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タイのバイクメーカーGPXのラインナップはいずれも低価格と高いデザイン性がウリ。最初からカスタムマシンみたいでかっこいいけど、コスパがよすぎて「よくよく見るとつくりが悪いんじゃないの?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、セパハンにロケットカウル装着と、GPXの中でもっともホットなカフェレーサーGentleman Racer 200を実際に試乗してみました。さすがにサーキットに持ち込むことはできませんでしたが、高速と一般道を含め、100km超の道のりを一緒に旅してわかったことをレポートしていきます。
小柄な女性でも不安なく乗れるサイズ感
まず最初に気づいたのが、カタログでみるよりもコンパクトな車体だということ。CBR250RRやYZF-R25といった日本メーカーの250ccと比べると、全体的に一回りくらい小さく感じます。かといっておもちゃっぽいかというとそうでもなく、流麗なスタイリングも相まってしっかりとした存在感を主張しています。
スリムな車体な上に、シート高が73cmと低く、足つきに不安を感じることはありません。身長168cmの筆者なら、かなり余裕をもって両足をかかとまで地面にべったりつけられます。150cm台の女性でも気軽に跨ることができそうです。
ポジションは長めのタンクにセパハン採用なだけあって、強めの前傾姿勢になります。ロングツーリングにはあまり向きませんが、「かっこよく走っている」雰囲気は味わえます。
モダンとクラシックが同居するパーツとレイアウト
まじまじと各部をみていくと、最近の日本車に慣れ親しんだ人間にとっては戸惑ってしまう部分が見つかります。
そのひとつが、ハンドルロックがメインのキーシリンダーからかけられないことです。乗り始めた当初は見つからず、「タイは盗難の恐れもないくらい治安がいい?それともロックを別に買うのが当たり前?」と余計な心配をしてしまいました。
しばらく困っていたものの、サイドからキーシリンダー周りを確認しているときにトップブリッジ下側のキー差込口に気がつきました。そう、これがハンドルロックだったのです。
さらにびっくりしたのがチョークレバー。キャブ車なのでついているはずですが、これまたハンドルまわりで見つかりません。
探すことしばらく…… ありました。キャブレターに直接引くレバーがついています。ハンドルロックといい、実はこうしたレイアウトは80年代のバイクに見られたものです。知っている人であれば当時の愛車を思い出してノスタルジーに浸れそうです。
こうしたレトロな部分もありますが、それで終わらないのがGPX。ギアポジションインジケーターつきの一眼デジタルメーターに、クラスから考えればオーバースペックなダブルディスクにラジアルマウントキャリパーなど、採用されている主要パーツはどれも高性能なものばかりです。こうしたちぐはぐな部分がまた、GPXが持つ“カスタムっぽい雰囲気”を作り上げているのかもしれません。
搭載されているエンジンは、これまた現代のバイクではあまり見られなくなった4ストローク空冷単気筒SOHC2バルブ。どちらかというと、ツアラーやオフ車といった低中速のトルクを重視したモデルに搭載されることが多く、スポーツバイクに採用されることは稀です。
カタログスペック的にも7,500回転で11.5PSの最高出力、1.34kgf・mの最大トルクを発揮と、125ccクラスといい勝負なくらいです。
意外なほど爽快な乗り心地
いくら足回りがよくてもパワーユニットが控えめなので、実のところ走りにはあまり期待をしていませんでした。
ところが、乗り出してみると意外なほどよく走ります。160kgと250ccクラスの重量があるにも関わらず、低速のトルクがしっかりあり、ストップ・アンド・ゴーの多い都内の一般道でもストレスなく交通の流れに乗っていけます。巡航時は4000~6000回転、加速時は6000~8000回転付近を目安にシフトアップしていけば軽快そのものの走りを楽しむことができました。
一方、高速道路ではパワー不足になるかと思ったものの、よく回るエンジンのおかげで8000~1000回転をキープしていけば十分な速度を得られます。ただこれだけ回転を上げるとエンジンの振動がかなり大きくなるので、あまり長時間のライディングには向かないかもしれません。筆者も40km程度走った時点で手がいくらかしびれてしまったほどです。
まとめ:スタイルに惚れたら買い!
正直なところ維持費は250ccと変わらないので、運動性能や快適性を考えればクォータースーパースポーツに軍配が上がります。それでも走りがそこそこイケてる上に、スタイリング抜群なカフェレーサーがたったの40万円弱で手に入れられると思えば、そのコスパは圧倒的です。「かっこいいバイクを安く手に入れたい」、「人と違ったバイクに乗りたい」、「80年代の息吹を新車で感じたい」、といった方々にはぜひ試してほしい一台です。