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伝統のボクサーツインを搭載した、名実ともにBMWの看板といえるRシリーズ。中でも「S」のつくグレードは、そのシリーズ中最もスポーティで、走ってよし・曲がってよし・止まってよしの性能面と、ボクサーツインのテイスティな味わい深さを非常に上手くバランスさせています。BMWらしさを体現させているバイクといっても過言ではありません。
とはいえ、4気筒スーパースポーツ勢のハイスペック化が著しく、最もスポーティなモデルであってもスポーツツアラー的な立ち位置に甘んじてしまうこともしばしばですが・・・・・・
そんなBMWのRシリーズにも、ガチのレーシングレプリカがあることをご存知でしょうか?それが「R1100Sボクサーカップレプリカ(以下R1100S-BCR)」です。
「レプリカ」というからには元ネタがある
近年では粗悪な模造品(フェイク=ニセモノ)も含めてレプリカと呼ぶようになったせいで、あまり言葉のイメージは良くないのですが、本来のレプリカ=(権利者の許諾の上での)複製品という意味ですので、レプリカと名乗る・呼ばれるバイクには必ず元ネタとなる「本物」があります。
元WGPレーサーも参戦したワンメイクレース「ボクサーカップ」
R1100S-BCRの名にもついているボクサーカップは、欧州で発祥し、その全土で行われたR1100Sを使ったワンメイクレース(全参加者が同じマシンを使うレース)で、motoGPの前身であるロードレース世界選手権(WGP)や世界耐久選手権といった大きなレースの前座として2001年から2004年まで開催されていました。
前座レースとはいえ、ランディ・マモラやルカ・カダローラといった元WGPの名選手もエントリーして同条件のマシンで走るということもあり、人気に。日本でも開催されたことがあります。
そんなボクサーカップレース仕様のR1100Sを、公道用にアレンジして発売されたのがR1100S-BCRだったのです。
本格的なレーサーといえる作り込みのR1100S-BCR
R1100Sのベースモデルは1998年後半から発売されていますが、2003年に初代のBCR、2004年に2代目のBCRが発売されています。
その違いをざっと挙げてみると・・・・・・
- ベースモデル:ABS装備 2003年BCR:ABSあり 2004年BCR:ABSなし
- ベースモデル:グリップヒーターあり BCR:グリップヒーターなし
- ベースモデル:標準オルタネーター+大型バッテリー BCR:小型オルタネーター+小型バッテリー
- BCR:前後ともBMW純正スポーツサス そのためセンタースタンドなし
- BCR:BCR専用のヘッドカバーの上からカーボンのヘッドカバー
- BCR:カーボンのアンダーカウル
- BCR:社外ステンレス製サイレンサー
- BCR:ワイドホイール(5.5J 標準車は5.0Jと5.5Jのものあり)
- BCR:ハイシート+シングルシートカバー
等々です。
パワートレーンに標準車との変更はないのですが、サーキット走行での高荷重への対応と、張りだしたボクサーツインでバンク角を稼ぐために装備されたスポーツサスでの車高アップと、サーキットを意識した作り込みがなされています。
シート高が860mmととんでもなく腰高なのもレースを前提としてのこと。あえてバランスを崩しやすい高重心とすることで倒しこみやすくしているんです。
ベース車のオプションや標準装備も使える
そういった出自のR1100S-BCRですが、ファクトリーレーサーをまんま象った一般的な「レーサーレプリカ」とは一線を画す部分があります。
母体となったR1100S標準車と共通で使えるものが多く、レーサーには不要として排除されたり設定されなかった装備を、ボルトオンで追加することができるのです。
今回画像引用しているイギリスのオークションに出品された2004年式の車両も、R1100S用の純正ステーを設置。レーサーレプリカでありながら、まったく違和感なくパニアケースを装着させることができて、ツアラーのような佇まいとなっています。
また、標準車のスイッチおよび配線も込みで一式流用して、全く後付け感なくすっきりとグリップヒーターも装備されています。
もっとも、安心してグリップヒーターを使用するには、オルタネーターとバッテリーもBCR用の小さなものから、標準車の容量の大きなものに交換する必要アリ。費用のことを考えると冷や汗が出てきますね(笑)。
RnineTベースBCR登場の可能性もアリ?
こうしてみると、R1100S-BCRはがっつりと走りを楽しみながらも、日常やツーリングでのユーティリティも必要に応じて確保できてしまう、真のマルチパーパスモデルといえそうです。
いったん途絶えたボクサーカップも2019年からRnineTレーサーをベースにしたマシンで再開されています。レースの人気次第で、再度ボクサーカップレプリカと銘打ったモデルも登場するかもしれません。
RnineTも多くの派生モデルやカスタムパーツのあるモデルだけに、どんな流用ネタが可能になるかは楽しみなところですね。