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バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

モビリティのあり方を大きく変える自動運転技術。すでに日産のプロパイロット2.0搭載車をはじめとして、高速道路上でのハンズフリードライブもすでに実現されていますし、一般に普及するところまで来ています。法規制上は、渋滞時の高速道路といった状況に限られるものの、ドライバーが走行時の状況をまったく気にする必要がないところまで解禁済み。もはや遠い未来の話ではなくなってきています。

 

その進化はクルマだけではありません。実はバイク業界でも自動運転化に取り組むメーカーが着々と増えています。中でもドイツメーカーの雄「BMW」、世界的な部品メーカー「ボッシュ」、そして我らが日本の「ヤマハ」の3社の取り組みは特筆に値するものばかり。バイクの未来がどのようになってくるか、その一端が垣間見えてきます。

 

無人走行を実現したBMW

バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

創業100年を迎えた2016年に転倒しない未来のコンセプトバイク「VISION NEXT 100」を公開したBMW。バイク側に自立的な制御を与えつつも、あくまで乗り手の意図を反映する”ライディングプレジャー”が訴求されていたことは記憶に新しいところです。

 

バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

そんなBMWが2019年、アメリカ・ラスベガスで驚くべきデモ走行を披露しました。場所は、最新の電子機器が集まる一大見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)。同社の誇るアドベンチャーバイクの代表格「R1200GS」がなんとまったくの無人で走行したのです。

 

バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

その秘密はアンテナと思しきものが設置されたトップケースやサイドケースにあります。このように各種電子制御システムがギッシリ詰め込まれており、発進を除く全ての動作を無人で行うことが可能です。誰も乗っていないバイクが自動で加減速したりハンドルを切るだけでなく、停車時には自動的にスタンドが出るところまで実現されており、ほぼ完全な自動運転といえるでしょう。

もしこのシステムが普及したら、ネットでバイクレンタルを申し込んで、自宅前でショップから走ってきたバイクを受け取る……なんてこともできそうです。めちゃくちゃ増してそうな車重は気になりますが、夢が膨らみます。

 

レーダーでバイカーの死角を補うボッシュ

バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

一方ボッシュのアプローチは乗り手の安全性を高める、いわゆるドライバーズアシストに近いものです。同社がクルマ用に培ってきたAAC(アダプティブクルーズコントロール)や衝突予知警報、視覚検知といった先進技術をバイク用に最適化した「アドバンスド・ライダー・アシスタンス・システム」を開発しています。各種レーダーで車体が周囲の状況をモニタリングすることで、バイカーが危機を察知するよりも先にシステム側が警告を発し、回避を促します。いわば電子の目でバイカーの死角を補う形です。

 

すでに量産も決まっていますし、日本国内での公道試験も実施済み。KTMやドゥカティといった欧州メーカーを皮切りに市販化が進む予定です。バイクの緊急回避はクルマのそれよりも格段に難しいですし、技量に個人差がありますから、クルマ以上に普及が待たれます。

 

人を超え、寄り添うロボットを開発したヤマハ

ここまではドイツを代表するメーカーばかりでしたが、日本の取り組みもまた先進的です。特に注目したいのがヤマハ。サーキット走行限定とはいえ、バイクを自在に操るロボットを開発してしまいました。

 

バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

それが2015年に初公開されたMOTOBOT(モトボット)。ご覧の通りヤマハのフラッグシップスーパースポーツ「YZF-R1」に跨っているロボットが本体で、あたかも本物のバイカーかのようにクラッチやシフトを操作しながら、巧みなライディングを見せます。カーブだってお手の物。しかも最高速度は200km/h超えと、きちんとYZF-R1のポテンシャルを発揮できています。MotoGPのレジェンドライダー、バレンティーノ・ロッシを超えるべく生み出されただけはありますね。もっとも、タイムアタック勝負は負けてしまいましたが……。

バイクがいかに感覚的な乗り物かを象徴しているかのようです。

 

バイクの自動運転化で”操る楽しさ”は失われるのか?最新の取り組みから見えたこと

さらに忘れていけないのが、2017年の東京モーターショーで初お披露目されたMOTOROiD(モトロイド)。MOTOBOTとは異なり、こちらはバイカーに寄り添うパートナーロボットとして開発されています。手招きをすれば近づき、単に手をかざせば停止、そして手を払うと離れていくのが最大の特長です。搭載されたAIのおかげで、オーナーの顔を認識することもでき、他者の操作を受け付けないなんて機能まであります。よくしつけられたペットかのようで愛嬌がありますし、人間とバイクのエモーショナルな距離がグッと近づきます

 

ライディングの楽しさを保った自動運転に期待

クルマ業界で推し進められている自動ブレーキやオートクルーズコントロールのような安全性特化型の自動運転に対して、バイク業界ではそのような安全面だけではなく、人間との共生を押し進めるような「自動運転」も登場しています。

根本的にバイクはクルマよりも趣味性も事故のリスクも高いですから、どちらをも補ってくれるのはうれしいですし、むしろバイクの安全性が増すのであればユーザー増加にも大いに効果アリです。高額化の一途を辿らないかという懸念もあるものの、バイクが単体で動ければ、デリバリーだけでなく、前述したユーザーにとっての利便性も向上しますし。

 

とはいえ、やっぱりバイクは操る楽しさあってのもの。ただ運転を肩代わりするようなシステムよりは、バイカーの理想とするライディングをサポートするシステムとなってくれるのが一番だと筆者は考えます。必要に応じて、制御の介入具合を切り替えられるようになってほしいところです。

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