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バイクが走行するうえで、走る・停まる・曲がるの全てに関わりながら、路面状況と走行状態のマッチングを刻一刻ライダーにフィードバックするという役目を背負った、最重要パーツに類することができるタイヤ。
バイクのジャンルや大小によって重視すべき部分は多少変わってくるとはいえ、いずれにも使用限度はあり、やがて交換が必要となってきます。今回はタイヤの交換時期とその目安について、方法や判断基準をご紹介します。
タイヤの交換時期は3つのチェックポイントで判断
様々な要因からくるタイヤの寿命にはチェックすべきポイントがあり、それを目安に交換時期か否かを判断できます。
基本的には次の3つをチェックします。
- スリップサインは出ていないか?
- ヒビ割れはないか?
- 製造からどのくらい経っているか?
以下それぞれについて解説します。
スリップサインは出ていないか?
通常競技用の特殊なものを除き、タイヤには新品状態で約7〜8mmの溝が掘られていますが、あらかじめメーカーによって部分的に溝が浅くなる箇所が設けられており、それをスリップサインと呼称しています。
タイヤが摩耗して溝が1.6mm以下になると、その溝の浅い部分とトレッド面が繋がることにより摩耗限界であることを知らせてくれます。
タイヤの溝は、雨天時等にタイヤと路面の接地面に膜を張ったように入り込んでスリップを誘発する、水の膜を切断しながら排水する役目を担っていますが、スリップサインが出るほど摩耗して浅くなった溝ではその切断と排水が充分にできなくなるため、速やかな交換が必要となります。
そのため車検でもこの点は重視されており、摩耗限界に達したタイヤでは検査を通ることができません。
交換はそれなりの出費となりますので、もう少しもう少しと引き延ばしたくなるケースもありますが、天候はこちらの都合など構ってくれませんので、完全にスリップサインが出てくる前に交換してしまうのが文字通りの「転ばぬ先の杖」といえるでしょう。
ヒビ割れはないか?
タイヤのヒビは空気圧の不足や走り方による過熱、空気中のオゾンや道路の熱や紫外線と経年による劣化や硬化、トレッド面に加わった過加重などの要因で、通常であればトレッド面・サイドウォール面のゴムが適切に撓んで受け流すはずの力を受け止めきれずに、結果的にヒビ割れとなってしまうもう一つの交換サインです。
雨に打たれる場所、紫外線にさらされる場所、高温の場所で長期間放置したり、高温になるような使い方で、ゴムの劣化や硬化が早まり、ひび割れが発生しやすくなります。
屋内保管がベストではありますが、屋外であればカバーなどをかけて保管することで、ヒビ割れの発生要因を減らすことができます。
また、適切な保管環境であっても乗らないでいる(ゴムに動きを与えない)ことにより、適度に乗るよりも劣化が進んでしまうこともあります。
製造からどのくらい経っているか?
うちの倉庫に放置中のクルマのタイヤ(5206>2006年52週>2006年11月末)
タイヤのサイドウォールには、製造年とその年の週が4桁から6桁の数字で刻印されています。
通常下2桁が製造年となっているので、そちらを確認することにより製造からどのくらい経ったタイヤかを判断することができます。
この項目は上項のひび割れと密接に関係するものです。
通常タイヤのゴムには硬化を防ぐための油分が含まれているのですが、年数が経つとその油分が抜けていくことでタイヤのゴムが次第に硬化して、ヒビ割れが発生しやすくなります。
実のところ新品タイヤを風雨にさらされない環境で保管していたとしても、その油分の揮発により劣化は進行してしまいます。
上項のスリップサインやヒビ割れが出ていなくとも、タイヤは寿命を迎えているといった場合もあるということです。
中古車、中古タイヤを購入する場合には必ず確認して対応を検討しましょう。
たまに新品タイヤを直射日光下に展示しているタイヤ販売店もありますが、そういったところは避けるのが吉です。
なお、市販されているタイヤクリーナー、タイヤワックスの中には、タイヤの保護油分まで落としてしまうものがあるようなので、使用したい場合はネットでの評判等を当たってみましょう。
走行距離と交換時期の相関
タイヤのトレッド面が1mm摩耗するのに約5,000km程度と言われています。
つまり新品時に8mmあった溝が、スリップサインが表示される残り1.6mmまで摩耗するまでには、およそ32,000kmほど走れるということです。
ただしこれはあくまで一般的な目安であって、タイヤの銘柄と車種や走り方によって大きく変わってきます。
強大なパワーを誇る車種とスポーツ走行に狙いを絞ったグリップ力重視のタイヤで、それに見合った走り方が多ければ5000km程度ということもあれば、非力な小排気量車ながら長距離行が多いといった使い方で、耐摩耗性に優れたタイヤであれば32000kmを超えることもあります。
また、トレッド面が青紫色に焼ける(過熱の高温によるタイヤ保護油分の滲みだし)ような走り方が多いと、当然劣化と硬化も進行します。
が、そういう走り方の場合は、劣化や硬化によるヒビやグリップ低下を心配する以前に摩耗限界がきますので、あまり心配しなくてもよいかもしれません(笑)
まとめ
筆者の経験からいけば、スリップサインの表示→ヒビ割れ→3年→3万キロのいずれか最初に来た時点で交換時期とするのが大まかな目安となるかと思います。
また、乗って走らせることによって適度にゴムを「揉んでやる」ことにより、硬化による劣化は遅らせることができます。
筆者は複数台所有のため、たまたま用事と目的に合致せずに二週間以上乗れなかったバイクには、「お義理乗り」と称して調子を保つためのチョイ乗りをしていますが、その目的とお作法についてはまたの機会にご紹介します。