この記事の目次
以前、「エンジンがかからない!? そんなときはこれを試してみよう!」という記事を書きました。
記事中でエンジンがかからない原因を切り分けていくのに重要として、内燃機関が始動して継続動作するために必須の3要件「良い圧縮」「良い混合気」「良い火花」を挙げています。
今回の記事ではその中の「良い火花」の根幹を担うプラグについて触れてみます。
プラグが原因で引き起こされる不調の主なもの
- 始動性が悪い(エンジンがかかりにくい)
- 燃費が悪い(アクセル開度に応じたパワーが出ないため開けすぎてしまう)
- エンジン回転が安定しない
- アクセル開度が一定のときにエンジン回転は安定しているが、ところどころで息つきがある(ブォーーーーーーーボッーーーーーーーーみたいな)
これらの不調は、プラグそのものの劣化、プラグ以外の点火系(コードやコイル)の劣化・故障、プラグのカブりや汚れで引き起こされますが、記事ボリュームの関係上、今回はプラグの劣化に絞って解説します。
どうせプラグのカブりがーっなんて常日頃気にしていて、その対策もできているような人には釈迦に説法になりそうですし(笑)
プラグの劣化?
では、なぜプラグは劣化するのでしょうか?
大別して、正常運転における通常消耗の蓄積と、何らかの不具合(異常燃焼等)による急激な消耗促進とに分類できます。
どちらにおいても、高温や放電によって電極が摩耗(溶解)して丸くなることにより、着火に必要な火花を発生しにくくなります。
電極の距離が同じならエッジの効いたものほど放電による火花が起こりやすいやすいためです。
摩耗により放電のために適正な距離が微妙に遠くなることもありますし、整備時に外して置いたプラグを落とす等で放電ギャップが狂っても正常に発火しなくなります。
異常燃焼においては、碍子が割れたり電極が完全に溶け落ちてしまうこともあります。
交換時期
一般的な自動車 / バイクメーカーやプラグメーカーの推奨交換走行距離を見てみると……
四輪車:15,000~20,000km (軽四輪車:7,000~10,000km)
二輪車:3,000~5,000km
とされており、四輪よりは二輪の距離のほうが短くなっていることに気づくかと思います。
これは、タイヤの数の違いというわけではなく、一般的に四輪=大排気量(低回転)、二輪=小排気量(高回転)であることによるもので、同程度の速度で走った場合にでも回転が高くなるとそれだけ発火回数も増えるためです。
そのため同じ四輪同士、二輪同士で比較すると、小排気量車ほどプラグは消耗しやすい傾向となります。
最近の四輪では、中心電極のみならず、外側電極も耐熱・耐摩耗性に優れた貴金属(プラチナ、イリジウム等)を使用することにより、中心電極を細くしてスパーク性能を高めながらも推奨交換時期は10万キロ以上に達し、もはやプラグは定期交換の消耗品とは言えないレベルにありますが、現在二輪においては貴金属仕様のプラグは中心電極のみでスパーク性能を高めたものしかないようです。
これは外側電極にまでも貴金属を使用することによりプラグそのものが高価になってしまうため、交換サイクルでの費用対効果でのことと思われますが?(2輪で使った場合25000km程度?)市価を見るかぎり、あればあったで欲しい人は多そうな気もしますがどうなのでしょう?
交換方法
交換の必要性と期間について説いておいて、肝心の交換方法を書かない手はありませんので「プラグの交換ってどうやればいいの?」という方に向けてわかりやすく解説いたします。
選び方
純正装着と同じもの、また別メーカーの同等品と交換するのが一般的ですが、現状でプラグの番手に起因した問題があるなら、その対策ができるものを選ぶこととなります。(焼け型 / 冷え型といった番手違い)
スポーティーな走行の機会が多く、プラグの消耗が激しいようであれば番手を上げ、街乗りでの燻りが多いようであれば番手を落とすといった感じになりますが、適正プラグを選ぶには常日頃からプラグのチェックをして、焼け具合による自分の走りと燃料セッティングとの適正を把握する必要があります。
プラグのチェックも、帰着してから……では意味のないことが多いため、出先の路傍での作業を厭わないような人のみ対象です。
最近の電子制御バイクをノーマルで乗っているのであれば、純正指定品を選んでおけば間違いないでしょう。
交換作業
作業そのものはプラグキャップをはずし、プラグをプラグレンチではずして、新しいものと入れ替えてプラグレンチで締め付けるだけです。
が、プラグがすぐ目に付く位置に装着されている単気筒や二気筒であればまだしも、三気筒・四気筒のバイクとなるとプラグの脱着をするためにはタンクとエアクリーナーボックスも外すことになる場合が多く、直接プラグに関係ない付随作業が嵩みがちで、整備に不慣れな人には意外と大変かと思われます。
なお、新しいプラグを取り付ける際には、必ず手で絞められるところまで手で絞め、決して無理に捻じ込んでいかないことが鉄則です。(回りが悪いのを無理に工具で締めていくと、最悪の場合シリンダヘッド交換となります)
加えてプラグのネジ山には決してグリス等は塗らず、車両メーカーのオーナーズマニュアルやサービスマニュアル、またはプラグメーカーの推奨する規定の締め付けトルクを守りましょう。
筆者の経験則から言うと、一般工具として売られているプラグレンチよりも、車載工具に入っているプラグレンチのほうが使い易かったり、それでないと作業できないといった場合も多かったと付け加えておきましょう。
ついでのもうひと手間
せっかく交換するのであれば、もうひと手間かけて「プラグインデクシング(電極の向き合わせ)」を実践してみるのも良いかもしれません。
一部の特殊なものを除いて、一般的なプラグでは外側電極がL字型に装着されているのですが、その外側電極が吸気により混合気が流れてくる方向と逆サイドになるよう取付けして、電極の影にならないよう真正面から混合気にスパークを当ててやるといったものです。
方法としては、プラグ上方から締めた後にでも目視できるところに電極位置をマーキングしておいて、ガスケットの潰れ具合と締め付けトルクとマークの方向を調整し、場合によっては厚みの違うシムを挟んで、最終的に電極位置がEXバルブ側になるよう締め込みます。
論理的には納得できるものの、実際どのくらいの効果があるか…… は保証の限りではありませんが、少なくとも悪くなることはないのと、DIYの場合であれば手慰みの時間つぶしには良いのではないでしょうか?