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現存する海外の名門バイクメーカーが存在する国といえば、アメリカ、ドイツ、イタリア、イギリス……くらいが思い浮かぶわけですが……オフロード特にトライアルの分野では超一流ともいえる老舗がスペインにあります。それが2020年で創立75周年になるモンテッサです。
同社製の名車&珍車をササっと振り返りつつ、その特長をおさらいしておきましょう。
モンテッサの創立は1945年!
まず最初に、モンテッサの歴史を駆け足で紹介しておきますと……創業者はバルセロナ出身のPere Permanyer Puigjaner(ペレ・パーマニエ)氏です。彼が33歳のとき、1945年に創立しました。
1936~1939年のスペイン内戦中、パーマニエ氏は、空軍車両の修理および再建ワークショップ管理の仕事をしていたそうです。当時26歳だった若かりし頃の彼は、ドイツのDKWバンの2ストロークエンジンの性能に惹かれ、それが創業に至るプロジェクトのインスピレーションになったと語っています。
ちなみにDKWというのは、1920~30年頃に2ストロークエンジンを強みに台頭したドイツの自動車メーカーであります。4ストロークの立派なエンジンではなく、軽量・簡便な2ストロークに目を付けたのでしょう。
記念すべき第1号モデルとなったのは1945年生産開始の「A-45」。98cc(45.6 x 60mm)の2ストロークエンジン+3速マニュアルギアボックスを備えていました。
3速ミッションのみならず、良く見ると前後にサスペンションも装備しています。シンプルな2ストロークエンジン搭載車ながらも、パッと見はまるでドイツ車のようなカッチリとした佇まい。実に先進的な意欲作であることが分かります。
「A-45」には、ローフレーム設計の女性向けバリエーションもありました。日本では1970年代になってようやく、こうしたモデルが登場しましたね!
小排気量車での街乗り移動のニーズは、男性だけでなく女性にもある。それを見越した先見の明に驚かされます。
国内外のロードレースに参戦!
1945年は21台のみの生産でしたが、翌年からは生産を拡大。また排気量アップや高性能化に努めつつ、モンテッサは国内外のレースにも積極的に参戦していました。これはドゥカティやベスパと全く同じ手法でして、販売している小排気量の2ストロークエンジン搭載のコミューターでレースに参戦。その優れた結果をプロモーションに活かしていったのであります。
写真は1945年のマン島TTレースの様子。イタリアの名門モンディアルが上位を独占した125ccクラスにおいて、見事に5位・6位に入賞しました。当時は4ストロークエンジンが圧倒的に優位でしたので、これは偉業といえるでしょう。
名車・珍車を続々とリリース!
そんなわけでモンテッサには数多くの2ストロークエンジンを搭載した素敵なモデルが存在しています。ここからは、その一部を駆け足で紹介して行きます!
1953年のジュネーブ国際モーターショーで世界初公開したコンセプトモデル「ブリオ90」の血を受け継ぐモデル「ブリオ91」。軽量かつ高性能・高耐久性が自慢の2ストロークエンジンはそのままに、フロントフォークはテレスコピック式にアップデートされています。
「Mini Mini」は1970~1972年の間に生産された排気量50ccのファンバイク。工具なしでフロント部分が取り外せる画期的な構造でした。愛らしい姿はホンダ モンキーに通じるものがありますね。
何やら素敵なスクーター!なのですが、コチラはイタリア ラベルダ社スクーターのライセンス生産品「マイクロスクーター」です。当初は自社開発を試みましたが、より素早く市場に投入するためやむを得ずという事情があったといいます。
そのためモンテッサにしては珍しい4ストロークエンジン(ラベルダ社製)を、ベスパと同様のスチール製モノコックフレームに搭載していました。生産期間は1963~1973年の10年間です。
そしてタイトル画像にも使用した「FURA」は1958年にジュネーブ国際モーターショーに展示されたコンセプトモデル。宇宙にでも飛んで行けそうなデザインなのですが……残念ながら市販されることはなかったそうです……。
モンテッサといえばトライアル!
そんなモンテッサですが、現在ではホンダの子会社になっています。そして……トライアルの分野では世界最強と断言できる名門ブランドです。今ではいずれのラインアップも4ストロークエンジン搭載車です。
日本人ライダー”Fujigas”こと藤波選手の活躍はご存知の方もいらっしゃることでしょう。またレジェンドのトニー・ボウ選手は、トライアル世界選手権のタイトルを2007年から13年連続で獲得。インドアで行われる「Xトライアル世界選手権」でも13連覇。世界タイトルを26個獲得して、今日に至っているのであります。
トライアルでモンテッサの雄志を見よ!
こうしてみると、創設当初からのレーシングスピリットは今でもトライアル競技に場を変えて受け継がれています。今年は新型コロナの影響もあり中止されてしまいましたが、トライアル世界選手権は、ツインリンクもてぎにて開催されていますし、ご興味を持たれた方はぜひ、モンテッサの雄姿を生で見てみてください!