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かつては売れ筋のメインストリームとして、週刊各紙に必ず何本かずつは掲載されていた、バイクをメインテーマとしたマンガ。めっきり下火となった期間はありましたが、最近は紙媒体による流通にこだわらなければ、ニッチなテーマに特化しながらも広く読者を獲得することもできるようになり、Web連載から人気を博して書籍化という従来の逆パターンも増えてきて、再びバイクをテーマとした作品も増えてきています。
今回の記事では、そんな状況を誰も予測さえせず、毎週ブ厚い週刊コミック誌を買いに行っていたバイクブーム時代の名作のごくごく一部を、ネタバレを避けながらざっくりと紹介してみます。
バイカーたちの多様なドラマを描いた「キリン」
自身も「かなり走る」タイプのバイカーでもある、東本昌平氏のコミックにして全39巻(+新版11巻)からなる作品。初めて読んだ当時は「トレース」という作画技法を知らなかったため、なんて画の上手い人なんだ!と素直に思っていました(笑)。
少年誌で連載されていた後述の他の作品と違って、初期はバイク雑誌にて連載されていたこともあり、やや大人向けともいえる劇画調のハードなタッチです。
- 字面で見ると突飛に見えるものの、バイクやクルマに乗ったことがある / そういう運転をしたことのある人なら納得できる風切り音や操作・操作感の擬音
- 二輪ライダーと四輪ドライバー、シニアバイカーとヤングバイカーといった対比と確執、それらを明確に具現化したキャラクター群
- 独特のニヒリズムを漂わせながらも熱いポエム
で、当時の血気盛んなバイカーやバイカー予備軍を心酔させていました。
大きくわけて4部+新版といった構成になっており、それぞれの部で登場人物やストーリーが完全には連続していないのですが、端々に相関や関連を匂わせる描写等を見つけられることも。ちょっとアッパーな例えですが、フランスの作家エミール・ゾラによる、ある一族が5世代に渡って繰り広げる人間ドラマを記した「ルーゴン・マッカール叢書」のような楽しみ方もできます。
1980年代の夢をカタチにした「バリバリ伝説」
現在ではクルマ・バイク系マンガの大家となった、しげの秀一氏の初ヒット作の全38巻。峠の走り屋が世界的GPライダーとなっていく過程を、氏の作画の進化とともに楽しめます。
紙面という二次元にスピードやG(重力加速度)を表現する技術は、まさに古今東西においても一流ではないでしょうか?
ごく初期はギャグ要素も多かったのですが、レーサーとして成長していくにつれそういった面はやや薄まっていきます。当時社会問題になっていた「ローリング族」を煽る元凶とやり玉にあげられたこともあり、サーキットでの活躍という方向性があらかじめ予定されていたものなのか、それとも急遽変更されたものなのかは未だに気になるところです。
SFチックなマシン×バイクレース「ふたり鷹」
筆者としては、戦場ロマンシリーズ・ファントム無頼・エリア88といったヒコーキものでの印象が強く、現在は休筆されている新谷かおる氏が二輪レースをテーマとして描いた全19巻。少しばかりSFチックなマシンがレース中のメカトラブルで「こいつ〇〇になっちまった・・・・・」は、あれこれツッコミどころ満載ながらも強く印象に残っている場面です。
デビューが少女マンガだったせいなのかはわかりませんが、独特のクセのあるキャラクター作画は好き嫌いが分れるかも?
昭和のヤンキー文化を体現した「疾風伝説 特攻の拓」
「はやてでんせつ とっこうのたく」と読んではいけません。「かぜでんせつ ぶっこみのたく」と読みます。現在では見かけることもなくなったヤンキー文化からくる用語です。作中の「不運と踊っちまった」もそのまま読んではいけません。このあたりの無理やりすぎる当て字でカッコつけるのは、ヤンキー文化というよりはこの作品が発祥かもしれません。(読みの正解は作品中で!その他パターンもあり!)
それだけにバイク要素がやや強いヤンキーマンガといった感じで、バイクマンガとして見るとちょっと違うかなぁと感じてしまいます。現在の10代がこういったヤンキー文化全盛時代の作品を読んだら、登場人物の行動原理からして理解不能で、思い切りオッサンの筆者が見てでさえも「これ10代???」となってしまうキャラもねっとり濃ゆくて、ラノベ的な異世界にも感じてしまいます(笑)。
当時を懐かしむもよし、当時を知るもよしの名作ばかり
いずれも当時の文化や雰囲気が感じられて、バイクブーム世代には懐かしく、また現代の若者にはタイムスリップしたような感覚に浸れる作品ばかりです。バイク好きなら一度は読むべし!
名作はいつまで経っても色あせませんよ。