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量産車でのマットカラー初採用として話題になったのは、2010年のアルファロメオ・ブレラの限定車ではなかったかと記憶しております。
加えて、自身で乗っていた型の出目金YZF-R1のカラーバリエーションにも、マットブラックがあった気がします。ヘルメットにも最近ではマットカラーのものが以前よりも多くなりましたね。
それ以前の意図的な艶消し塗装というと、軍用車両か右翼の街宣車、主にラット系のカスタム車両、行き過ぎDIYの産物やぶつける前提でのドリフトミサイル仕様車両の素人缶ペ全塗あたりくらいしかありませんでした。
さらに遡って筆者が免許をとったころでいうと、最近のビジネスとしての盗難よりも「盗んだバイクで走りだす~♪」の遊びでの盗難が多い時代で、盗まれたバイク(ヘルメット)が出てきたのはいいが艶消し缶ペ全塗されていたというのはよく聞いた話です。特徴を隠して発覚を遅らせるためと思われますが。
「マットカラー」と聞いてまず想起したのがこの程度の興味しかない筆者ではありますが、そのお手入れについてご紹介してみようと思います。
意外とタイヘン、マットカラーのお手入れと維持
バイクやクルマはピカピカに光り輝いてこそという価値観の転換とアンチテーゼといった向きも勿論あるのでしょうが、そもそもマットカラーというトレンドの源流となったのは「飽きたら剥がせる」「痛んだら剥がして元通り」のラッピングやラバー塗装では?とも思うので、純正塗装が追従してマットカラーになってしまうのはどうなんだか?とも思ってしまいます。
基本的に表面の微細な凹凸により光を乱反射させることで艶消しになっていますので、この凹凸を埋める / 均してしまうようなことは全てNGとなります。
一般的に市販されているお手入れグッズはツヤを出すためのものなので、塗装面の微細な凹凸を埋める方向であるワックスやコーティング剤、凹凸を均して整える方向であるコンパウンドが配合されたクリーナー等がほとんどです。
それを考慮せずマットカラーの塗装面にこれらを使用してしまうと……
- 中途半端なツヤが出てしまい、白ボケしてマットカラーならではの質感が失われる
- 艶消し具合が一定にならずムラだらけになる
といったことになってしまいます。凹凸を均すという点では拭く・擦るというのも避けねばなりません。
その他日常的に起こりうる問題点としては、
- 触るところ片っ端から手脂が目立つ
- 油分が付着すると目立つ&除去が難しい
- 撥水性が悪いために水玉となって流れにくいため、汚れがそのまま付着して乾く
- 撥水性が悪いだけに水玉にはなりにくいものの、いったんウォータースポットがつくと除去できない(磨けない)
- ボディカバーをかけると部分的にツヤになってしまう
- 特に暗色はステルスしてしまうので、夜間の駐車には注意(当てられないように)
くわえて部分的な補修が必要になった場合には、色が合っていさえすれば磨けば最終的に均質となるツヤ塗装と比べて、ツヤ消し剤の配合量から吹き付け具合まで揃える必要があり、全塗装しないかぎりは質感を合わせるのは非常に難しい作業となります。
解決策
このように問題山積みのマットカラーの維持。では、それを解決していくにはどうすればよいでしょうか?
松コース
ガレージ保管が必須、悪天候用の別の乗り物を確保、メンテは全てその道のプロに高頻度で委ねるというお大尽コース。撥水性を持たせて汚れがつきにくくしながらも、マットな質感を保つコーティング技術もあるようです。
実際見て見ると、純正でマットカラーを選択できる車両というのは、それが可能な人でないと買えないような車種が多い気もします(笑)
二輪は比較的安いものでもマットカラーがあるのは、屋根付き保管できる・悪天候を避けるというケースが多いせいでしょうか?
竹コース
買ってすぐにラッピングorラバー塗装でのマットカラーに。水洗い以外のお手入れは敢えてせずに、痛んだら剥がして塗り替え・包み替え。
後々「純正のマットカラー」が希少になった場合にも対応できます。コスト的には松コースよりもかかりそうな気もしますが、露天駐車であればガレージを用意するよりは安いでしょう。
梅コース
なにがあろうといっさい気にせず、つや消し塗装というのはそういうものだろう?と悟り切って、あるがままに受け入れる純正ラット仕様としての扱い。
お手入れはノンコンパウンドのシャンプーのみ、いっそ台所用の中性洗剤でもいいんじゃない?
変に手をかけすぎない気にし過ぎないというのが、庶民レベルでのマットカラーのあるべき姿のような気もします。
ヤマハはマットカラーのバリエーションを比較的多く出しているせいか、アルコールベースで汚れを落とし、フッ素で水を弾くと謳う純正の専用クリーナーも出しているようですね。(高い!)
検証はできていませんし油染みと同様になるような気もしますが、ワコーズのバリオスコートやプレクサスといった、ノンコンパウンド・ノンシリコン系のコート剤なら使えると言っている人はいるようです。
まとめ
上で「質感を揃えるのが難しい」とは書きましたが、あくまでそれなりの価値のある車両とプロの職人の視点でのことであり、本来艶消し塗装は比較的大きなものを素人が色ムラにならないよう塗るのには、かえって易しい塗装だったりもします。
こちらで「クルマを自分で刷毛塗りしちゃおう」というコンセプトで、それに適した配合と調色をした塗料を販売されているので、そのうち塗装がガビガビになってきたボロスタを、住宅街のど真ん中で塗ってみるつもりでいたりはします。
当然上手く塗りあがったとしても、あるがままに受け入れながら痛んだらまた塗ろうという梅コースにしかならないと思われますが(笑)