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世間は今、梅雨まっさかり。この時期よくあるのが晴れ間をついて出かけたつもりが途中から雨が降ってきたり、幸運にも帰るまで降られずとも「エンジン冷めてから」とカバーをかけずにいたら、そのまま忘れて一晩雨ざらしといった事態ですね。
濡れたり汚れるだけなら洗って乾かせばいいだけなのですが・・・・・・問題はバイクの主要なパーツのほとんどは鉄とアルミでできていて、都度適切に処理しておかないと錆びてしまうということです。
「まぁいっか」「あとであとで」と安穏としていると、次に乗るときカバーを外してみてビックリ、そういったことを繰り返しているとリカバリーに多大な手間もコストもかかってしまうことになります。
いかにして錆びさせないかと、錆びてしまったらの善後策を考えてみましょう。
まずは敵(サビ)を知るべし
私たちの身の回りにある鉄やアルミといった金属のほとんどは、そもそも自然界には存在しない状態のもので、本来は酸化物や硫化物として自然界にあります。それを還元し、精錬。そして純度を上げたり合金したりして、人為的に強く美しく、加工しやすくしたものなんです。
そういう意味では、サビというのは金属が大気中の酸素と結びつくことで酸化され、本来の自然の姿に還ろうとしている現象に他なりません。その引き金となるのが水分やそこに含まれる塩、融雪剤といった身近にある化合物なんです。
とはいえ、逆に言えばこれらとの接触を可能な限り避けて、こまめなバイクの洗浄とその後の徹底した乾燥、そして防護といった策を講じていれば、サビは回避できるともいえます。
ガレージならまだ対策はしやすいですが、つらいのがカーポートのような半吹きさらしや屋外でのカバー保管の場合。雨に降られた後の対策が肝心です。カバーを外して、例えばひとっ走りしてくるなり、エアーブロワーで奥まった水気まで飛ばすことで乾燥させることを徹底しましょう。
海沿いや冬の高速、山間部を走った後のケアも大切です。必ず帰宅したら洗車すると吉です。常日頃からワックスやコーティング、油磨きといった手間を惜しまないとさらに完璧です。手間をかけるだけサビは防げますよ。
まあ、現実にはだんだんケアをサボりがちになってしまうからこそ、さびてしまってからの善後策が必要となるわけですが(笑)
バイクパーツの錆びかたと対策いろいろ
さびてしまうと美観を損なうだけでなく、進行してしまうと機能的な問題に発展することも多々ありますので、メーカーもサビに対して決して無頓着なわけではありません。
しかしながら性能(重量や耐久性)やコスト、デザインとの兼ね合いの中で、メーカーが施している塗装や表面処理ではサビ対策としては完全無欠というわけでもなく、ちょっとした悪条件が重なるとさびはじめてしまいます。
メッキのサビは真鍮ブラシでゴシゴシ
バイクで使われているのはクロームメッキや、スポークやボルトナット等に多いユニクロメッキといった、下地が鉄のものがほとんどです。
さびにくくはあるのですが、地金に達するような傷がついてしまったり、水分が付着した状態が長く続くと、地金からサビが出はじめてしまいます。そうなると完全な再発防止は難しく、進行するとメッキ層の裏側でサビが育ってしまい、メッキ層が剥離してしまうことも少なくありません。
メッキパーツの初期錆への最も簡単で効果的な対策は、スチールウールや柔らかめの真鍮ブラシでの研磨で、錆を溶かす働きがあって浸透性の高いクレ5-56のようなオイルを含ませて擦ると効果的です。
錆を除去した後は、ワックスやコーティングすることによって酸素・水の接触を阻むことにより防錆効果が高まります。
アルマイトにはアルミ用ポリッシュはNG
アルマイトはアルミの表面に人為的に酸化アルミの被膜をつくることで、耐蝕性と耐摩耗性を向上させたものです。処理の過程でカラーを付与できるので、ドレスアップ効果も狙えます。
