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バイクのいたるところに使われているプラスチック製のパーツ。剛性や加工性、耐久性といった特性のバランスがとれていて表面が美しく仕上がるABSはカウルやフェンダーに、透明度の高いポリカーボネイトはフロントスクリーンやヘッドライトに、割れにくいポリプロピレンやポリエチレンはオフ車の外装にといった具合に、適材適所で多用されています。
ちなみに種類の判別はカンタン。パーツの裏側や目立たない部分にパーツナンバー等とともに、それぞれABS、PC、PP、PEと素材の表記がされています。
そんなプラ製パーツの弱点のひとつが、無塗装だと経年劣化により白色化してくることです。筆者の愛車、ヤマハ「SRV250」もご多分に漏れずそうした症状に悩まされるようになってきました。もはや”アラサー”ですからね……。復活させる方法を検討しつつ、補修作業をしてみたのでご紹介します。
どうして無塗装プラパーツは白っちゃけてくるのか?
有効な対処方法の前に、まずその原因と防止策から考えてみましょう。
白くなってしまうのは”毛羽立つ”から
無塗装のプラパーツが新しいうちは表面のキメが整っており、通常の磨かれた金属表面や塗装面と同様に、一定方向にしか光を反射しません。ですが、ある程度年月が経つと表面にミクロ・ナノレベルで毛羽立ったような凸凹ができてしまいます。結果、光を乱反射してしまうので白く見えるようになってしまうのです。
紫外線をいかに防ぐかが大切
無理に折り曲げるような力がかかっているという場合もありますが、一般的に経年劣化の一番の原因は紫外線です。紫外線によるプラスチックの劣化が極端に進むと、硬化して脆くなり、軽く力を加えただけでも崩れてしまうこともあるほどです。
最も効果的な防止策は屋内での保管や、しっかりしたカバーをかけての保管ではありますが……。
まだ新しいしっとりツヤツヤの時点から、紫外線をカットする効果のあるケミカル(アーマオールやポリメイト、プレクサスやバリアスコート等)でこまめに保護すれば、良い状態を引き延ばすことはできます。それでも完全防止は難しいかもしれません。
ちなみに、すでに白化したものにこれらのケミカルを使うと白化が軽減されるように見えますが、表面の凸凹に液体が馴染むことによる一時的なもので、すぐに元にもどってしまうため、根本的な解決にはなりません。
白っちゃけたプラパーツ復活の手段いろいろ
では、うまく復活させる方法はあるんでしょうか?筆者が知る限りの方法について、それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
効果的なものの慣れが必要な加熱
真っ先に考えられるには、バーナーでさっとあぶったり、ヒートガン(超強力ドライヤー)の熱風を当てること。表面の毛羽立ちを溶かしてならしてしまう方法です。
効果は一番高いのですが、熱を加えるので場所によっては使えなかったり、形状やエッジが歪んだり溶けたりしない程度かつ均一になるよう加減して……と経験と慣れが必要です。すぐに取り掛かれるものの、あまり万人向けの方法ではありません。
物理的研磨は素材による
紙ヤスリやコンパウンドで、物理的に一皮剥いてしまうのも手です。ただし素材によっては悪手という面も。ポリプロピレンやポリエチレンだと、ヤスリ目に粘りついてくるような切削性の悪さがあり、作業性が悪く仕上げ難くなっています。とんでもなく時間がかかってしまうかもしれません。
専用ケミカルでも持続性に難アリ
プラパーツ表面の目に見えない毛羽立ちを、白ボケ専用のケミカルで取り除いたり、目立たない状態にする方法もよく試されています。商品としては多数あり、作業の難易度や作業時間は最も軽く簡単にすみますが、効果の持続性では比較的短いという面もあります。紫外線防止タイプよりも長持ちするものの、半年程度でコーティングをかけなおす場合が大半です。
定着性が問題になる塗装
通常カウルに使われているとおりABSでは塗装をする上で特に問題ないものの、ポリプロピレンやポリエチレンのパーツは塗料の定着性が良くない(=剥げやすい)からこそ、元々塗装されていないケースが多いといえます。
しかし、そこをあえて試してみてもいいのでは。塗装することで白化の再発と劣化の促進を同時に防ぐことができますし、最近では専用に作られた、比較的剥げにくい塗料もあります。剥げたらまた塗ればいいじゃない。と割り切れる場所に使うなら、手軽さでは最強でしょう。
藪(やぶ)こぎしたり岩場で転んだりといった、オフロード車の無塗装ポリプロピレンのボディパーツへの塗装はオススメしません。キズもくすみも白ボケも「勲章!」「風格!」と脳内変換することで乗り切りましょう(笑)。
ポリプロピレンのパーツを塗ってみたら……意外とイイ!
作業の発端としては、いつかは千切れるだろうと思っていた小物入れのフタのリビングヒンジ(ポリプロピレンの物性を活かしたものですね)が千切れてしまったこと。その補修ついでに真っ白になってしまっているフタを塗装してみました。
しっかりと汚れ落としと脱脂をして、マスキング。念のため、表面に塗料の喰いつきが良くなるプライマーでの下塗りもしました。
塗装直後はムラだらけで「うわー、失敗したー」と思っていましたが、乾燥するとこのとおり。しっとり黒々の新車風味。塗装作業にかかった時間は乾燥待ち時間を除くとたった10分未満です。
意外とキレイに仕上がりましたね。部品単体にしたり、マスキングするのが簡単で再作業する羽目になってもたいして苦にならない、かつ何かに擦れたり当たったりする機会の少ないパーツであれば、塗装は有効な手段といえるでしょう。
あなたのお爺ちゃんバイク、お婆ちゃんクルマも白髪染めして若返らせてみませんか?