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「今履いてるタイヤ、もうそろそろスリップサイン出そうだなぁ。そろそろ換えなきゃ」といったとき。
明確な方向性と目的をもって自発的に選べる人であれば何も問題ありませんが、初めての経験で「やべー、何も考えてなかったわ、タイヤってなんかやたら色々あるし」って人も中にはいるかもしれません(笑)。
そういった人の最初の指針となるべく、ごく基本的なところを確認してみましょう。
まずはここから!タイヤのサイズ表記の見方
まずは自分のバイクに適合するサイズの把握をしましょう。
タイヤの側面には、そのタイヤのメーカーと銘柄以外に、数字とアルファベットの羅列があります。それらがタイヤのサイズやタイヤの構造、製造年月等を示しています。
はっきりいって新規格と旧規格での違いやメトリック・インチでの違い、タイヤ構造の表記がまちまちで一概に言えない部分もあるのですが、あくまで一例として「120/70ZR17M/C(58W)」とあった場合で考えてみましょう。それぞれの意味合いを紐解いていくと……
120:タイヤ総幅が120mm
70:扁平率70% 扁平率とは総幅に対しての高さの割合
Z:速度カテゴリー Zは270kmまで
R:ラジアル構造
17:17インチ 17インチ径のリムに適合
M/C:モーターサイクル=バイク用
58W:荷重指数と速度記号 58=最大荷重236kg W=走行可能な最高速270km
となります。
その他の項目はサイズに対応した車種・クラスでおおよそ限られてきますので、当面は総幅と扁平率、タイヤ構造とリム径を判別して検討できれば特に問題ないでしょう。
中古車所有者はチョイ注意
新車購入したバイクであれば、タイヤから読み取るだけで良いのですが、中古で買ったものであればカタログやWebでスペック表も検索・参照して、リム幅(ホイールのタイヤ取付幅)とタイヤサイズが、本来の純正サイズから変更がないか確認しておきましょう。
純正ホイールのままオーバーサイズ(またはアンダーサイズ)のタイヤを履いている場合は、タイヤのプロファイル(断面形状)がタイヤメーカーの想定から変わってしまうので、イマイチ思ったように曲がらないと悩んでいたのは、あなたのウデのせいではないかもしれませんよ?
タイヤ幅はやんちゃしすぎないように!
また各メーカーのタイヤカタログには、そのタイヤのプロファイルが最適となる「適正リム幅」、この範囲に収まっていればOKという「許容リム幅」といった記載もあるので、要チェックです。
この許容リム幅に収まっていれば、タイヤメーカーが開発時に想定したとおりの実力をきちんと発揮できます。
「太いほうがカッケー!」と、安易に純正ホイールにオーバーサイズのタイヤを入れてしまうケースもありますが、バンク時の接地面が少なく、プロファイル(断面形状)が縦に伸び、接地角度が過大になってしまいます。さらに外径が増した影響で速度計が狂うといった弊害にくわえて、リム幅が同じであれば結局たいして太くも見えないという、なんともトホホな結果となってしまいます。
タイヤ幅にあわせてリム幅も拡げるくらい本気のカスタムであれば、タイヤサイズもそのまま継承すれば、それほど大きな問題はないでしょう。
2つあるタイヤ構造
前項で「ラジアル構造」と記しましたが、タイヤ構造には大きくわけてもうひとつあって「バイアス構造」のものがあります。
表記としてはB(バイアス)と表記されていたり、サイズに続いて*PR(*プライレーティング)といった表示がされていたり、タイヤ構造の表記がないものならバイアスです。
スポーツ走行に欠かせない「ラジアル構造」
クルマの方から先に普及が始まったラジアル構造のタイヤは、高い高速耐久性が特長。サイドウォールが潰れてコーナリング時の接地面を稼ぐといった二輪向けの新技術が1990年代後半あたりから一般的になるにつれ、近年のほとんどのオンロードスポーツ車に採用されています。
