクランブル・レースに使用される車両を指しますが、そもそもスクランブルとは何ぞや?
よく聞くのは戦闘機のスクランブル発進、スクランブル・エッグ、スクランブル放送、スクランブル交差点といったところですね。
軽くググってみたところ
Scramble:(敏捷(びんしょう)に)はって進む、はい回る、(きびきびと)はい登る、(…を)奪い合う、われがちに取り合う、争ってする、(敵機迎撃のため)緊急発進する、スクランブルをかける
-Webio英和辞書 Scramble
とあり、はい回るといった語源から「引っ掻き回す」といった意味もあるようです。
これらから
- スクランブル発進(待機していたパイロット・機体が我がちに争って発進・上昇していく)
- スクランブルエッグ(引っ掻き回す)
- スクランブル放送(放送電波を暗号化「信号を引っ掻き回す」する)
- スクランブル交差点(思い思いの方向に入り混じる)
といったところにはすんなりと合点がいくかと思います。
バイクレースの場合でいえば、諸説見つけることはできたのですが・・・・・・
- コースのアップダウンを敏捷にはい回る、はい登る様
- 横一列での一斉スタートからの上位を我がちに争う様
- 一斉スタートからのホールショット(第一コーナー一番乗り)を我がちに奪い合う様
と、いずれも情景を思い浮かべながら納得できるだけに甲乙つけがたいところ。とにかくスクランブル・レースと関係がある!ということだけ覚えておきましょう。
モトクロスの元祖スクランブル・レース
そうしたスクランブル・レースは、第二次大戦終結後の1950年代や1960年代に、まだ本格的な舗装サーキットがほとんど存在しなかったこともあって、各地で未舗装のコースを設定して行われてました。今でいうモトクロスやエンデューロの御先祖というべきレースです。
当時は本格的なオフロード車も存在していなかったため、普段そこら(もっとも当時は公道にも未舗装路が多かった)を走っているようなオンロード車を、より未舗装路での走行が有利となるよう改造した車両がスクランブラーと呼ばれるようになりました。
そこから徐々に、よりオフロード走行に向いた専用のバイクが作られるようになり、その後の各ジャンルのオフロード車に繋がっています。
引用した動画は1964年のもので、クラス分け等もあったのかもしれませんが、この時点で既にスクランブラーというよりも、ビンテージモトクロッサーといったほうがしっくりくる小型軽量のものばかりになっていますね。
スクランブラーの特徴は?
そんなスクランブラーはどうやってオンロード車を未舗装路へ適応させていったのでしょうか。ここではカスタムの特徴を見ていきます。
マフラー
オンロード車では車体腹下に取りまわすところを、地上最低高を稼ぎエキパイの破損を防ぐために、アップタイプマフラーが装着されます。
最も特徴的な部分でもありますので、現代において未舗装路を走行するつもりはなくとも、採用されることの多いディテールです。
ハンドル
本格オフローダーと同様に、外乱に対して正確で細かいコントロールがし易い幅広で、かつスタンディングポジションを取りやすい高さのハンドルが選ばれます。
アンダーガード
フレームやエンジン底面が路面と直接ヒットしないよう、アンダーガードが装着される場合があります。できればつけておきたい装備です。
タイヤ
オフロード向きのブロックパターンのタイヤを装着します。とはいえ、本格オフロードでのノビータイヤ(イボつきタイヤ)ほどではないにせよ、オフロードを志向するほどにオンロードでのグリップや使い勝手は悪くなるため、最近のメーカー製スクランブラーではブロックが浅く広い「雰囲気オフロード」のものや、割り切って完全にオンロードのタイヤを装備する例が多いようです。
軽量化
空力的なものや装飾的なもの、大型のキャリア等のユーティリティは通常装着されないようです。現行のメーカーラインアップを見ても、スッキリしたスタイリングが共通していますよね。
答え:オンロードベースのオフ車
時代の流れとともに、他ジャンルとの交雑や解釈の違いで様々なものが存在しますが、基本的にスクランブラーといった場合には、オンロード車をベースとしてオフロード走行のためのカスタムを施したものという理解でOKです。
ただし、最近のスクランブラーを名乗る多くのものは、デザイン的な様式を踏襲してレトロな雰囲気を狙ったオンロード車ですので、壊してしまわないように楽しんで走れるのは、よく整備されたフラットなダートまで・・・・・・と考えたほうが良いでしょう。