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世界で一番企業価値の高い企業ってどこだと思う?と聞かれて、皆さんが真っ先に思い浮かべるメーカーはおそらくHONDAでしょう。筆者ももちろんその一人です。
しかし、バジャージ本社の発表によると、彼らは世界で最も価値のある2輪メーカーになったというそうです。これは一体どういうことなのか、少し掘り下げてみました。
たしかに…2輪だけなら世界イチ
Bajaj Auto(以下、バジャージ)は1月1日(金)のNSE(インド国立証券取引所)にて3,749ルピーの取引を経て、時価総額が1,00,670.76ルピー、USドルにして約136億ドル、日本円で約1兆4千億円に到達しました。
75年間の操業と合わせて記念して、バジャージの経営ディレクターであるラジヴ・バジャージは次のように述べています。
同社の二輪車カテゴリーへの集中と、差別化戦略への揺るぎないコミット、そしてグローバルな野心が組み合わさったTotal Productive Management(全員参加の生産保全)の実践により、バジャジは今日、世界で最も価値のある2輪メーカーとなっています。
“The company’s sharp focus on the motorcycles category and its unwavering commitment to strategies of differentiation as well as the practice of TPM combined with global ambitions have today made Bajaj the most valuable two-wheeler company across the globe.” Bajaj Auto Managing Director Rajiv Bajaj said.
ホンダの2020年の時価総額はUDドルにして$137.365億ドル、日本円で約15兆円とバジャージのおよそ10倍ですが、それは自動車やその他産業を含めての企業価値です。
純粋に2輪しか作っていないメーカーに限定してしまえば、なるほど確かにバジャージは世界で最も企業価値の高い2輪メーカーと言えるでしょう。
バジャージってなんでそんなにデカいの?
さて、トリックが分かったところでなぜバジャージはこんなにも大きな会社になったのでしょう。インドだけでの商売ではここまで大きくなるとは思えない、というのがみなさんの先入観としてあるのではないでしょうか。
せっかくですので、彼らの秘訣を調べてみました。
KTM AGの大株主
バジャージはKTM AGの株をなんと47.97%も保持していたのです。KTM AGはKTMだけでなく、近年成長株のハスクバーナやガスガスなどの子会社を束ねています。
経緯としては、2007年にバジャージがKTMの株を14.5%取得し、インド国内や近隣国での供給の協力協定を締結、出資率が20%に至りました。
2011年には株式の39.03%を取得し、KTM AGの筆頭株主になります。DUKE125/200などはこの時点からインドでの生産になるなど、協力関係が読み取れます。
今では先述の通り約48%と、KTM AGと株を半分こするような形になり、KTM AGに主導権を残しつつ唯一発言権を持つ株主的な存在になっています。
トライアンフとの生産提携
2020年1月からバジャージはトライアンフと提携を結んでいます。内容としては、300~600ccモデルの生産や新型生産の協力というもので資本関係の伴わない内容になっていますが、バジャージの2輪メーカーとしての力量が増していることを実感できる一件でしょう。
偶然かもしれませんが、タタ・モーターがジャガー・ランドローバーを買収したことといい、こうしてインド系企業が勢力を増してイギリス系企業と並ぶもしくは追い抜くのを見ると、少し歴史への皮肉を感じずにはいられません。
日本ではバジャージ製バイクそのものを見ないため印象は薄いですが、こうして覗いてみるとインドの自動車産業が近年急成長しているのが実感できますね。
2014年の話になりますが、フォーブズの選ぶ世界革新的企業トップ100に唯一ランクインした自動車メーカーであることを加味すると、ゆくゆくは日本メーカーとタイマンを張るに足る実力になるのではないかと予想されます。