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2000年代でもすでに20年近く経ちますし、それ以前のバイク、いわゆる旧車に乗ろうと思うと「維持するのが大変そう」「すぐ壊れそう」「部品がなさそう」など不安ばかりが湧いてきます。
そうした懸念は1990年代のバイクならまだしも、それ以前ともなると、ほぼその通りというのが現実です。世は電子制御全盛でまず壊れないのが当たり前の時代。そんな今、古いバイクに乗る意味ってあるんでしょうか?
かつては多種多様なモデルが時代を彩っていた
旧車最大の魅力はなんといっても現行のバイクにはない、多種多様なモデル展開でしょう。業界として大幅に縮小してしまった2000年以降に比べて、1990年代前半まではホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4大メーカーを中心に各社が開発競争に明け暮れていて、高性能化のため、はたまた自社の個性を出して他社を圧倒するためにしのぎを削っていました。
バイクブーム最盛期の1980年前後ともなれば、カワサキ「Z1000R」やスズキ「GSX1100S KATANA」といった今なお根強い人気を誇る名車はもちろんのこと、女性ウケを本気で意識したというヤマハのスクーター「ポップギャル」、スタンダードなネイキッドスタイルなのにATという時代を先取りしすぎたホンダ「エアラ」といった迷車も数多く登場していたほどです。
機械的だからこそ味わえるバイク本来のフィーリング
もっとも旧車は現在の電子制御全盛のバイクと比べたら遥かに荒削りな面もたくさんあります。点火タイミングや燃料の噴射量調整がアナログなことはもちろん、トラクションコントロールやABSだってありません。アクセル操作一つとっても気を使いますし、ちょっと放っておくだけで、気温や湿度によってはエンジンをかけるのに1時間ほど掛かるなんてことも少なくないくらいです。
でも裏を返せば、素の機械としてのバイクを味わえるともいえます。手をかけた分、きちんと動けばうれしいですし、なにより荒々しいエンジンの鼓動感や一癖も二癖もある乗り味は旧車ならでは。乗りこなせたときのバイクとの一体感はたまりません。
整備と創意工夫を楽しむ
前述したように、旧車はとにかく手がかかります。日々の点検とメンテナスはもちろん、バイクの不調を機敏に感じとってやるスキルすら求められます。10年も経てばゴム部品を中心に劣化してきますし、それ以上ともなれば早々に交換するというのが鉄則なくらいです。
パーツだってなかなか手に入りません。メーカーも製造中止から10年以上たったモデルのパーツはストックのみになってしまっていますし、オークションで手に入れようと思ってもなかなか状態のいいものがなかったり、価格も高騰しやすい傾向にあります。
そこで大事になるのが情報収集。後継車種で適合するパーツを探したり、リバイバル品を製造している専門のショップを国内外問わず見つけたりと、自分から調査する能力が求められます。ちょっと面倒に感じるかもしれませんが、それでもそれは愛車について考えている時間そのものなので、意外なほど熱中できてしまいます。「このパーツが手に入ったらうまく動くかも」なんて期待も膨らみますからね。
さらに旧車仲間を見つけることも大切です。頭を悩ませている問題は一緒ですからノウハウや情報を共有したり、絶版部品をお互いに分け合ったりもできます。なにより同じバイクを愛している以上、話も弾みますし、より旧車ライフが捗るようになりますよ。
大人になったからこそできる高レベルのDIYに挑戦
こうしてみると今の若者のすべてに旧車をすすめるのは、やはり難しいとは思います。スマホを開けばいくらでもコミュニケーションが取れますし、モノもエンターテイメントも溢れていて、お金をかけずに楽しめるものはいくらでもありますから。
それに状態がいい名車を手に入れようと思うと、それこそ同クラスの現行モデルと同等かそれ以上の値段がかかりますし、かといって安い旧車を買ってきてレストアするのはかなり至難の技と八方塞がりにも見えます。
それでも、プラモデルやミニ四駆に明け暮れた子供時代を過ごした方であれば「自分で作り上げたものを動かす」楽しさを知っているはず。大人になったからこそできる高レベルのDIYに挑戦するなら旧車はいい題材になります。比較的安い1990年代のバイクでも今から維持しておけばきっと値上がりするでしょうし「故きを温ね新しきを知る」も乙なものですよ。