実は乗り心地がいい「バイアス構造」
バイアスは昔から使われてきたタイヤ構造で、ラジアルよりもタイヤの骨格が柔らかいため、乗り心地が良くなります。
そのため旧車はもちろんのこと、現行車でも基本は低圧運用するオフロード車のほか、アメリカンクルーザーなど快適性が求められるバイクには未だ採用されています。
このようにラジアルとバイアスではタイヤ特性が全く変わります。そのため、純正でバイアス向けとしてセッティングされているバイクに高性能ラジアルを履かせたからといって、良い結果となるとは限りません。
その逆も然りです。きちんとサスセッティングをやり直さないかぎりは、変なクセのある乗り味になったりします。
タイヤ銘柄は、車種ジャンル、ライディングスタイルで選ぼう
いずれのタイヤメーカーも、二輪用のタイヤは大きくわけて
- レーシング:主に競技での使用を想定したもの。レーシングスリックやレーシングレイン、舗装路を走るとトレッドが飛んでしまうほど間引かれたブロック(ノビー)タイヤ
- ピュアスポーツ:車検には通るものの、クローズドコースでの競技に準じた使用パターンを想定したもの。充分に温めてからでないと本領を発揮しないほどのハイグリップタイヤ
- スポーツ:日常使用におけるスポーツ寄りのもので、ピュアスポーツグレードのものよりは温度依存が低く日常域で扱い易くも、クローズドコースでの用途にも対応
- ツーリング:日常使用におけるロングライフ寄りのもので、温度依存はほとんど考慮せずともよく、ウェットにも強い
- ビジネス:ロングライフ、低コスト
といった感じでラインアップしています。
ただ用途でタイヤを決めても、もともとのバイクの素性と噛み合わないとうまくいかないことも。ノーマルのネイキッドにピュアスポーツグレードを履かせても、タイヤを活かせないだけでなくグリップに負けてフレームがねじれておかしな挙動が出るようになってしまいます。逆に大排気量スーパースポーツにツーリンググレードを履かせても、ある程度の飛ばし屋だとスポーツグレードよりも寿命が短くなったりといった具合です。
もっともピュアスポーツグレードに手を出そうという人は、それなりに経験を積んだ玄人がほとんどです。どれを選べば?といったレベルの初心者が迷った場合には車両ジャンルと自身の使用パターンから、スポーツグレードかツーリンググレードのいずれかから選んでおけば、まず間違いはないでしょう。
新品タイヤはちゃんと慣らしをしよう
タイヤを履き替えた後は注意が必要です。ゴムを型に流し込んで製造するため、新品タイヤには型から抜き出しやすくするために使われている離型剤が表面に付着しています。
離型剤は主に油分や界面活性剤(いわゆる洗剤)のようなものなので、トレッド面に付着している間は非常に滑りやすいので注意が必要です。
いわゆる「タイヤの慣らし」として、おおよそ100kmぐらい直線・カーブを満遍なく、急のつく操作・運転を控えて走っておきましょう。そうすれば、あらかたの離型剤は取れるといわれています。
3分でできるライフハック術
こうした慣らしのかわりに、最近では走り出す前に「キッチンクレンザーでトレッド面を磨く」「ウェスにパーツクリーナーを吹いて、トレッド面をひと撫で」といったライフハックもありますね。
それでも、いきなり全開OKというものではありません!
あくまで「気を付けてね」といわれた30秒後に、横断歩道上のUターンで滑って派出所の前ですっ転ぶといった筆者の経験したような事態を避けるためのものです。
効果としてはおまじない程度の気休めかもしれませんが、タイヤの慣らしにはゴムと内部構造を馴染ませるといった側面もありますし、たとえ同じメーカーの同じ銘柄でもすり減ったタイヤから新品に換えるとずいぶん乗り味は変わります。乗り手の慣らしといった部分も大きいんですよ。