比較的サビには強いのですが、クロームメッキと同様に地金に達する傷のほか、酸素や水にさらされ続けると、白く粉を吹いたり、斑点や糸くず状の黒い腐食痕が発生してしまうことも。
さらに注意したいのが、日常のメンテ。アルミの白サビを溶かす作用のあるアルミ生地用のポリッシュや、アルカリもしくは酸寄りの洗剤を使ってしまうのも悪影響なので注意。汚れを落とす際は、水洗いのみ、使っても中性洗剤にしておかなければなりません。
残念ながら、アルマイトパーツがいったん錆びてしまうと簡単なリカバリ策はありません。パーツ交換、または大幅な研磨修正してからの再アルマイト処理か、アルミ生地となったものをこまめに磨き続けることになります……。
経年劣化が怖い塗装
最も歴史が古く、広く使われている効果の高い防錆処理が塗装です。地金と酸素を完全に遮断するので効果は高いのですが、傷や経年、もしくは熱による劣化でのひび割れのほか、塗膜が薄いところの地金が酸素に触れるようになり、そこに水分が加わると簡単にさびてしまいます。
狭い範囲での軽いサビであれば、部分的な研磨とタッチアップ塗装でリカバリーと再発防止ができるのですが、広範囲に渡る深いサビでは剥離や研磨、再塗装または交換が必要となります。
詳しくは省きますが、再塗装の際には亜鉛を多く含んだ塗料を使うとサビ防止に効果的ということも知っておくとよいでしょう。
まだまだできるその他の対策
その他のサビ対策としては、ステンレスやクロモリ鋼といった錆びにくい素材のパーツに変えたり、化学処理(黒錆加工)、物理加工(ショットピーニング)、適宜の塗油や注油といったものがあります。
錆びにくい素材というのは高価であったり重かったりで採用例や採用箇所が少ないですし、黒錆加工は酸素+水という悪条件下では効果は薄いようです。
金属地が見えるくらいキレイなチェーンはすぐに錆びてしまいそうではありますが、それを維持できているような人はそもそも錆の心配をするような扱いはしていないかもしれません(笑)。
筆者のバイクはいずれも強固な油埃コーティングが施されており、サビ対策はバッチリです!
チェーンに浮いたサビは、軽いうちは通常のチェーンメンテで除去することができますが、それでも取れないくらい育ってしまったら、硬めのワイヤーブラシで地金が出るまで擦った後で塗油します。
おすすめバイクカバー術?
ここまで書いたとおり、酸素+水にさらされる状況が長く続くことが、サビを誘発する一番の原因です。
完全屋内保管に優るものはありませんが、やむなくカーポートや屋外で保管する場合は必ずバイクカバーを被せましょう。特に二枚重ねにして、このうちインナーカバーをネオプレーンゴムシート(ウェットスーツ生地)にするのがオススメです。
そもそも市販のバイクカバーは、ある程度の高級品であるのはもちろんのこと、新しいうちでないと撥水と完全な防水はしてくれず、内部に雨水が浸透してくる上に、防水性が高いが故に浸透してきた水分も蒸発せず長く滞留するということになりかねません。
そこでネオプレーンゴムシートをインナーカバーとして使うことにより
- バイク車体各処の深部に直接雨水がかかる / 溜まることを防ぐ
- そこそこ重さがあってずれにくいので、風によるエッジの塗装剥げや擦れ傷を防ぐ
- 傷よけに布を使うよりも湿気の面で安心
- 飛来・落下で何かが当たった時の緩衝性能が高い
- アウターカバーは安物でもOKなので買い替え易い
- アウターカバーに安物を使うことで、透湿な高級品よりも通気が良く蒸れにくい
といった効果が見込めます。
実際、劣化した塗装を剥離してアルミ生地となったクランクケースやヘッドカバーの白サビと曇りの磨きなおし頻度は、インナーカバー導入以前の半分ほどになりました。
バイク用の製品としては出回っていないですし、クルマのリアシートや荷室用の防汚防水カバーの大きいものを流用したり、生地そのものを買ってくると良いでしょう。筆者は某オークションで200cm×120cmの切りっぱなし生地を1枚につき2,000円くらいで買ってきたものを使っています。どうぞお試しを!