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物流のラストワンマイルを支えるプロフェッショナルな道具として、また庶民の足として、日本の高度成長を支え続けたスーパーカブ。しかしながら近年では、スクータータイプのアクセルとブレーキのみの操作の手軽さに押されて、入れ替わりが進んでいるといった面もあります。
そこでふと疑問が湧きます。クラッチレバーがないのはスクーターみたいなのに、なぜかカブは足元のペダルでギアチェンジが可能。これってMT?それともAT?どちらなんでしょう。今回はそのあたりをざっくりと掘り下げてみます。
スーパーカブは自動クラッチつきマニュアルミッション
スーパーカブは「ロータリー式」とか「シーソー式」と呼ばれるカブを象徴する独特のシフトパターンとペダルが採用されています。
これは
- ストップ&ゴーが多い配達のような局面で停車する際に、一般的なリターン式ではいちいちニュートラルに戻すのが面倒
- 靴の甲を痛めない、またサンダル履きでも運転に差し支えないように
といったことへの対策に考案されたものです。
さらにクラッチレバーもないため、変速操作時にクラッチ操作は不要で
- 前ペダルをつま先で踏みこんでギアアップ
- 後ろペダルを踵で踏みこんでギアダウン
とかなり直感的になっています。
実はコレ、カブに採用されている「自動遠心クラッチ」のおかげ。
- 始動時にクラッチをつなぐ
- シフトペダルを踏むとクラッチが切れる
- アクセルが開くとシームレスにクラッチを繋ぐ
なんて本来ならクラッチとクラッチレバーで行う操作を一つで担ってくれるので、クラッチ操作不要ながらもスムーズなギアチェンジが可能になっています。技術的側面からいえば「自動遠心クラッチ付ロータリー式マニュアルトランスミッション」というのが正しいかもしれませんね。
じゃあMTの免許が必要?
そうなると「AT限定免許では運転できないの?」という新たな疑問が湧いてきます。まず筆記だけで取得できたり、四輪免許のオマケでついてくる原付免許の場合は気にする必要がありません。そもそもAT / MTの区別がないからです。
しかし、小型限定も含む普通二輪免許にはAT限定という区分が新設されています。限定解除しないままにMT車に乗ってしまうと免許条件違反となってしまうのです!
前項ではカブはマニュアルトランスミッションと書きました。ということは「スーパーカブC125」はもちろんのこと「クロスカブ(110cc)」や「CT125(125cc)」にAT限定の小型限定普通二輪免許で乗ってはいけないのでしょうか?
ご安心を!AT限定免許でも問題なく乗れます
結論からいえば、AT小型限定の二輪免許で、125ccまでのカブをマニュアルシフト操作で乗ることは何ら問題ありません。というのも、免許制度の上でのATは変速操作ではなく出力を断続するクラッチ操作の有無で定義されているからです。
そのためカブ系の自動遠心クラッチだけでなく、クルマの例ですが、フェラーリやポルシェのようなDCTやAMT(※)といった自動クラッチ付きマニュアルトランスミッションの車両は、変速はマニュアルで行うにしろ免許制度の上ではAT車として定義されているのです。
ただ、125ccクラスの市販装備車ではまず見ないのですが、リッタークラスのスーパースポーツではクイックシフターというクラッチ操作を不要とする機構が採用されていることがあります。
これは走行時のシフトチェンジでのクラッチ操作を不要にする機構ではあるのですが、発進時・停止時にはクラッチ操作が必要なので、MTとして扱われます。決してAT限定では乗れないのでご注意を。