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一昔前だと近所の先輩に連れられてとか、見知ったバイク仲間と行くものだったツーリング。今ではすっかりインターネットやSNSの発達で初めて顔合わせするメンツばかりということも多くなりました。
中でも人気となっているのが、たくさんの人が集まって隊列走行するマスツーリングです。連帯感を感じやすいこともあり、お互いの親睦を兼ねて実施されている感があります。
新しい仲間と出会えるし、ツーリングも楽しめるし一石二鳥と思うかもしれませんがちょっと待って。集団で走るというのは意外と気を使うことも多いのです。全員の気心がしれていないとバラバラになってしまったり、悪いときにはペースについていけずあわや事故なんてことにもなりかねません。全員初心者なんてなると、かなりリスキーです。
何度か行っているうちに慣れていくものですが、最初の一歩でつまずかないことも大切。まずは最低限のポイントを押さえておきましょう。
とにかく絶対に無理をしない!
まず初心者が一番注力すべきは自分の安全の確保です。少しでも不安に思うようなペースには、絶対についていこうとしてはいけません。その時点で、すでに自分では御しきれないと身体で感じているということですから。
そんなとき「迷惑がかかるから」なんて決して考えてはいけません。初心者を初心者だと知った上でマスツーリングに迎え入れられたのであれば、堂々と「お客様」になっていいのです。
高速道路やワインディング等で各車フリーペースへの切り替えをすることもありますが、先行しても必ず経路の要所で待ってくれますし、あらかじめPAやSAなどの合流地点を指定した場合でも、単独にはならないようエスコートしてくれるメンバーは必ず残るというのが普通です。
信号の変わり目だったり、合流で隊列にクルマが割り込んできて、前車から離れることもありますが、それでも慌てる必要なんてありません。まずは自分の安全を優先した上で、淡々と自分のペースで走り続ければ良いのです。
そういった意味では、自分でも目的地と経路をある程度は把握しておくべきです。スマホホルダーを設置してナビアプリで経路を設定しておくくらいは自主性を持っておくと余裕につながります。
グループの合う合わないも重要です。初心者への配慮もなく放置されたり、文句を言われたりするような集まりであれば、即刻見限ってしまいましょう。これはベテランであってもペースが合わないと感じた場合は同様の判断をしていますから、気に病む必要はありません。
知らないグループに参加する際には、変な見栄を張らないこともまた大事です。
まずは自分自身の慣らしから!
もっとも超初心者ともなるとむしろ不安を感じない、自分に合ったペースも分からないといったケースもあります。
マスツーに憧れて免許を取得するといった方もいると思いますが、愛車との意思疎通を図り、交通の流れに乗るためにも、自分自身の慣らしをしておくことも重要です。可能な限りお互いの人柄や走りの好みを把握できている、信頼のおけるベテランと2~3台での少数ツーリングを何度かしておくと練習になります。
もっとも、バイク人口の激減した現在となっては「身近な」先輩バイカーを見つけるのもなかなか難しいところ。さらにメンバーをSNSで募集してしまったがために、初心者を交えた行程に相応しくないほどの大所帯かつ人もバイクも雑多なメンツになってしまうことも珍しくありません。
当然、経験の浅いメンバーやペースの遅いバイクに合わせるのが鉄則なのですが、初対面同士であるが故に注意や配慮が行きわたらなくなってしまうことだってあります。
ネット上での出会いは手軽なものの、リスクがあることも事実。最低限、はじめから台数や車種もしくはクラスをきっちり限定すると良いかもしれません。
ベテランは常にメンバーに気配りを
ベテランや先導する側は自分の楽しみだけでなく、参加者が「楽しかった」と笑顔で帰れるようにすることがミッションです。先にも書いたとおり、初心者であることを承知で迎え入れたメンバーは未来のバイク趣味を支えてくれる「お客様」。いかに楽しく過ごして「バイクっていいな」と思ってもらえるようアテンドできるかが、ベテランの務めであり腕の見せどころといえるでしょう。下記の注意点を守って、最高のマスツー体験を実現させてあげてください。
先導者およびツーリング企画者はメンバーをしっかりアテンド
先導する側は、自分の走りにばかりかまけていてはいけません。あくまで役割は引率者。初心者相手にイキったところで、みっともないだけです。
- 経験の浅いメンバーがいる場合、自身が知らないコースやルートは基本的に選択しない、企画しない
- 経験の浅いメンバーがいる場合、やみくもに所帯を大きくしない(最後尾からでも該当者が把握できる程度)
- 経験の浅いメンバーは、必ず先導者自身が目視・ミラーで常に視認できる位置に配置する
- 交通(信号や合流車)を先読みし、経験の浅いメンバーの負担にならないようコントロール
- 基本は千鳥走行を遵守。後続を惑わせないよう、自分の位置取りはできるだけ一定に
- 先導者から見て、経路や目的地の把握を含めて、最も信頼のおけるメンバーを最後尾に
- 分断された場合は安全な場所で待機。交通への影響が大きく安全に待機や再発進できない場合はそのまま先行して最後尾の判断にまかせ、その後合流すること
経験者はサポートに徹する
先導者だけでなく、マスツーの経験があるベテランにもまた役割があります。可能な限り先導者や最後尾のメンバーを補佐してあげましょう。
- 先導者の先読みミスで信号待ちや合流車で分断されて、経験が浅いメンバーが先頭にたってしまった場合、安全に配慮しつつ速やかに入れ替わり、一時的な先導を引き受ける
- 信号のない交差点での右左折で、直進車を停めて後続を通過させる。ゴメンネアリガトは確実に!
- 分断からの合流や再発進時に、先頭のタイミングに合わせて後続車をブロック。謝意はキッチリと!
- ダラダラっと伸びた車列はサイテーにダサいし、割り込みで分断されると煩わしいので、交通量の多い路線の走行や一定速での巡行ではキッチリ千鳥走行する
- とはいえシチュエーション次第で譲るときはキッチリ譲る。その判断を経験の浅いメンバーがしなくて済むように。
- 前車がミラーで楽に確認できる位置取りが大事。自分がミラーに写るように。白バイの真似はダメ!
- 信号待ちでは二列または三列に。再発進時、スムースに千鳥に戻れるとカッコいいぞ!
- ワインディングでは千鳥を解除、縦一列の並びにしてブレーキングとライン取りに余裕を持たせる
一朝一夕でできるものでもないですが、常によりよいマスツーを目指していけば自ずと身についてきます。
初心者もいつまでもお客様でいるわけにはいかないので、こうした諸先輩方の振る舞いを見てだんだんと覚えていきましょう。自分が余裕をもって参加できるようになったとき、こうした配慮を実践できればまた新たなバイクの輪が広がっていきます!