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バイクを構成する幾多のパーツには、それぞれの役目からの特性やコストの多寡といった要素があるために、純正品とそれ以外で一概には良し悪しを言えないところですが……
今回の記事では初級カスタムとして初期に手をつけることの多いミラーを例にとって、純正ならではの美点と欠点を社外品と簡単に比較してみようと思います。
一般論としてのミラーの機能と目的
前提としてミラーに求められるものをまとめてみましょう。
「主」後方を確認する
- 鏡の面積は広いほどよい
- 要注意範囲が大きく映るほどよい
- 明るく映るほどよい
- 取付位置は高いほど、脚が長いほどよい(邪魔になるライダーの腕・体をかわす)
- 走行中に鏡像はブレないほうがよい
- 視線移動は少ないほうがよい
「従」その他求められるもの
- 空気抵抗は少ないほどよい
- 経年劣化に強い
- 転倒の影響を受けにくい
- 何かにぶつかったときに衝撃を和らげる・受け流せる
- 車体にマッチしたデザイン性
- コストは低いほどよい
- 違法性はもってのほか
これだけ書いただけでも相反してしまう内容が多いですが、これらを高い次元でバランスさせた最大公約数を求めようとしたものが、一般的な純正ミラーの方向性ではないでしょうか。(デザイン性については個々のセンスによる受け止め方の違いも大きいのですが……)
ユーザーのニーズとの相違
前項で挙げたことに対して、最終的な目的は同じでありながらも、一部のユーザーの求めるものとはことごとく相違が発生してしまうことから、多種多様な社外品が生み出されています。
(一般的に)デザイン性を重視したスタイリッシュに見えるミラー
- 小さいほうがカッコイイ(車体が大きく見える)
- 低い・スリムなほうがカッコイイ(全体的にシャープに引き締まって見える)
- 脚は短いほうがカッコイイ(長すぎると昆虫の触覚のように見える)
- 凝った形状や取付方法のほうがカッコイイ(ただしバーエンドミラーは車幅増&転倒即交換)
- 古臭くみえるほうがカッコイイ(車種ジャンルとのマッチング)
といったところで、汎用品であるからには車種にあわせたチューニングのしようもなく、アングルが狭くなったりブレが増えての視界の悪化は甘んじて受けるということになってしまいがちです。
次項からは、実車と実パーツを使ってのごく簡単な比較をしてみました。
純正ミラー
全ての車種で同様にはならないでしょうが、250ツインとしてはロングストロークな設定から比較的振動がキツいといわれている、92年式のヤマハSRV250での例です。
デザイン的には何の変哲もない至極シンプルなもので、素材やメッキの質は比較的上質といえます。
特筆すべきは非常に重く作られているところで、想定速度域での車両特有の振動にくわえ、取付位置と脚長等を考慮しておもりを仕込んだりステーを極太にすることによって共振を防ぎ、できるだけブレないようにしてあります。
停止時の鏡像の画角はこんな感じ。
加減速やライポジによる頭の動きや位置による視野の変化にあまり関係なく、一瞥するだけでの一定の視認性を確保されています。
実際に走行すると走行による振動も加わりますが、エンジン回転数から察するところの下道での制限速度付近の常用域で、後述の社外品に比べるとだいぶブレが抑えられています。
車体への取付状態はこんな感じで、これはこれでそう悪くはないのですが……
社外品1(純正とほぼ同形状)
ミラー部分の形状と大きさは純正とほぼ同じで、取付がバレンタイプで脚が短くなったものです。ミラーハウジングはプラスチックの安物で、おもりの類は全く仕込まれていません。
もっとも、汎用品に当てずっぽうにおもりを仕込んだところで、効果は偶然の一致でしか見込めないため無駄なことでしょう。
停止時の写り具合はこんな感じです。
脚が短く低くなったぶん走行しながら視界を広くとりたい場合には、見る角度を変えたりちょっと肘を畳んだりといった動作が必要になることもあります。
上の動画でちらっと見る限りでは「この程度かぁ」とも思えますが、走行中は常にこんな具合であることを忘れてはいけません。
元気のいい走行中は、後ろにいるのが白いCB1300なのか単に青づくめを着こんだライダーの他のバイクなのかの判別はやや困難になってきます。
車体への取付状態はこんな感じ。
低く短くはなっていますが、ミラーハウジングがほぼ同形状なだけにそれほど違った印象はありません。
社外品2
社外品1と同様に取付はバレンタイプながら、ミラーハウジングがよりコンパクトなオーバル形状になったものです。
こちらも特に振動対策でのおもりは仕込まれておらず、鏡面は薄いブルーに着色されています。
ブルーレンズは高級感であったり、眩しさの低減を狙ってのことであろうとは思いますが…… 少なくとも筆者にはあまり意味がないことにしか感じません(笑)
鏡面が狭くなったぶん純正はもちろん社外品1よりも、見たいところを見るためには自分が動く必要があります。
エンジン回転中のブレはこんな感じです。
社外品1よりも抑えられているように感じるのは、たまたま社外品1よりもSRV250の振動特性に自重と取付位置が適していたと思われます。
大きさや幅方向での張り出しでいうと、この車両にはやはりこのくらいがジャストではないでしょうか?
脚も直線基調の社外品1よりもデザイン性が高いといえます。
まとめ
オートバイの機能やデザインだけでいえば本来不要ともいえるミラー。それだけに一定の規則と技量に則った集団であるクローズドコースでの競技車両で装着されていることは稀です。
しかしながら、各種交通と技量レベルが入り混じった上に、自他互いの自己責任というコンセンサスのとれていない公道を走行する上での、社会的責任や自己防衛としては必須となります。
今回の記事のように、視認性の確保とその許容範囲といったところで人それぞれになってしまってこその「カスタマイズ」ともいえますが、振動を減衰するおもりの取付量を(簡単に)変化させながら見た目に影響させない、またはその機能をデザインとして昇華させたような商品、どこか作ってくれないでしょうか?
既存のものにおもりを仕込むには鏡面を外す必要があって、多くの場合はその過程で割ってしまうんですよね。