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輸入、逆輸入のバイクやクルマで給油指定されていることの多い「ハイオク」ガソリン。
国産車でもハイオクを給油指定された車両は、1990年代あたりにどっと増えたものの、最近ではごくスポーティなモデルとグレードに限られてきました。
ハイオクとレギュラーの価格差はおおよそ10円/L。ガソリンは安ければ安いほうが維持費もかからなくていいのに、なぜハイオク指定車なんて存在しているんでしょう?欧州車に多いっていうのも不思議です。
ハイオク=オクタン価が高く、アンチノック性の高いガソリン
そこにはオクタン価=RON( Research Octane Number)という数値が深く関わっています。これはガソリンの成分比率による「燃えにくさ」を示しており、数値が高いほど「燃えにくい」ブレンドをされたガソリンとなっています。
もちろんガソリンである以上、あくまで「意図しないタイミングで勝手に燃えにくい」だけであって、オクタン価の高いガソリン=ハイオクであっても、まったく燃えないというわけではありません。
燃えにくいゆえに高性能モデルには欠かせない
「でも燃えやすいほうが燃焼効率いいんじゃないの?」なんて思うかもしれませんが、そう話は単純ではないんです。エンジン内部では燃料や空気が入り混じった混合気が入ったところで、ピストンを押し上げてシリンダー内部を圧縮します。このとき圧縮途中で意図しない早期着火が起きてしまうと、圧縮に逆らって膨張が始まってしまい、エンジンに多大なダメージを与えてしまいます。これがプレイグニションとかノッキングと呼ばれている不具合の原因です。
そこで必要になるのがハイオク。プラグの火花で点火されるまでは燃えないので、理想的なパワーと燃費が実現できるというわけです。
さらにいえば、その特性を利用することでより高圧縮高温に耐えうる、より高効率なエンジンにできるという利点もあります。ハイオクの使用は高性能を追求する上では欠かせないといっても過言ではありません。
オクタン価が高めに設定されている欧州のガソリン
そうなると欧州車にだけ昔からハイオク指定が多いのは、高性能なモデルが多いからなんでしょうか?
そこにはお国柄が密接に関わっています。欧州圏では20世紀初頭から高速道路網が発達しており、ドイツのアウトバーンやイタリアのアウトストラーダ、フランスのオートルートは有名ですね。いずれも日本より制限速度の規制がはるかにゆるい!日本のクルマ好きからするとうらやましい限りです。
くわえて、馬車の発展形である自動車の黎明期は貴族文化そのもの。「金で時間を買う」という価値観が広く受け入れられており、より高性能化が進む土壌となりました。
それらの環境と文化の中で、古くから91RON、95RON、98RONのガソリン3種類が併売されていたこともあり、メーカーが設計する上ではミドルグレードの95RONを事実上のレギュラーとして設定するようになったのです。
ところが、日本のレギュラーはたったの90RON。これでは欧州車には合いません。そのため、日本に輸入された欧州車はオクタン価が96RONのハイオク指定にされたものが多くなっています。
ちなみにパワフルさなら他国を上回るイメージのあるアメ車は意外なことに一部を除いて、ほぼレギュラーでOKなモデルばかり。実はアメリカのガソリン規格は日本のものと近いため、レギュラー指定のアメ車は日本でもそのままなんです。
ハイオク指定車にレギュラーを入れても割となんとかなるけど…
「ハイオク指定車にレギュラーガソリンを入れると?」というのは、大手の質問サイトで定期ネタになっていますね(笑)。
実のところ、ここ30年くらいの電子制御された普通のインジェクション車では、ハイオク指定車にレギュラーを入れても、壊れてしまうような問題が起こることはありません。
間違えて入れてしまった場合、また出先で低品質なガソリンしかなかった場合にいきなり壊れてしまうのを防ぐため、メーカーはあらかじめECU(車両制御コンピュータ)に、ノッキングを検知したら点火タイミングをリタード(遅角=上死点過ぎてから着火)したり、回転域ごとに最適な燃料供給量をコントロールする制御を組み込んでいる場合がほとんどだからです。要は合わない燃料が入っても、勝手に調節してとりあえずは走れるようにしてくれるというワケ。
ただ、リタードさせるとエネルギー効率は非常に悪くなってしまい、パワーもトルクも大幅に落ち、普段どおり走ろうとすると余計にアクセルを開けることにもなり、燃費も悪化してしまいます。走り方次第では10円/Lの差額が帳消しどころか赤字になってしまうことさえもあるほど。
ハイオク指定されているようなモデルは、多くの場合は走りを楽しむためのものです。「10円/Lの差額をケチって走行性能を削った上に、ガマンの走りを強いられるだけでなく燃費も悪い」なんてナンセンス以外のなにものでもないのでやめておきましょう。
もちろん電子制御されていない古いハイオク指定車はセッティングを自動変更してくれることはありませんし、純正外の高度なチューンを施した車両ではハイオク前提でのセッティングしかしていない場合もあります。
レギュラーを入れて近場までそろりそろりと転がす程度であればギリギリOKですが、決しておすすめできません。無理や無茶をすると確実に壊れる原因となりますのでご注意を。