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海外メーカーのオシャレなバイクや日本メーカーの逆輸入車を眺めていると、日本の常識からするとあまりに中途半端に見えるモデルがちらほら見つかります。
KTM DUKE 390はまだ400ccに近いため、そこまで気になりませんが、BMW G 310 Rやベスパ GTS SuperTech 300などの排気量はちょっとなじみがないですよね。
かといって、ツーリングバイカー憧れのハーレーともなると、小排気量がまったくなくて普通自動二輪を取得したばかりの身では「乗れないのか……」としょんぼりしちゃうなんてこともあります。
実はこれ、二輪免許の区分と需要が主な理由なんです。各国の状況を知ると、メーカーのラインアップにも納得がいきますよ。
アメリカはたったの2区分のみ
「アメリカン」というジャンルがあるくらいバイクが大人気なアメリカ合衆国。代表的なハーレーやインディアンのラインアップを見ても、どれも750ccを優に超える大排気量モデルばかりです。とにかく大きさこそ正義なバイカーの支持を集めているボスホスともなれば、5000cc超というアメ車譲りのエンジンを搭載していることで知られています。
そんなアメリカの免許区分は150㏄以下の「M2免許」と無制限の「M1免許」の2つのみ!なんともおおらかですね……。しかもほとんどの州では16歳から免許の取得ができるだけでなく、取得費用は250ドル~。約3万円でバイクデビューできるとは、なんてバイカーに優しい国なんでしょう。道路も広いしこれは移住したくなるレベル。
ASEAN(東南アジア)ともなると最初から無制限!
ASEANでは、さらに規制はゆるゆる。なんとバイク免許は1区分しかなく、最初から無制限!しかも筆記と実技の試験をクリアすれば、即日発効ができ、費用はたったの3000円程度というから驚きです。
中でもタイの免許は有効地域が広すぎ。同国で取得すれば他のASEAN諸国すべてで使用できるのです。バイク大国といわれる所以の一端はここにあるのかもしれませんね。
電動バイクも含め包括的に法整備されているEU加盟国
逆にKTM、BMW、ベスパなど名だたるバイクメーカーが身を置くEUともなると、免許区分は馴染みのあるきちんとしたものになっています。それでも日本のそれとは細部が異なっていて、理にかなった規制といえる部分もあり、一歩先を行っている印象です。下から順に見ていくと……
いわゆる原付き区分の「AM:50㏄以下」
意外なことに、EUでも一番下の免許区分は50㏄以下のAM。いわゆる原付免許ですね。一部の加盟国を除いて16歳からの取得が可能というのも日本と同じです。
排気量は同じでもパワーの規制はゆるい「A1:125㏄以下」
次に来るのも日本と同じく125㏄のA1。日本と同じじゃない?と思われるかもしれませんが、実はちょっと違いがあります。
日本:50㏄超~125㏄以下または定格出力0.6kW超~1kW以下
EU:50㏄超~125㏄以下または定格出力11kW以下の二輪車もしくは15kW以下の三輪車
このとおり定格出力の規制はEUの方がはるかに緩いんです。
そうなるとうれしいのが出力で必要な免許が変わってくる電動バイク勢です。日本でまともなパワーのモデルに乗ろうと思うと、普通二輪免許以上が必要になってしまっていますからね。日本であまり電動バイクが普及しない理由はこのあたりにあるのかもしれません。
経験の浅いバイカーの安全を考えて設けられた「A2:35kW以下」
ここで登場するのが、一風変わった区分である35kW以下のA2。馬力に直すと47.6馬力。排気量ではなく、その定格出力で是非を決めるのは中々斬新ですね……。でも、なんでこの区分だけ定格出力基準にしたんでしょう?
実は、経験の浅いバイカーが馬力マシマシな暴れん坊バイクに乗るのを防ぐために設けられたんだとか。このあたりで練習して、安全運転のイロハを学べということなのでしょう。19歳から取得可能というのもまた、子供から大人になる過渡期としての設定といえそうです。
人生とバイク経験の確たる証「A:無制限」
A2の上は、晴れてまったく排気量もパワーも規制がなくなるA免許。24歳以上もしくはA2免許で2年のライディング経験がある者のみが取得できるようになっています。
EUでは交通事故による労働人口の減少を防止するのと、そもそもバイクが富裕層の嗜好品のような立ち位置にあるためか、より理にかなった規制を敷いているように見えますね。
400㏄というくくりは日本だけだった!?
こうして海外の免許区分をざっくりおさらいしてみると、日本しか400㏄という縛りは存在しないということに気がつきますね!
道理で海外のバイク談義サイトでは「なんで日本メーカーは400㏄モデルなんか出すんだ」なんて議論がでてくるわけです。むしろ変なのは日本の区分だったり……?