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バイクマンガは何も特別なものではなく「バイク・オートバイ」という確立されたジャンルで、代表的なマンガ雑誌にはどこでも連載があったほどだった。
「だった」とはっきり言い切ってしまったが、実は最近はマンガ雑誌に全くウトいので、現在バイクマンガがどのような状況に置かれているのかは把握していないが、バイクを題材としたマンガの話題も少なく、あったとしても昔のような盛り上がりはないだろうと、話をこのまま進めてしまいます。
代表的なバイクマンガは
『ワイルドセブン』は数年前に実写映画化され、往年のファンを喜ばせた。”七人の侍”のようなノリで、色々な武器を搭載したバイクで”悪”を打ち倒す。7台のバイクもそれぞれタイプの違うバイクで、子供時代に感化されバイク乗りになったという人も多い。
『750ライダー』週刊チャンピオンに連載されていた高校生がホンダの「CB750」に乗っているマンガ。読んでいたハズだが、それくらいの印象しかない。不思議なことに。
80年代のバイクブームの頃には
『街道レーサーGO(青い流れ星)』池沢さとし先生の大ヒット作。当時発売されたヤマハ「RZ350」を愛車に、大型バイクよりも速く走る。そんな漫画だった。うろ覚えで申し訳ないが、ツーサイクルレーサーレプリカの先駆け的存在のRZは「ナナハンキラー」と呼ばれ、なぜか馬力を「リッターに直すと」というのがバイク愛好家の中で流行り、あのナナハンは何馬力だが、リッターに直すと俺の中型のがすげーんだぜ。などと意味があるのかないのか今となっては謎な会話をよくしていた。
その後「パワーウェイトレシオ」なんてカタログ数値を「ははーん、なるほど」などとわかったふりをするのも流行ったのはこの漫画の影響だった。
『バリバリ伝説』これは流行った。大型免許取得が試験場でしかできず、その試験は「イチャモン」以外のナニモノでもない、難しいというよりも難解なシロモノで、国内で売れる大型バイクは750ccまでの時代。そのナナハンで峠のチャンピオンになり、その後レーサーとして世界チャンピオンに上りつめる、なかなかの内容だった。筆者個人的には前半の峠時代が一番好き。
その他にも『あいつとララバイ』や『ふたり鷹』などもなかなか”アツい”バイクマンガだったが、きっと年代によって「あの漫画のほうがよかったぞ」というご意見もあるはずで、そのくらいバイクマンガが全盛期だった。
究極のバイクマンガは?
そんな中でバイク乗りに「貴方にとってのバイクマンガは?」とアンケートを取れば必ず1位になると確信できるのが『キリン』だ。
リアルな描写と、コアなバイク乗りだからこその心理描写。擬音も「ビューン」や「フォーン」なんて音ではなく、「シュゴオッ」「ドッ」など、すべてに共感してしまうほどの完成度。
こればかりは「読めば分かる」としか言いようがないのだが、4巻までのポルシェとカタナの対決。18巻までの最新バイクでいかに速く走るか、GTRとの対決。根底には「何故バイクなのか」を突き詰めて行く。バイク漫画界の純文学作品と言ってもいいだろう。
現在も連載は続いているが昔のシリーズとはだいぶ違う世界観になっている。実写映画化もされたが、ともかくバイク乗りのバイブルであること間違いなし。
「”キリン”を読んだらその日はバイクに乗るな」なんて言われるほどアツくさせてくれる。
キリンとは対極のもう一つの究極
知る人ぞ知る、コアなファンの多い東陽片岡先生をご存じだろうか。
昭和なテイスト満載なマンガを得意とし、お下品な内容でファンからは「畳職人」と呼ばれるほど。細かな畳の描写にこだわり、風俗とバイクを愛する漫画家である。
その東陽先生が描いた『うすバカ二輪伝』という伝説の漫画がある。これをキリンと対極な究極バイク漫画として強く推薦したい。表紙を開くといきなり見開きで畳の上に置かれたスズキ「GT750」というシュールさ。
バイク好きだからこそ描ける無茶苦茶な話しばかりだが、本作中の一編に「GBナナハンのおっさん」というのがあるのだが、これなど間違いなしの傑作だ。
是非是非、キリンとは対極の東陽ワールドも覗いてみてほしい。